**リョウトノデアイ。
楽しい休日は終わり、今日から学校が始まる。
杜和、夏帆、由佑たちは中学から同じ寮だということを初めて知った。
いつもその3人で登校しているようだ。
今日から私も一緒に登校することになった。
胸元に花をつけ、入学式が始まった。
やっぱりどこでも校長先生の話は長かった。
校長先生の話の中で、男なら男として男らしく……とかいう言葉が出てきたが全力で反論した……もちろん心の中で。
クラスが発表され、私はA組になった。教室に入ると杜和も夏帆もいた。
席は窓際の一番後ろ。最高に寝られるところだ。
隣は……ん?
「杜和!?」
「あ、衣良くん隣だね〜! この学校席替えないからずっと一緒!」
とにかく話しづらい人でなくて良かったと思う。
前の席はいわゆるイケメンというやつ。派手で、怖そうに見えた。
「はい、静かに! 初めまして、このクラスの担任の田辺史織です!
楽しい生活にできるようにみんな頑張ろうね。よろしくお願いします」
「史織ちゃーん、彼氏いんの?」
担任が知っている先生ということで安心したのもつかの間、前の席の派手なのがへらへらしながら手を挙げてそう聞いた。
「田辺先生と呼びなさい。……で彼氏はぁ、いるのよね〜!」
!? 怒るのかと思いきや、普通に答える史織。にやけながらのろけていた。
ざわつく教室。みんな笑って話している。
「ま、そんなことはいいから自己紹介!」
前から順に自己紹介。
人が自己紹介するごとに前の人が「イケメン!」とか「ブス!」とか評価している。
夏帆は「おぼっちゃま!」、杜和は「美少女!」。
前の人は上原 稜というらしい。
ついに私の番。
「雪代衣良です。好きなものは……お金? よろしくお願いします」
お金って……とどっと笑うみんな。恥ずかしい。
ほんとはかわいい服と少女漫画。でも言えないからつい言ってしまった。
「超絶イケメン!」
稜にはそういわれ、あんまり嬉しくなかった。でもイケメンかぁ。
今日は自己紹介とプリント配りと話だけで終わった。
放課後、バッグを持って今日は部活がないという杜和と帰ろうとした。
すると、後ろから史織に呼ばれた。
「衣良くん! ちょっと仕事お願いできる?」
「はい、わかりました。杜和、先帰って。ごめんね」
仕事というのは明日のプリントまとめと教科書運びなどの雑用だった。
それは良いのだが、同じ日直だという稜と一緒だということが嫌だった。
史織は稜にしっかりするように釘を刺して職員室へいった。
教室でプリントを並べ、ホチキスで留める。
「おい、イケメン。 お前全部やっとけ」
「はぁ? やだよ」
「こえぇなぁ、イケメン。しょうがねぇな。先教科書運ばねぇ?」
稜の提案により、まず教科書を4階から別校舎の4階まで運ぶことにした。
「重……っ!」
「はあぁ? 力なさすぎんだろ。俺がこれ持つからイケメンこれ持て」
「ありがと。なぁ、イケメンて呼ぶなよ。あんたの方がイケメンだろ」
「なんかきもいけどまぁいい。俺もてねぇし」
「顔はすっごい良いと思うんだけど」
私がはっきり意見を言うと、稜は頭をかきむしった。
良く見ると耳まで赤くなっている。
もしかして。
「照れてんの?」
「はあぁ!? てっ、照れてねぇし」
そういいながらも頬を真っ赤に染める彼。
意外とかわいいと思った。
稜は私の3倍の教科書を持ち、別校舎の4階にたどり着いた。
その後、ホチキス留めに取り掛かった。
もう外は暗く、静かな教室の中で私たちのホチキスの音が響く。
もくもくと作業をしていると、ぽたぽたという水の音と誰かの足音が。
「きゃ……!」
「うおっ!」
怖いのが一番苦手な私は、つい稜に抱きついて押し倒してしまった。
どんどんその足音は近づいてきて、この教室の前で止まった。
私はあまりの怖さに涙が頬を伝う。
その間、稜は私を抱えたまま頭を撫でてくれていた。
ガラッ!
「いやあぁぁぁ〜!」