**ジョシリョクナルモノ。
私たちがみのりの家で寝て待っていると、だいぶ経ってからみのりと真樹は帰ってきた。
手に紅茶を持っているかと思いきや、何も持っていない。
暖かい部屋の中でうとうとしながら少し体を起き上がらせた。
私以外はぐっすりと寝てしまっている。人の家なのに……。
「おかえり、ずいぶん遅かったね?」
「ちょっと長くウィンドーショッピングしちゃいました、すみません!
もっとくつろいで行きますか? 大丈夫ですよ!」
いやいや、大丈夫、遠慮しとく。そういって断った。
心なしか真樹の目は常にみのりの顔を追っている気がする。
おかしいなとは思ったが、そこは無視した。
私は杜和たちを起こして寮に帰ろうとした。
すると真樹は私の耳に顔を近づけて小声でこう言った。
「僕、ショッピング行ってきてみのりちゃんのこと……好き、になったんだ……。
だから僕だけどうにかして泊まる!」
「へ!?」
いつも優しげな笑顔を浮かべているが、今の真樹は燃えていた。
だれにでもかわいい、とか言うが、みのりに対する愛は本物らしい。
きっと本気で惚れている表情をしている。
真樹なら変なことしないよね……そう信じて、おいていくことにした。
寮に真樹以外の私たちは帰った。
夏帆の部屋に集まってトランプをしながら真樹について話した。
「真樹くんも本気で女の子に恋するんだねぇ」
「そりゃあ俺らと同じ男だからな……。
つぅか、杜和も俺も女に本気で惚れ……むぐっ!?」
稜がにやけながら言おうとする言葉を杜和は口を塞いで遮った。
稜は杜和を睨むが、そんなことを気にかけない。
こんな彼はあまり見たことがないので少し面白い。
「真樹さん、どういう理由をつけて泊まったんですかね?」
「んー真樹なら色々上手くやりそう。私には無理だなぁ」
「お前は男の部屋に泊まってんだろ、もうすでに!」
あ、そっか。
私がそういうとみんなが笑う。
夜中まで恋バナばかりしてしまい、気分は修学旅行の夜だった。
自室に戻り、少し女子力なるものを見せつけてやろうと思い、紅茶を淹れることにした。私と杜和の分。
するとまさかの紅茶から泡が吹き出し、キッチンは泡だらけになった。
杜和が駆けつけてきて、一緒に拭いてくれた。
「なにやってるの! 危ないから、僕がやるよ」
結局杜和のほうが女子力なるものは高かった。
私はただただ落ち込んだだけ……。
こんな私って、だれかに好かれているのかな?
いつか結婚したりとかって出来るのかな?
不安が募ったが相談はしづらかった。
次話からまた真樹視点にするつもりです。




