犯人は・・・
「は・・・?」
大翔の言った言葉が、消化しきれずに頭の中をぐるぐると回る。
「だから、夏詩とは別れてほしい」
「なんで」
意味が解せない。というか、意図がつかめない。
大翔の視線が宙をさまよう。
「・・・言わなきゃだめ?」
床に座った大翔が上目遣いで、不安そうに見上げてくる。
でも、
「だめ」
大翔は、むやみに人を牽制するような人ではない。それくらい、私にだって分かる。だから、理由が知りたい。
「ねーちゃんが、傷つくかもしれない」
大きく息を吐き出す。
大丈夫。
「覚悟する。だから、聞かせて」
視線を下の方に落とし、数秒目を閉じたあと大翔は
「・・・分かった」
と、私の目を見ながら言った。
「夏詩は・・・夏詩がねーちゃんの噂を流した」
目を見張ったのが自分でも分かった。
夏詩くんが・・・。
「なんで」
そんなこと、夏詩くんが。
「ねーちゃんが、あの変な奴と話してたときに、夏詩の部屋に行った。そしたらやっぱり、夏詩はねーちゃんと同じ中学だった」
頭の中を整理しよう。
まず、夏詩くんが噂を流した犯人。
で、あの変な奴はきっと夏依のこと。
それから、夏詩くんが私と同じ中学校。
つまり夏詩くんは私が中学のときに荒れてたのを知ってる・・・かもしれない。
「でも、それだけじゃ夏詩くんが噂を流したかなんて分かんないじゃん」
このときはまだ、きっとどこかで夏詩くんを信じていたんだ。
バカな私は、人を疑うということを知らない。
「じゃあ聞くけど、噂は何年生から流れ始めたと思う?」
そんなの分かるわけないじゃん。
「1年生」
ガチャッと部屋の扉が開くと、翔がいた。
「なんでわかんの?」
意地になって聞く。
「俺がクラスに戻ったとき」
大翔が話し始めた。
最後まで話し終わったとき、私は部屋を出ようとしていた。




