4話「それぞれの昼休み」
昨晩、俺はこの学校の生徒会長と話す約束をしている。
約束は昼休みに理科室で会うことになっている。
「さて、もう行っとくかな、先輩のことだから五分前行動とか言って十分前に来るだろうし」
俺は、教室から出ようとする。
「あれ? 今日はお前、俺達と昼食べねーのか?」
この声、田中である。
「ああ、今日はちょっと用があるんだ。ハルにもそう伝えといて」
田中に後を任せて理科室に向かう。
俺が、現在のこの学校の生徒会長である麦秋なつみ先輩と出会ったのは中一の頃だ。
その頃、俺は図書委員をくじ引きによって押し付けられていた。その時の生徒会長が麦秋先輩だった。
「どしたの? 図書委員の一年! もっと元気出せー!」
それが、初対面の俺に言った第一声。その後、先輩はおれを手下のように連れて歩くようになった。俺が理由を聞くと、
「後輩がどんよりしてるのに励まさないわけにはいかないでしょ! それに、もっと光くんは自分に自信を持ちなよ。私は、明るい光くんの方が好きだな……」
この言葉を言った直後、先輩は顔を真っ赤にしてどっか行ったのをよく覚えている。
それからは、俺と先輩は楽しく中学生活を過ごした。その時、学校内では俺と先輩が付き合っているという噂が流れたりして、ハルが発狂しだすという事件が起きたりしたが、これは別の話。
「光くんは高校どこにするの?」
先輩の卒業式の日、先輩はそんなことを聞いてきた。
「とりあえず、俺は先輩と一緒の専掌学園にしときます。家から、近いですしどうせ先輩はまた生徒会長になるんでしょ、なら俺が今までのお礼に手伝えればいいなと思いまして」
「そうか。なら、専掌学園に来たら……私の隣に立ってくれないだろうか」
先輩が、珍しくもじもじしてる。雨でも降るんじゃないかと思ったら、豪雨になって卒業式の後、帰れなくなったのは伝説になっている。
で、今年見事入学したのは良いが、卒業式の約束をさっぱり忘れていたのをこの回想中に思い出した。
理科室前、
「もう先輩居るかな、失礼しまーす」
俺は、理科室に入る。そこには……
※※※※※※※※※※※※
昨晩、光くんからメールがあって理科室に来てくれってあった。
「早く行かないと、光くんを待たせるは嫌だ!」
私は授業が終わると急いで理科室に向かう。
「光くんからメールなんて久しぶりだなー。ほんと、泣きそうになったもん!」
テンションが上がり、独り言を隠し切れない会長。それを見て、ドン引きする周り。
「あっ、なつみさーん! 久しぶりですー」
光くんの横でよく聞いた懐かしい声がした。
「ハルちゃん久しぶり! どうしたのー?」
「光、見ませんでした? なんか、誰かと会うらしいですけど光ったら誰か教えてくれないんですよ。私も関係ある話なのに……」
ハルちゃんも関係がある話って? そう思うとルンルンモードでいられなくなった。
「ハルちゃん、光くんを探してるってことは昼休みは暇よね? なら一緒についてきて!」
私は、彼女の手をとって歩き出す。
「え? どこに行くんですかー? 私は光を探すんですけどー」
引っ張られるハル。
ついた場所は理科室、ドアの前で並ぶ私達。
「光の言ってた人って、先輩だったんですね」
「そうよ! ハルちゃんも関係ある話なんでしょ? ならハルちゃんもいなくちゃ!」
そう言うと、私はドアを開ける。
ガラガラー
そこには、二日酔いとそれを看病する光がいた。
※※※※※※※※※※
つい五分前
「失礼しまーす」
俺がドアを開けると、二日酔いの白衣のお姉さんがいた。
「あー、いらっしゃーい……ごめんけど……水ちょうだい……そこら辺のコップ使っていいから……」
「やっぱり昨日、飲み過ぎたんですよ」
「……」
へんじがない。
ただの しかばねのようだ。
「ああもう、これから人来るんで静かに寝といてくださいよ!」
白衣のお姉さんを寝かそうとする俺。
ガラガラー
「え?」
振り向くと、呼んだ先輩とハルが理科室に入っていきていた。
「……光くん?」
何故か涙目の先輩。どれだけこの状況が衝撃的だったんだろう?
「どうしたんですか、先輩? 泣きそうですよ」
「いいの、何でもないから。で、その白衣のお姉さん……誰?」
急に先輩の声が冷たくなった。先輩の目が冷たい。逃げ出したくなったが、まだ本題を言ってないから逃げれない!
「ごめん……吐きそう……うっ」
白衣のお姉さんの顔が真っ青になっている。もう逃げてもいいだろうか。ほんとに、逃げさせてください。
「先輩久しぶりです。二日酔いは無視してください。説明はするんで、とりあえず話を聞いてください」
俺と先輩の交渉が今、始まる。