倉庫
あなたは知らないかもしれないけど。
そう前置いて茶髪ギャルは昔話を始めた。
「あのあと警察に連れてかれたんだよ。あんたのせいで、ね」
もちろん知るわけない。てか私のせいか?
少しよそ見をしたら、ドアから光が差し込んだ。なんで赤い光なんだろ。
「でもウチは人を売るような真似は絶対にしたくなかった。だから、あんたのことも警察には言わなかった。知らないでしょ」
冷たく突き放されるように言われる。
ギャルは髪の毛を少しいじってまた話を始めた。
「なのに、あんたは何も知らず、何もやってませんみたいな顔して普通にすごしはじめた。ウチだって、ホントは高校、行きたかったのに。あの喧嘩のせいで無理だろって言われて」
言葉を詰まらせる茶髪ギャル。
なるほど。これはヤバいやつか?
「あんたのせいだ。あんたさえいなければウチはホントは。ホントは高校だって行けてたんだ!姉ちゃんもママも!困らせずにいられたんだ。全部、あんたのせいだ」
あー、ヤバいやつだ。
ギャルは右にいたやつに手を差し出した。
見覚えはない。てか顔良く見えない。色もわからない。ただ、女性であることだけかろうじて判る程度。なんだ、だれだ。知らないけどいろんな人に恨み、かってたんだなあ、わたし。
手渡されたものは重い質感を持って確かな存在感を放っていた。
包丁だった。
いやいやいや。それはマジでヤバいやつだからやめとけ?
「殺さないけど、怖い思いはしてもらうよ」
あー、殺されないならマシか。いや、死ぬかも。
光る刃を眺める。
刃が外から入り込んだ赤い光を反射した。
体が固くなる。全身から汗が吹き出す感覚がした。
なんだ、これ。
頭の中で再生されるスローの映像が鼓動を早くさせる。
息がままならない。
大翔?なんで、そんな苦しそうな顔してるの。




