2話「そして、運命を定められた者達はひかれ合う」
「はい。すぐに忘れ物を取ったら帰ります。失礼しましたー」
少年は、真っ暗な廊下を歩き出す。
深夜の学校、そこにはどこぞの光君と同じ境遇の生徒がいた。
「なんで、俺は弁当箱を学校に忘れるかなぁ。田中のやつが兄貴が去年、幽霊を見たとか言ってるし、早く弁当箱を持って帰ろう」
トーントーン
少年が職員室から教室に向かう。理科室の前を通ると、足音とは違う音が理科室からした。
少年は、気になり理科室の扉を開ける。そこには……
「いぃぃぃやぁァァァァァァ!」
少年は、そう叫びながら去っていった。
少年が、見た理科室の窓からは綺麗な月の光が理科室を照らしていた。
不穏な陰を残して……
※※※※※※※※※※※
ハルが、毎朝来るようになってから1週間がたった。あれからは、みんなおとなしくして特に変わったことも無く平和に日常を過ごしていた。
昼休み
「ひかるー! 昼一緒に食べよー!」
同じクラスになったハルは、毎日昼を一緒に食べようと誘ってくる。別に断る理由はないから断ったりしないが、先週の田中の仕業によって俺を見るクラスメート(主に男子)の目が明らかにどこぞの爆発物を見る目になっている。
「ハル、どうして俺を昼に誘うんだ? 他にもハルのコミュ力ならいくらでも居るだろ?」
俺は、弁当(もちろんハルのお手製弁当。今日のおすすめは鶏の竜田揚げらしい)をカバンから取り出しながら聞いてみる。
「そりゃあ光は私が居なかったらひとりぼっちになるからだよ。おお! 我ながら美味しそう。では、いただきまーす!」
「確かにそのとおりだな! こいつに話しかけようと思う男子は今や俺しかいないぜ! 光、その竜田揚げもらうぜ!」
「田中、竜田揚げはやらんが、白米なら少しやるよ。それと、お前ら、サラッと俺をディスってないか? いただきます」
俺は、するっと話に入ってきた田中の頼みをエポナでガード! して弁当を食べ始める。
「ちっ、釣れないな。そーいえば、一昨日、うちのクラスのやつが理科室で幽霊を見たらしい。他のクラスでも、理科室は出るって最近有名だから気をつけろよ」
田中は購買で買ってきていた焼き鯖&パンを食べ始める。焼きそばパンなら見たことあるが、このコンビは見たことはない。
「気をつけるよ。田中、そのコンビ美味しいか?」
「美味しく思えるようになったぞ。この鯖の油っこさとパンのコンビネーションが癖になりそう」
やばい……田中が帰ってこれなくなる! まあ、いいか。
俺は、さっきの田中の言葉を思い出し、理科室か、俺は帰宅部なので授業でしか理科室にお世話にならないだろうな。
そう思っていた。この時までは……。
※※※※※※※※※※※※※※
その日の夕方。俺は、ハルと一緒に家に帰ってきた。その最中も、クラスの男子の目線は、爆発しろと言ってきていた。
「ハル。ほんとに、今日は俺ん家に泊まるのか?」
「しょうがないじゃん! 今日は、うちには誰もいないんだもん」
ハルの話だと、ハルの両親は今日はたまたまどっちも帰れないらしい。それを教室で言った時は、クラス中が凍りついた。
「わかったよ。お前の部屋はあの空き部屋でいいな! なんかあったら、教えろよ」
それからは、ハルが夕飯(妹リクエストのオムライス。洋食屋で出されても文句なしの味だった。)を作り、それを俺とハル、母さん、妹そしてイヌの五人? で食べた。途中、母さん達がハルちゃんがまるでお嫁さんに来てくれたみたいとか言って、ハルが挙動不審になったりしたが、なんともなかった。
その後、みんながそれぞれ宿題などやることをやったり、順番に風呂(もちろんサービス的なやつはなんにもなかった。)に入ったりして、全員寝床についた。
深夜、俺は幽霊達と一緒に外出の準備をしていた。
「おい。いろは! ほんとに理科室にはお前の知り合いが居るんだな?」
俺は、みんなを起こさないよう、小声で話す。
「教室にいた時。時々、話をしてたんです」
「ほんとに居たとしても、別れのあいさつだけだぞ! これ以上、憑いたらすぐに祓ってやるからな!」
俺は忠告する。
「その時は、私がちゃんと入れさせませんから!」
桜が自信満々で答える。
「じゃあ、学校に行くだけ行きますか!」
俺達は、家から学校に向かって出発した。
※※※※※※※※※※※
日本のとある地方の空港
「神父、無事ついたよ。ここはもう深夜だから、明日、僕が学校の方で手続きを済ませるよ」
少年は、電話をしながら空港を歩く。
電話の相手の神父と呼ばれる人は少年に何か任務を託したみたいだった。
「わかってますよ。例の任務はちゃんと成功させますよ。ここでは、すぐに協力者が見つかりますよ。いや、見つけてみせます!」
少年は、携帯を持ってない左手で十字架を握りしめ、
「私、クロス・ヴァーミリオンは、聖十字教とヴァーミリオン孤児院の名誉に誓って任務を遂行します!」
少年は、決意を胸に歩き出した。
※※※※※※※※※※※
理科室
「はあ……。あの、教室に居た子がどっか行っちゃたし、昨日やっと来たと思った可愛い子は、この人体模型を見て逃げちゃうし、どうしようかなぁ」
人体模型の横で一人、晩酌を楽しむ白衣のお姉さんがいた。
「そもそも! どっか行くんなら私に一言ぐらい言って欲しかったわ」
無言で去られたのがそんなに効いていたのか、一人泣き出す白衣のお姉さん。その姿からは哀愁しか感じられなかった。
「ほんとにいい人いないかしら? 放課後に話をしてくれるだけでもいいのに……」
そんな彼女の話を聞いてくれるのは、二人で一人の仮面的な人体模型だけだった。
「さぁ、お前の幽霊を数えろ!」的な事を言ってきそうな人体模型。いずれ、片方だけ売れるようになるよ。
一方、その頃。理科室に向かう者達が学校に到着していた。
「理科室に行けばいいんだな?」
俺は足早に理科室に向かう。その前に、職員室に事情を簡単に説明しなければならない。
職員室を経由して、理科室に向かう。
職員室では、この時間に学校に来た理由を聞かれたので、忘れ物をしたのでとりに来たと言った。
真っ暗な廊下には、あの時俺が感じていた何かがあった。あの時と同じく足音だけが響く長い廊下。
「やっぱり、居るってことなのか」
俺は、不安を感じながらも歩く。響いた足音が俺を歓迎してくる。
そして俺は、理科室に到着した。