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一緒と隣と隣と上と下。  作者: 梅屋さくら
Story5 デートとイベント。
39/80

**ショクギョウタイケン。

私はその時に声を掛けてきたおじさん達について行き店の外に出ると、髪を後ろで束ねたスーツ姿の女性が立っていた。

明らかに『仕事してます!』という感じの爽やかさだ。

おじさん達が怪しい人だったら帰ろうと思ったが、女性は私がモデルの代役だと聞くと笑顔で名刺を渡してきたので不信感はなくなった。


「こんにちは。たしかにあなたならモデルの代役いけそう……。

あ、私は藤原 真理子って言います。あなたの担当だからよろしくね」


名刺の受け取り方も分からないのでギクシャクしながらぺこぺこしていると、すぐに相手役の綺麗な女の子が来た。

年齢は私と同じくらいだが、とても可愛い。


「相手役さんですかー、よろしくお願いしますー!」

「この子が今日の相手役の美紀ちゃん。がんばってね!」


カメラマンの男性たちが用意している間、私は真理子にポーズの取り方を教えてもらっていた。

こう腰に手を当てて、手を差し出して、足をちょっと組んで……。

ささっと5分程度でポーズを覚え、本番に入る。


噴水のある公園に白いベンチとその周りに咲く花があり、そこで撮影する。

白いレースの服の美紀と緩めの黒いカーディガンを着た私はまず手を繋いで噴水の前を歩く。

ぼーっと歩くのではなく、笑って話すようにしなければならないからつらい。


その後2人でベンチに座ってタピオカジュースを持って話す。

今回のテーマは『初々しいカップルの初デート』。

衣良くんが初デートでやりたいことやっちゃってー! とは言われても、男の立場でなにをしたら良いのかわからない。


「衣良くん、美紀ちゃんのジュース飲んじゃってー」


美紀は少しは気にしているようだったが、私はさっと美紀の持っていたジュースのストローに口をつけ、一口口に含む。

本気で顔を赤くした美紀のほうを向いて、笑顔でぺろっと舌を出す。

今まで緊張してがちがちだったからだが一気にほぐれた。


道端に咲くたんぽぽをぷちっと取って彼女の髪にさす。

そのままの勢いで頭をぽんぽんしてみる。

そのときにはたくさんシャッターが押されていることに気が付いた。


そっと美紀の耳元で、


「ぎゅって抱き締めていいですか?」


そう聞いた。

男としている以上、勝手に女の子を抱き締めるのはどうかと思ったから。

すると迷うこともなく美紀は、


「はい、お願いします」


そう答えて笑った。


私は美紀の手を引いて綺麗な花が作り出す道の間に行き、そっと腕を掴んで引き寄せて私は美紀の肩の上に腕を通して抱き締める。

まっすぐな髪も一緒に。

そして離れてお互いふふっと笑う。


それからは2人とも自然体で話して、花を見ながら歩いて笑って……。

普通に女友達のような感覚で楽しんでいる自分がいた。


撮影はすぐに終わり、美紀と握手をしてお辞儀する。

真理子も、その他の人たちも、大きな拍手をくれた。


「衣良くん、良かったじゃない! 本物のモデルさんみたいだった!」

「うんうん、君はモデルになる気はない?」

「いえそんな……。俺は将来、絵を描く仕事に就きたいんです」

「そうか絵か。いつか君を取材したい。今日はありがとう、お疲れ様!」


こんなに色々な大人たちに褒められたのは久しぶりで、ちょっと達成感を感じた。

学校を聞かれて、走り書きしたメモを渡して帰った。


寮に帰ると、杜和が私に向かって走って来た。

いつの間にか出る前の微妙な距離感はなくなり、いつも通りに戻っていた。


「モデルの代役やったんでしょ!?」

「な、なんで知ってるの?」

「クラスメートのアキラくんが公園で見かけたって言ってて、わざわざ僕に電話かけてくれたんだよね。

初めての撮影、どうだった?」

「予想以上に楽しかったの! 杜和は撮影とかしたことある?」

「僕? うん、あるよ。僕実は小さい頃から芸能事務所に入れられてたんだ」

「え、う、うそ、まじで?」


うん、そーだよ。

軽く言うが、詳しく聞くと中3まで芸能事務所に入っていたという。

今の杜和の夢はモデル。らしい。


今日はきっと一生思い出に残る日だなぁ、そう思った。

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