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一緒と隣と隣と上と下。  作者: 梅屋さくら
Story2 文化祭。
19/80

**レンアイソウダン。

「あたしが好きな人は学校のアイドル的な存在で、だめもとで告白したの。

でもね結局答えは『あんただれだっけ?』。

たしかに学校では委員会とかも入らないし、友達も1人だけだし……」


とにかくネガティブ思考になってしまっているようだった。

好きな人に名前も覚えてもらえてなかったことがよっぽどショックだったようだ。

私が告白した日を聞いてみると、昨日……という答えが返ってきた。

失恋した悲しみを癒すためにデートを決めたということがわかった。


私ははっきり言ってみた。俺、好きな人が出来たことないんだ、と。

それは本当のことだった。

今まで生きてきて人を好きになるという感情はわからないまま。

だから私はみのりの恋愛相談に乗るのも実は不安でいっぱいだった。

そんな私にがっかりするかと思いきや、みのりはこう言った。


「恋愛相談に乗ってくれるなら好きな人が出来たことなくても、この失恋の痛みみたいなのもわからなくても良いの。話を聞いてくれるだけで心が軽くなるし。

まぁ痛みっていってもたいしたことはないんだけどね……」


たいしたことはない。その言葉とは裏腹に、瞳には涙を湛えている。

きっと痛みを思い出してしまったんだ。

これまでみのりはあまり大泣きしたことはない。ずっと堪えていた。

でもついに堰が外れてしまったようで、声をあげて泣いていた。

赤くなった目と鼻を隠そうともせず、上を向いていた。


ここでみのりがずっと泣き続けると、自然と私が変な目で見られる。

もしかしてあの男の子が女の子を殴ったのでは、という目に囲まれてしまった。

とりあえず私はみのりの背中をさすり、深呼吸させる。

それでも過呼吸状態に陥ってしまったみのりはそれから抜け出せないので、肩を支えながら店を出た。

店員たちはなにかを聞こうか迷っていたようだが、なにも聞かないでくれた。


ちょうど近くにあった屋根のかげに隠れて背中をさすり、頭を撫でた。


「ほら、深呼吸、深呼吸……」

「うーっ……はっ……はっ……すみ…ま……せ……っ」

「喋らなくて良いから。ゆっくり落ち着いて」


すぅーはぁー。私の声に合わせて一生懸命深呼吸しているみのり。

している、といってもしようとしているという感じだが、まださっきよりは落ち着いたようで、私の顔をまっすぐに見られている。

ティッシュで涙と鼻水を拭いてあげると、しっかりお礼を言われた。


「もう大丈夫かな? 多分今日はあんまり出かけないほうが良いと思うから帰ろっか」

「で、でもまだあたしはだいじょぶだよ?」

「だめ。そんなに目が腫れてるんだし、冷やそう」


少し東京にいたいという気持ちがあるようだが、無理矢理電車に乗せた。


帰ってくると、また色々と思い出したようで涙ぐんでしまった。

過呼吸が戻ってしまったようだった。

このまま帰すわけにはいかないので、みのりの家に行って良いか聞いた。

女の子の部屋に仮にも男子が入って良いのか戸惑ったが、しかたがない。


「うちにくるの!? ちょっと汚い……」

「俺も部屋めっちゃきたねぇから安心して? このまま帰せない」


真剣にお願いをすると、心配が伝わったのか素直にOKしてくれた。

タクシーを呼んでみのりの家に向かった。

高校生には辛いお値段だったが、諦めようと思った。

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