早くしろ(ver.大翔)
今日は学校に行くか知らないけど、早く起きてるくらいだから行くんだろう。
しかしそれにしてもいつも以上に準備が遅い。早くしろよ。
「ねーちゃん、学校いかねーの?」
「行くよ」
「じゃあ早く支度しろ」
「先に行っていいよ」
姉は驚いた顔をしてそう言った。まあ、自分から一緒に行こうなんて言った記憶は無いが、そこまで驚くことかとも思う。
「まだ、予定あるし」
「予定って何だよ。一緒に行けば良いだろ」
「そうだよ。美羽も一緒にいこ?」
翔が加勢してくる。
きっと翔も女子に囲まれていた姿を思い出したのだろう。
「先に行っていいって」
あくまでも、一緒に行かない気か。
「登校途中に女子に絡まれても知らないよ?」
翔がそう言ってもあまり動じてなかったからたたみかけていった。
「ま、それでぼっこぼこにされても知らないけどな」
瞬間、顔がこわばっていた。
「さ、さすがにぼっこぼこは無いでしょ」
言い聞かしてももう無駄だ。ここまで来れば押せば良い。
「集団で絡まれたら終わりだけどな」
「すぐに支度するんで」
そう言って、少し急いで支度を始める姉の背中を見て思わずフッっと笑ってしまう。
そんな俺の顔を見ていたのか、翔が驚いた顔をして俺を凝視する。
「うざい」
「ひっど」
表情はそうだが、実はそうも気にしていないことを俺は知ってる。
ピンポン
誰だ。こんな朝っぱらに。
「大翔でてー」
洗面所から言われ、しぶしぶ出る。
ドアの先にいた奴を見たときは後悔の念しかなかった。
「美羽先輩、いますか~?」
夏詩・・・。




