**トントンビョウシ。
「んじゃあ衣装見に行きますかぁ〜」
そう言い出したのは私。
杜和は女装なので、なかなか行こうとは言い出しそうになかったからだ。
彼もちゃんとした男。
やっぱり女装って恥ずかしい……ようだった。
とりあえず和服の置いてある店に行ってみた。
そこには、『和服レンタルやってます』との看板。
「僕たち、学校のイベントで和服を使いたいのですが……。
別にあらく扱うわけではないので!」
杜和が勇気を振り絞って交渉する。
店員の女性は、さらに偉そうな女性を呼んだ。
「あらまぁ! 杜和くんじゃないの、大きくなったわねぇ!」
「わ、お久しぶりです、智子さん」
普通にどこにでもいるようなふくよかな体型の智子、と呼ばれた女性は杜和を見て懐かしそうに彼を叩いた。
「ああ、この方は智子さんと言って、僕の小さい頃住んでいた家の隣に住んでいたんだよ。
美味しい果物とかいただいたり、僕のお世話していただいたりしてたの」
「初めまして、雪代衣良と申します。杜和の友達兼ルームメイトです」
「あらぁ綺麗なお顔の男の子ねぇ! よろしくねぇ」
彼女の特殊な語尾を伸ばす言い方はなんだか心が温まった。
智子のおかげですぐに着物を貸してもらうことができた。
「ありがとうございました、また来ます!」
「ええ、こちらこそ元気そうなお顔を見せてくれてありがとうね! 元気でねぇ!」
「じゃあ次は……」
「衣良くんの白いスーツ、だね?」
白いスーツなんて専門店があるわけでもないのでどこに置いてあるか見当もつかないし、買うとなってしまうと高額で私たちに払えるとは思えない。
なんとなく〜で入ったのはスーツのお店。よくあるあれ。
そこにはメガネとスーツで決めた店員らしき客や、客らしき店員がいた。
どうにも学生には入りづらい。
「いらっしゃいませー」
「じゃあ行こっかぁ!」
勇気を出して中に踏み込む。
そして先ほどいらっしゃいませと言った男性店員に聞く。
「僕たちが学校のイベントで白いスーツを着ることになったのですが、貸していただくというわけには行きませんか?
決して無料でとは言いませんのでお願いいたします」
あー、んー、という曖昧な返事だけが返ってくる。
だめそうだと諦めかけたが、結局あっさりオーケー。
「なんかさ、とんとん拍子に話が進んだね?」
「ちょっと物足りないって思っちゃうんだけど……杜和は交渉して寿命縮んだーって思うくらい緊張しちゃったっぽい」
「もー衣良くんがやってくれれば良いのにさぁ!
……ってのはうそ! 衣良くんに任せるほど僕弱くないかんね!?」
はいはい、わかったわかった。
そう適当に受け流すと、彼は怒っていた。
その時、由佑は部屋で頭を抱えていた。
「俺……頭ん中史織先生のことでいっぱい……俺どーしたんだよ……」




