イケメンなくせにばかで天然だった事件
今に戻るが、翔は私に対して一切・・・そう一切敬意を払っていない。
普通に並んで話していると私の方が年下に見えている可能性が高い。
自分で言ってて悲しくなるわ。
「美羽ー。ご飯」
翔はたまにうちでご飯を食べていく。あと私は“ご飯”じゃない。
「コンビニで買ってくれば」
ここはお前の家ではない。当たり前だ。
「美羽の料理がいいー」
だだをこねるな。アイスを食うな。・・・というかもう私にその顔はきかん!
翔は言うまでもなくイケメンだ。しかも、かわいい系。
最初、だだをこねられたときは正直、正直にめちゃくちゃかわいかった。うん。
しかし、そう毎回やられると意図してやっていると思えてくる。そして慣れてくる。
ていうか、もう慣れた。
だからいいかげんその顔をひっこめろ。
「じゃあ、作るの手伝ってよ」
「えー。・・・美羽って意外とひどいよね」
どこがひどいのか私にはさっぱり分からんが。
「翔だって実はペテン師じゃん」
「ペテン師・・・って何?」
知らないのか知らないふりをしているのか、首を少し傾けてこちらを見てくる。
イケメンなのにばかなのかよ。おい、イケメンだからなんでも許される的なそんなノリか?おい。
っていうか
「それでよく三高元高、受かったね」
三高元高は“ペテン師”という単語を知らんやつに入れるような学校ではなかったと思うが?
「んー。ま、一応勉強もしたけど推薦きてたからね」
へー。そうなんだ。すごいねー。(棒読み)
「美羽はさ。あんなに優勝とかしてんのに、推薦こなかったの?」
真面目に聞くな。
「だって有名じゃなかったもん」
「ふーん。強いのにね、美羽は」
だから真面目に言うな。
私が何も言わずにいると翔が口を開く。
「あれ?美羽、照れたの?」
あぁ、失敗したと、この瞬間直感した。
「照れてないから」
「照れてたくせに」
「照れてない」
「素直じゃないなー」
「うるさい」
「かっわいいー、美羽」
「そろそろ黙らないと、夕飯作らないけどいいかな?」
「わー!ごめんなさい!美羽さん、美羽様、美羽先輩!!」
冷ややかな視線を翔に向け、一言だけ忠告を付け足しておいた。
「アイス、溶けてるよ」
「え?あーー!こぼれた!美羽、ティッシュー!!!」
ばかなうえに天然なのか。あと言っとくが私は“ティッシュ”じゃないぞ。