転入
「はじめまして。芳須凌です。えー、神奈川から引っ越してきました。よろしくお願いします」
そう言い終わったあと、甘い笑みを浮かべたのはまぎれもなく“お隣さん”だった。
なぜだ。
そういう運命なのか?
そうなのか?
おい、先生方。
あぁ、金曜日に結局登校しなかったから聞いてなかったのか。
っていうことは、知らなかったのは私だけか。
「ねぇ、どうしたの?美羽ちゃん。こわいよ」
そう言って斜め前に座っていて、唯一味方の彩笑ちゃんが心配してくれるが、「大丈夫。なんでもない」ということも、笑うことも出来ない。
だって、大丈夫じゃないし、なんでもなくない。
なぜ昨日まで隣だったはずの彩笑ちゃんが私の斜め前にいる?
なぜ新しい机が私の前にある?
なぜ全員出席しているのに席が空いている?
なぜ、彼がこのクラスに転入してきている?
なぜ。
「じゃあ、そこの一番前の空いている席に座ってね」
世話好きの担任がそう告げると、こっちを向いて笑った凌の顔があった。
最高の皮肉としか思えない。
そして担任。
なぜここに席を置いた。
「水月さん。よろしくね?」
明らかに色目を使っている担任に、苦笑を浮かべて彩笑ちゃんが応える。
「はい」
その間、凌君の顔を見ながら “話しかけるな” と念じるてみたが・・・。
「奇遇だね、美羽ちゃん」
やっぱり言葉にしなきゃ伝わらないものってあるよね。
っていうか今の状態でそれを言われたら私はもう学校にいられない。
あぁ、ひしひしと感じますよ。痛い視線。
これ以上話しかけられないために下を向いたら、顔をのぞき込まれた。
「ん?」
いや、そういうのをやめてもらいたいから下を向いたんですけどね。
「何でも無いです」
「そう」
やっと前を向いてくれた。
私の高校生活の半分は女子の視線に耐える日々になる・・・のか。
そうだな。
もいいい。
慣れることから始めよう・・・。




