1話「始まった非日常」
4月11日、その日俺は幽霊に憑かれた。
4月13日月曜日
「光君、起きてください朝ですよ!」
俺の枕元から、声が聞こえる。
「もう十分寝かせて……」
「いろはの言うとおりですよ光さん、もう七時ですよ!」
あれ……? 桜の声が聞こえる。
「なら、もう五分……」
「ひかるさん、ご主人様がもう来てるから起きてください!」
この声は、うちに来たばかりの犬耳ショタ式神のイヌの声だ! そうか。今日は月曜日だから起こしにきてくれたんだな。なら、起きなければ!
「うん? あれお前ら何してんの? あと、イヌおはよう」
俺が目を覚ますと布団の周りに幽霊二人と犬耳ショタ式神一人がいた。
「なんで、式神には挨拶して私達には何もないんですか?」
幽霊二人がキレる。俺は悪いことはしていないと思う。
「はいはいおはよう。ん……? なんかいい匂いするな」
開いているドアの先、一階のリビングの方からいい匂いがしていた。
「それはですね! なんかハルさんが朝食を作りに来ているんですよ」
桜が食い気味に反応する。お前は食べられないよな!
「もう七時か。今日から一週間、学校か。めんどくせー、そいえばお前ら俺が学校行ってる間どうするんだ?」
「私、いろはは光君に憑いて行きます。」
いろはは、もともと学校にいた幽霊だから何か学校に思い入れがあるのかも知れない。
「なら私は、静かに留守番しときます。光さんと離れていても影響はあまりないみたいなので」
桜は、特に学校に来てもいいことないし、しかも桜まで出てしまうとイヌが可哀想じゃないか!
幽霊二人の話を聞き、俺は少し不安ではあるが文句は言わない事にした。
俺がリビングに入ると、机に日本の朝食といえばコレと言える、味噌汁、焼き鮭そしてご飯が用意されていた。
「光、朝作っといたから。早く食べて学校に行くよ!」
制服姿のハルがエプロンを脱ぎながら台所から出てくる。なんだよ。こいつは俺の理想の彼女なのか。
「ハル、朝食あんがとな! あと、おはよー」
「べ、別にアンタのためとかじゃなく、お義母さんとか義妹さんのために……あと、イヌを預けているからちょっとしたお礼よ!」
うわー、たまに出るツンデレモードだ今日。しかし、よくこんなにもツンデレをできるもんだよな。まあ、この後一人恥ずかしくて死んでるんだけどなハルは。
「はいよ。すぐ食べて学校行きます」
十五分後……
「さて、お腹いっぱいだし歯も磨いたし行きますか! 確か、母さんは寝てて、妹は朝練って言ってたな。あれ? ハルは?」
俺は辺りを見渡し、名前を呼んでみる。反応がない
俺が、諦めて玄関を開けるとハルがいた。
「遅い!」
ハルが怒った顔をする
「知るか! もしかしてお前、俺が朝食を食べてる間ずっと外にいたのかよ」
ハルは時々、こんな事をしでかすから目を離すわけにはいかない。
「次からは、食べてる間は家の中に居れよ。冬場だと、風邪ひくぞ。」
「まだ春だから大丈夫だよ。」
俺の心配をどうとも思わないハル。
「ハル、お前何組?確か入学式から休んでたよな?」
俺は疑問をぶつける。
「それを、電話で言っておきたかったんだよ。でもそれは、お楽しみということで。人の話を聞かない光が悪いんだよ!」
ハルにしてはやりよる。そして、ごもっともです。ほんとにスイマセン。
「わかったよ。後で、帰りでもいいから教えろよ!」
「帰りに教えることはできないかな」
ハルは意地悪な顔をして、笑ってる。
「なんでだよ!」
「理由は教えなくてもいずれわかるよ」
「はぁ。わかったよ。でもいつか絶対に聞き出すからな!」
「楽しみにしとくよ。でも、それは無駄なあがきだと思うけどね」
不敵な笑みを浮かべるハル。
それに対して、対抗心むき出しの俺。勝敗は目に見えているような気がする。ああ、これが若さか……
こんな話をしてる間に学校に着いたようだった。
教室に向かう俺。ついてくるハル。
「ハル。お前どうしてついてくるだよ!」
「どうしてだろうねー」
不敵な笑み再びのハル
そして俺が1年6組の教室に着くと、ハルは一人教室に入っていき
「おはようございます。入学式から休んでいた経読春です。よろしくお願いします!」
教室のあちこちから、挨拶がハルに飛んでくる。そして、関心がハルに集まってくる。
その横で、俺は
「なんでだー!!」
そう心の中で叫んでいた。
この様子の俺を見て、逃さないヤツがいた。
田中だ。
「よう! 光。どうしてお前は、初対面のはずの経読さんといっしょに学校に来ているんだ?」
田中は、痛いとこをついてくる。実は、田中は敵に回してはいけないやつなのかもしれない。
「ハルは、結構前からの幼なじみなんだ。」
「ふーん」
田中は、怪しげな笑みを浮かべ……
「光君は、経読さんと昔からの幼なじみらしいよー!」
言いやがったこいつ。後で、こいつ殺る!そう決めた俺だった。
田中の一言で俺の方にも集まる人だかり。その光景を見て笑う田中(敵)。
「田中、お前……駆逐してやる!!」
その願い虚しく集まってくる人だかり。人の注目が集める事が苦手な俺は、始業のチャイムがなるまで耐えるしかなかった。
放課後
「お前、よくあの注目の視線、耐えれるよな」
俺が、ぐったりしながらハルに質問する。
「光。私の言った通りでしょ? 帰りまで待つ必要なかったでしょ?」
ハルが自信満々に話してくる。質問に答える気は無いようだ。
俺は気だるそうに答える。
「そうだな。あと、いろは、お前一日中静かにしてたよな。なんかあったのか?」
「光君、私をなんだと思ってるんですか!ちゃんとハルさんから光君の邪魔を昼間はしないようにと言われているんですから」
いろはが急に俺の横に現れ、自慢を始める。サラッと明かされている裏の話。こいつら、裏でどんな話をしてるんだ?
「いろは、お前昼間はって言ったよな?」
「はい、契約は昼間だけです。なので、光君も夜は一緒に人間をやめましょう。さあ男らしく、俺は人間をやめるぞと言ってしまいましょう!」
「どこかの吸血鬼みたくUREYYYYYする気ないから」
「そうだよ、光はまだ人間の方が良いんだから!」
ハルが俺の反論に賛同した。
「おい! まだって何だよ!」
そんな風にふざけながら帰り道を歩く学生二人と霊一人、この三人を夕焼けが照らしていた。