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一緒と隣と隣と上と下。  作者: 梅屋さくら
Story1 出逢い。
5/80

**オカイモノ。

とにかく私は荷物を出して、机の引き出しやタンスにしまった。

やっと気づいたけど……私、女物の服しか持ってきてない!?

歯ブラシとか文房具とか、世界一有名なネズミのしか持ってきてない。

こんなん男なんだから使えないよ〜!


私がどうしようと悩んでいるときに、


「まず私服に着替えよーよ。

制服っってネクタイとかベルトとかきつくない?」


なんで気づいちゃうの。

今『女物しか持ってきてないんだよね〜』とか言えるわけないし。

なんていおうか迷ってるうちに、杜和は荷物を覗き込んできた。

さっと隠し、平静を装う。


「お、俺、今日急に背伸びちゃったっていうか?

持ってきた服着られないから買ってくる」


我ながら、超ナイスないいわけだと思う!


「急にって……ふふ、おかしいね。衣良くん。

僕今ヒマだから一緒に服見に行く〜。いーよね?」

「う、う、うん」


あんまり今杜和と一緒にいたくない。

なぜなら、素=女が出てしまいそうだから。

でもここで断る理由が浮かぶほど頭の良い私じゃなかった。



徒歩15分くらいで着く距離にある店。

ちょっとの距離だけど、そんな間も緊張する。


「ねー衣良くんは勉強得意なほー?」

「まあまあ、かなぁ。中学で上位10位には入ってたってくらい?」

「まあまあ!? すっごい頭いーね! 僕なんていっつも100位以下だよ……」

「でも俺は運動がぜんぜん。50m10秒」

「あ、でもねぇ僕運動は得意だよ? 幼稚園時から剣道やってんの!」


そ、そうなんだー。

緊張で乾いた笑いしかできない。

でも、この人が剣道……すごく弱そうで守ってもらう側っぽいのに。


「杜和が剣道やってるとこ見てみたいなぁ、なんて」

「毎日7:00から道場で稽古してるから見に来なよ。

案内したいし、明日僕と一緒に学校いこーよ」

「あり……がと?」


会話しているうちに、店に着いた。

とりあえず会話が続いたことに安堵する。



店に入って初めての男物コーナーを眺める。

男子の今はやりの服とか分からないし、どうしよう。


「衣良くん! こんなんどー?」


そういって見せて来たのは、猫とネクタイがプリントされた白いYシャツと黒いスキニージーンズ。

地味だが、ちょっとおしゃれ。

杜和のセンスを感じるセレクトだった。


「ありがと。着てみる」

「良かった〜! 僕もうちょっと探してみるよ」


試着室でその服に着替えてみる。

ちょっと緩めだったが、ほぼ私にぴったりだった。


「どう?」

「すごいいい感じ! ほら!」

「ちょっとおっきい? でも似合ってる」

「でもだいじょうぶ。ほんとありがと」


似合ってるって男に対して言ってるのは分かるけど嬉しい。

レジでは、杜和が歓迎の気持ちと称してお金を払ってくれた。

普段から誰に対しても優しい人なんだと思った。

買った服を着て帰ることにした。



帰り道、行きよりは緊張せずに会話を楽しめた。

すると。


「あれ……雨!?」


周りが林しかないところでいきない大雨が降ってきた。

雨宿りもできず、先ほど買ったばかりの服は濡れてしまった。

透けないか不安だったが、杜和が着ていたパーカーを被せてくれたおかげで透けはしなかった。


通り雨だったようで、少し店に入って待っているとすぐに止んだ。

とはいえ、もうお互い服はびしょ濡れ。

髪はお風呂上がりのようで、靴の中までしみこんできている。


「まず帰ろう。それでお風呂入って、今着てる服はハンガーにかけて干す!」


風邪を引きそうだったので、走って寮へ戻った。

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