**カンセツキス。
歓迎会に行く店は、歩いて30分かかる居酒屋だった。
なので、自転車で行くことになったが私はまだ買っていない。
後ろに乗るかと提案してくれたが、私は頑張ってついて行くと言った。
これ以上迷惑をかけたくなかった。
私の頑固さに負けてみんな渋々了承してくれた。
杜和が選んでくれた靴を履き、走る。
気を遣ってみんな遅めにしてくれたが全力でないとついていけなかった。
新しい靴のせいか、靴ずれしてしまったようだ。
でもそんなこと言えないので我慢して走り続けた。
足の痛みは強くなる一方だったがどうにか居酒屋に到着。
4人がけの個室に案内され、靴を脱いだ。
なんとそこには靴下まで血が染み込んでいた。
それにいち早く気づいたのは由佑。
「おい、おまえ……っ! 早く言えよ!」
「ごめん、なさい。みんなに迷惑かけたくなくって」
「僕らに迷惑かけるのが新人さんの役目! なんで言ってくれなかったの?」
由佑のバッグに入っていた包帯で応急処置。
剣道をしているからと杜和が巻いてくれた。
「いたっ……」
「ごめんね、だいじょうぶ?」
心配そうに優しく巻いてくれる杜和は終わった後私の足を撫ででくれた。
私はカシスオレンジジュースとフルーツヨーグルト。
4人でひとつの大皿に盛られたスパゲティーとサラダとオードブルを頼んだ。
「僕が取り分けますね」
夏帆が取り分けてくれたが、胃は女なので私には多かった。
少し減らすと、杜和に驚かれた。
「衣良くん! ちょっと少なすぎない?」
「あー、うん。今ダイエット中なの」
「さっきも言ったけど細すぎだよ! 僕の服がそんなだぼだぼになっちゃうって……。
もっと肉と筋肉つけな? ほら、食べる食べる!」
そういって私の皿にすごい量のスパゲティーたちを乗っけてきた。
細いって言われたのは嬉しいけど……多すぎる。
スパゲティーの前で戸惑っていると、由佑が私の腕を掴んできた。
それだけでなく、腹や脚や顔を撫でた。
「ん……なんですか?」
「たしかに痩せすぎだ。腰周りとか細すぎる。
今度から、夕飯は俺が作る。持ってってやるからそれを食え」
「ありがとうございます……!」
「あんまり急に量増やすといけないから今日はこれで良い」
そういって、いつもの量よりほんの少し多い量にしてくれた。
後から聞いた話によると、由佑は栄養士を目指しているらしかった。
いちごオレを飲んでいた杜和は私のジュースを見ていたかと思えば、いきなり奪ってストローに口をつけた。
「わぁこれ美味しーね!」
「……っ!」
まさかの……間接キスってやつ!?
私が赤面している間に由佑も夏帆も飲んでいた。
さんぶんのいちくらい減って帰ってきたカシスオレンジジュースは、飲む勇気が出なかった。
でもここで恥ずかしがっているわけにはいかないのでえいっと飲んだ。
ドキドキしすぎて味がしなかった。
みんなの腹も満足し、笑顔で帰った。
1時間ほどだったがとても濃くて幸せな時間だった。
私は料理まったくだめなので、料理ができる男の人ってかっこいいなぁって思います。
ご飯作ってくれるような人いないかなぁ。笑