敵は敵だった
「おい、翔!」
「な~に~?」
気の抜けた返事をするんじゃない。
幼稚園児か。
「そろそろおうちに帰ってくれませんかね?」
「いやだ~」
ならば実力行使である。
「これは、誰の荷物でしょう?」
「ん?」
テレビをつまらなそうに眺めていた翔の顔が、リビングのドアの方を向く。
「あー!!」
うるさいぞ、幼稚園児。
「何で俺の荷物まとめてんの!」
「帰って欲しいんで」
「ひどいよ、美羽」
悪かったな。
「ねー、大翔もなんかいってよ」
「何で俺」
ふと疑問に思ったことを口にしてみる
「何で翔は帰りたくないの」
「…何でも良いでしょ」
いや、翔さん。怖いっス。ガチにならんでください。
「ね、美羽。腹減ったから、夕ご飯の準備して」
急に笑顔にならんでくんさい。
「美羽だって俺が居なくなったら困るっしょ?」
「いいや」
「即答かよ」と驚いた顔を作ってからまた真剣な表情にもどる。
「ま、学校で女子から助けてあげなくて良いなら俺はいいけど?」
ムリっす。翔さん。
「いいの?」
やっぱり敵としか認識できないね。
「ぜひ、まだ居てください」
とたん、翔の顔に満面の笑みが広がった。勝ち誇ってやがる。
おい、荷物片付けるのはお前の役目だからな。




