**ミュージックデートトドキドキ。
私、白川妃蘭璃が絵のコンクールで銀賞をとった翌日。
「ごめんね、服を決めるのに悩んでしまって」
「ううん、僕も今来たところだから。……綺麗だね」
今日はか、彼氏、である夏帆とデートの日。
行き先はクラシックコンサートだ。
そのコンサートは音楽をしている人なら1度は行きたいと選ばれる日本屈指のコンサートで3時間程度あるものだ。
私はこの日を待ち望んでいた。
それはコンサートに行きたいと前から思っていたからなのか夏帆と1秒でも早く会って話したいというデートに対する気持ちからなのかはわからない。
きっと、いや、確実に後者なのではないかと今実感した。
なぜなら彼とまた会えて嬉しかったから。
私たちはすぐに電車に乗って東京へと向かう。
電車の中は比較的空いていて、隣り合って座ることが出来た。
「ほら、今日のバイオリンの女性。あのクラシック賞の人だよ」
「本当ね。あら? このピアノの男性も……」
「ベストピアニスト賞の人だ!」
2人同じタイミングで大きな声で同じ言葉を叫んでしまい、周りの乗客からたくさんの視線を浴びることになってしまった。
お互い照れながら顔を下に向ける。
こんなちっちゃいことも将来想い出になるのだろうか。
それからも話し続けていたらあっという間に会場に着いた。
広いホールに老若男女幅広くの客がたくさんいる。
私たちはとても若いグループという感じの年齢だった。
演奏が始まる。
特にバイオリンもやっていたりする夏帆にとってこれはすごいのだろう。
私は涙を流したが、彼は目がぱっちりしてキラキラしていた。
「僕も……あんな風に弾きたいなぁ」
そう呟く声が聞こえた。
勝手に動くのか、手がなにかしらの楽器を弾く形になっていた。
長いコンサートが終わっても、私たちはその余韻に浸っていた。
やっと、
「もう帰ろうか」
言い出したのは夏帆。私もそうね、と言ってホールを出た。
ホールの外は気が付けば大雨に雷という最悪の天候になっていた。
そんな予報はまったく出ていなかったので2人して傘などを持ってきていない。
入る店を探そうと周りを見ても、予想以上になにもないところだった。
2人一緒に少しずつ屋根の下に入って行って進んだ。
やっとフレンチレストランを見つけた、でもまだ遠い。
すると私がノースリーブのワンピースを着ていたからか夏帆が着ていたパーカーを脱いで私にかけた。
そして抱きしめるような形になりながらもレストランに入った。
そのときの距離は普通ではないくらいに近くて、お互いの心臓の大きな鼓動が聞こえてしまうのではないかとどきどきした。
彼と一緒にいてこんなにきゅんとすることは今までなかった。
私たちが入ったレストランはかなりお値段お高めの高級店だった。
夏帆はつらいと言ったが私はまだ大切にしておいていた親からもらった金が残っているのでそれを使って食べようと提案した。
だが夏帆は了承してくれなかった。
「彼氏なのに彼女に払ってもらうわけにはいかないよ。
大丈夫、ちょっと安めのにすれば僕でも払えるよ」
やっぱりプライドというものがあるのだろうが私も引かなかった。
夏帆は私の頑固さに負けて、
「わかった……」
とは言ったものの、後でまたこのお金を返すと言い出していた。
そんなに遠慮とかせずに楽しくデートしたいなぁ、そう思った。
思えば初めてこの時不満が生まれた。
私も夏帆も適当に同じようなものを頼んだ。
久しぶりのフレンチレストラン。
昔は良く両親、みのりと来ていたなぁ、ふと思い出した。
そのあまりの懐かしさに微笑んでしまうと、
「どうしたんです?」
なぜか敬語に戻ってしまった夏帆の顔が目の前に。
胸の高鳴りを抑えようと頑張りながら、少し下がる。
いつも敏感なはずの夏帆が気付いてくれない……。
まだ恥ずかしくて仕方ない状態のままだったが、聞き覚えのある声が店内から聞こえた気がして私たちは声の方を向いた。
「真樹はその人のどんなところが嫌いなの?」
「全部。あいつの声とか聞いてらんねぇ。みのりの声の100倍聞き心地悪いんだぞ」
あれ、あっちは口調が違うような……でも。
「真樹くんとみのり!?」
「あ、あれ、お姉ちゃん?」
「夏帆くんもどうしてここにいるの」
私の妹カップルも同じ店に来ていた。
こんな偶然あるなんて……。
いきなりの妃蘭璃視点。
次はみのりor真樹視点予定です。




