萌えた&夏詩くん
「おーい、大翔ー。君らはどこに行くつもりなのかね?」
「教室」
なぜにだ。首を傾けて分からないアピールをしてみる。
なんか盛大なため息、つかれたんだけど。
「授業」
「は?」
急いで腕時計を見る。
・・・ヤバイ。これは怒られるパティーン(パターン)だ。っていうか、どうしよう。今はとりあえず保健室に行って・・・。
「おい、ねーちゃんどこ行くんだよ」
「保健室」
「・・・どっか行く前にメールしろ」
なぜに命令口調だ。そして、いちいちメールはめんどい。
「美羽、部活どうすんの?」
「・・・?行くつもりだけど?」
「いや、大丈夫?」
「うん。今は、動きたい気分だしね」
「じゃあ、部活の後、男子が終わるまで待ってて。一緒に帰ろ。心配だから。っね?」
「・・・。」
今の間は、なんだよ。って思ってる方、これは体験しないと分かりません。
考えてもみてください、私の状況を。
なぜか頭の上に翔の手が乗っている。そして目の前に、道で通りかかっただけで誰もが振り向く顔がある。そして、くさい台詞。「心配だから。っね?」
画面の前で首を傾けている人ー。いたら、その人は女子としての感覚ヤバイですよ。どんだけ男子に興味ないんすか。
長々と語ったが、簡潔に言うと翔に萌えたのだ。
そして、注意としていっておくが別に翔のことを好きというわけではない。
「おーい。美羽、分かった?」
「ん」
「じゃーね」
いいなぁ。大翔と翔、同じクラスで。
私なんか、同じクラスの女子全員から敵と見なされちゃったし。
とりあえず、保健室早く行こー。
「失礼しまーす」
「あら、どうしたの?」
「集団によるひどいいじめに遭いました」
「いやぁね」
「ホントですよ」
「先生恋バナとかだったら、話聞きたいのにな」
「先生、生徒の話で楽しむのはやめてください」
「あら、好きなのよ」
「そうですか、ベッド借りて良いですか?」
「ごめんなさいね、どうぞ」
1番右のベッドにはカーテンが掛かってたから、誰かが使っているのだろう。たぶん、保健室に来る8割の人がサボりたいが為だ。
シャッ、シャッ。
カーテンを開けてしめる。
そしてベッドに横たわる。布団は掛けずに、腕を頭の下でくんで天井を見る。無機質な真っ白の天井。
「ねぇ」
声は出ない。口を押さえられて相手の口元には人差し指があった。初めて聞く声と顔。
「叫ばないでね」
とりあえず、うなずいておく。
「そう、ありがと。」
口から手が離れる。新鮮な空気が口の中に広がった。
「誰?」
反射的に質問していた。
「俺?」
お前しかおらんだろうが。
「そっか。俺、久佐賀夏詩。よろしく、美羽先輩」
言いにくい名前だな。っていうか、なぜに私の名前を知っている。
「あっ、俺一年だから敬語使わないでね」
お前は敬語を使わないのか?
「あと、カッシーって呼んで?」
「夏詩くんで良くない?」
「俺的にカッシーの方が気にいってんだけど」
どっちでも良くない?っていうか、私の名前を知っている方が気になるんだけど。




