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一緒と隣と隣と上と下。  作者: 梅屋さくら
Story5 デートとイベント。
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**マキノヤキモチ。

お姉ちゃんと同じ席に移してもらってから、近況を話しあった。


「私は学校で校歌のピアノ演奏とかしてるし、絵も新しいアイデアを練ってるわ」

「相変わらずお姉ちゃんは忙しそうだね。

あたし今もう受験生なんだよ! ◯◯女子高に行きたいの」

「もうみのりも高校生かぁ。女子高、つらいけど……大丈夫?」

「うん! だって自分で選んだ道だもん。しっかりその道を進みたい」


お姉ちゃんが良く良く知っているあたしとは変わっていたからか涙ぐんでいるようにも見えた。

あたしが知ってるお姉ちゃんはずっとこんな感じだったけど。


あたしたちが話している間、真樹と夏帆は話していた。

思えば2人は同じ寮に住む住人だから初対面ではない。

聞こえた単語は、『僕』という一人称くらいしかなかった。

未だに真樹は他人に自分の本性を明かしていない様子が伺えた。

もう言っちゃえば良いと思うんだけどなぁ。


全員が食事を終えるころ外を見ると雨はすっかり止んでいた。

ここで別れようかとも思ったが、次の行き先は偶然同じだった。

あたしたちはまた自転車、お姉ちゃんたちは電車で。

自転車で行き先に向かっている途中、真樹はあたしを見つめていた。

何か言いたげだったので、どうしたの? と聞いても、


「別に……なんでもねぇけど?」


と目をふいとそらした。

この仕草が彼の『すねる』という感情を表していることにあたしはその時に気付いてあげることはできなかった。


比較的短い時間で到着したのは……


「来たっ! 東京駅〜っ!」


今おいしいお菓子や可愛いキャラクターグッズがたくさん揃っている東京駅。

お姉ちゃんたちの目的はここで家族や友達に渡す用のハンカチやお菓子。

あたしたちは、と言ってもあたしは大好きな『リラットリ』のグッズ。

まったく方向が違うので、とりあえずここで別行動をとることになった。


「うへへ、可愛い〜! これ買って良い!?」

「良いから……なんでお前こんなに買うんだよ」

「だって好きなキャラクターなんだからしょうがないじゃん。

真樹は好きなキャラクターとかいないの? ……っていないかぁ」


あたしが笑っても彼はいつも以上に笑顔を見せてくれない。


「やっぱり怒ってるでしょ? なんで? ごめんね?」

「別にお前が謝る必要ねぇから。気にすんな!」


やっぱり真樹、怒ってる。

でもこれ以上言ってもさらに怒鳴られるだけなので諦めた。


あたしたちはまた集まってふらふらと歩き回った。

おいしそうなアップルパイがあったのでそれを2つ買った。

お姉ちゃんはあたしたちの微妙な雰囲気に気が付いたようで、


「みのり、真樹くんと何かあった? 相談して?」


気遣いは嬉しかったが、彼の本性のことを言うことは出来ないので、


「ちょっとけんかしちゃった。でも大丈夫!」


と強がって見せてしまった。

そう? ならいいけど……と心配そうな感じを残しながらその話題には触れないでいてくれた。

こういう優しい気遣い、やっぱりお姉ちゃん。


一通りお互い行きたいところに行ったので、


「そろそろ帰りましょうか?」


夏帆が帰りを切り出した。

もう5時で暗めになってきたのであたしたちは別れを告げて自転車に向かった。

自転車に乗ろうと鍵を解錠すると、真樹があたしに抱きついてきた、後ろから。


「!? どうしたの?」


何を尋ねても答えず、どんどんあたしを抱き締める力は強くなっていく。

背中に彼は頬を押し付けて来ている状態で柔らかな髪が首筋に触れてくすぐったい。

長い間あたしはその恥ずかしい状況に耐えていたが、ついに後ろを振り返った。


「寂しかったよ……」


そう呟く声とともに、真樹はあたしに優しいキスをした。

頭を大きな手で押さえられてしまい逃げることは出来ない。


「ん……苦し……」


息が出来ず体が酸素を求めてきた時、やっと唇が離れた。

珍しく上目遣いであたしの目を見て来るものだから照れて目をそらしてしまった。


「どうしたの?」

「お前が姉に会ってから俺と話してくれなくて寂しかった。

あーなんで俺……こんなキャラじゃねぇのに」

「ふふふっかわいー」

「は!? か、か、かわっ、かわいい!?」


可愛いと言われたのがよっぽど心外だったようで、驚いていた。

なぁんだ、嫉妬ってやつか。


「あたしにやきもち焼いてくれたなんて嬉しい」


そう言ってあたしは自転車に乗って、早めに走り出した。

真樹が急いで乗って追いかけてくるのが見えた。

こんな可愛いところがあるからこそ、大好きなんだ。


あたしの家の前まで送ってくれた彼と別れる時、


「受験頑張れよな。じゃあ、また」

「ありがと」


『じゃあ、また』。

それはまた会おうという彼の分かりづらい意思表示。


笑顔のままあたしは家に入ったのだった。

ここでみのりたちと妃蘭璃たちのデートは終わり。

次はまた違うようなエピソードにします。


ギャップ、ってやつを描いた話がこれ。

……なのかもしれないですね。


リラットリについて触れてはいけません。笑


次回をお楽しみに☆

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