プロローグ「災厄のはじまり」
夜の学校は、心霊スポット界の重鎮だと思う。特に音楽室のベートーヴェンさんとか、トイレの花子さんなどが有名だと思う。
「はぁ、なんで入学したばっかりの金曜なのに課題プリントを学校に忘れたんだ」
俺は今、プリントを取りに深夜の学校に潜入している。俺がプリントを忘れた事を気付いたのは、つい1時間前の9時半だった。
9時過ぎに幼なじみのハルから電話がかかって来た。
「学校どうだった? いやー、まさか入学式当日から風邪で金曜までの3日間休むことになるとは……そういえば宿題とか出されたりしたー?」
「えっとね、課題プリントとやらが1枚出た」
「大変だねー。と言っても同じ学校だから私も大変か」
「用はそれだけ?」
「それだけだけどさ、もうちょっと話をしよ」
「じゃあきるねー。ちゃんと安静にしとけよ」
「ちょっと待って……もうちょっとさ話s」
ガチャ……
電話をきった後、さあプリントをやろうかとした時に俺は気づいてしまった。
「あっやべぇプリント学校に忘れた」
そんなことがあって今の俺の状況になった。
夜の学校は、昼間の騒がしさを感じられないほどの静けさに包まれている。
「つか、俺が難なく入れるってアルソ○クつけてないな。この学校」
暗く長細い廊下には、俺の足音が響いている。
「誰もいないよね? 幽霊とかさ。なんか廊下にはテケテケが出るって俺の中学で噂が一時期広まってたけど」
誰もいないはずの深夜の学校は想像以上の恐怖を俺に掻き立ていた。
4月8日、俺が私立専掌学園に入学した日
その日は、クラスの中で一人休んでいたが自己紹介をした後に学校からの連絡を渡した後下校するといった時間割だった。
俺が急いで帰ろうと荷物を片付けていた時
「えっと憑神光でいいんだよな?」
俺に坊主のいかにも野球部な奴が話しかけてきた。
「そうだけど、お前は?」
「さっきの全員犠牲の自己紹介聞いてなかったのかよ。俺は田中だ」
「よろしく、それで?」
「ああこんな話知ってるか?」
「知らん」
「即答かよ! まあ良いや、この一年六組での教室には出るらしいぜ」
「出るってなにが?」
「そりゃ決まってるだろ幽霊だよ! それがさぁ俺の兄ちゃんもこの教室でさ、幽霊を見たって言ってるんだよ、あと兄ちゃんの友達も揃ってな」
その時は、こんなよくある話どうせでっち上げだろと思っていた。
「そうか気をつけるよ、あんがとな」
「気をつけろよ! あと俺は田中で呼び捨てOKだから」
「じゃあ俺は好きに呼んでいいから」
「それじゃ、お前は光な」
そして俺は帰った。
「はあ、田中のやつなんで会ったばかりのやつにこんな話するかな」
夜の学校に来てみるとやはり田中の噂が信憑性を増してきた。
「まあ、幽霊なんて居るはずないし、もし居ても危害を加えなければ大丈夫……たぶん」
俺の恐怖心はほんとひどいことになっていた。
「明日の昼ごろに来れば良かったな」
遅すぎる後悔である。
そして俺は、問題の教室に着いた。
ガラガラ
ドアを開けたその先には、3日間見てきた教室が広がっていた。ただひとつ見たことがないものを残して……。
俺の目の前にいたのは、学校指定の制服を着た黒髪ロングの女子生徒だった。
「あのーどなたですか? このクラスの生徒じゃないですよね。もしかして入学式から休んでいる人ですか。でもこんな時間には来ないですよねー」
俺は、もしかしてこいつが噂の幽霊かもしれないとじっくりと観察していた。
そして俺は彼女のある部分を見て
「うわ、ちっさっ!」
次の瞬間、ブチィと頭の血管が切れる音がした。
その音とほぼ同時に俺の意識は暗闇に沈んでいった。