呼び名
「それより、あの凌って奴は誰?」
もう、この夏依先輩になれなきゃいけないとかむりすぎるから。
わかってますよ。
いつまで引きずってんだってかんじですよね。
だけどさ、しょうがないじゃん。
「美羽の前の転校生」
「だから、呼び捨てやめてください」
なんで呼び捨てなんだ。今まで君としか言わなかったじゃん。なぜだ。
「じゃあ、なんて呼べば良いの」
「いや、出来れば私に関わr」
「無理だね」
知ってるよ!あえて言ってみたんだよ。1%の可能性もあるかも知れないだろ?
「みっちゃん?みーちゃん?」
「美羽で良いです」
何で変なあだ名をつけられなきゃならんのだ。おい。
何か理不尽な精神的暴力うけてる。
・・・気がするんじゃない。
これは受けてる。
いいきっていい。
「何でこの数分間でそんなに話題がずれるのか分からない」
大翔の的確な突っ込みに私は顔をしかめて見せた。
「どう考えてもこの人のせいでしょ」
そして、人の変わった夏依先輩を指さす。
今までの夏依先輩とは別人として扱った方が良いのかな。
「どっちもどっちだから」
大翔、お前は単にどっちでも良いだけだろう。
「それより、夏依が言ったように凌のことだ」
「あれ?大翔覚えてないの?」
「いや。覚えてる」
そう言った後、大翔はなぜか考え込むようなそぶりを見せた。
「んで、何で凌君?何か関係あったっけ?」
記憶をたどってみるが、凌君が関わっていたという記憶は一切ない。
「いや。美羽のこととは関係ないよ?」
翔の存在をすっかりと、そしてしっかりと忘れていた。
「じゃあ、何が関係あるの?」
「俺」
翔は自分の鼻の頭を人差し指でトントンと二回たたいた。
その仕草がやけに大人びていた。
それと同時に、二つの下を向いたいつもより小さな瞳が目に入った。
なぜか、二つの者があいまみえない感じがした。




