おばさん
「凌?」
声の主は、私たちの家の玄関の前にいた。
「なに?」
いや、普通に返事してないで。
「遅いと思って」
会話しないで。
「ただ、話してただけだよ」
わたしと?
地味に私のせいにもなってないか?
「美羽ちゃんと」
おばさんの目が私を見据える。
「あー、美羽ちゃん!?」
いや、だから誰だよ。
「大きくなって~。久しぶりね、覚えてる?」
だから、覚えてないって。
「私、凌のお母さん。ほら、お隣のおばさんよ」
あー。
「思い出した?」
「はい」
思い出しました。
何で気付かねぇんだよ、とか思わないでください。
だって、体型がだいぶ変わってるんだもん。
「おばさん、やせました?」
「やっぱり、分かっちゃう?」
分かっちゃいますよ。
一回りも二回りも小さくそして細くなってません?
「ちょっと、東京の奥様に負けてられなくなっちゃって、やせたのよ」
「へー」
いや、負けても良いんじゃないのか、体型では別に。
でも、やせるとだいぶ変わるんだな。
きれいになった感じがする。
「凄くきれいになりましたね」
「ありがとー。もう美羽ちゃんだけだよそんなこと言ってくれるの」
凌君は言わないんだね。
「美羽ちゃん、またうちへ遊びに来てね」
「はい」
「じゃ」
そう言っておばさんは戻っていった。
なにしにきたんですか。
「あ、美羽ちゃん。話がそれてごめん。これ、よろしくお願いしますの品」
「どうも」
受け取ったその箱は、思っていたのよりも軽かった。
「じゃあ、また来週学校でね」
「はい」
バタン
笑顔で見送ったけどさ、来週会うことは、決まってるのね。
何でか分かんないけど、あの人と話してると翔と話してるような感じになるんだよね。
親戚だったり(笑)
たぶんない。それはない。




