表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/8

2056年2月14日 そして世界は朝日に満ちる

「……よしっ」


 手作りじゃ、さすがに引かれるかなと思って買ったのは、少し高い店に寄って手に入れたチョコレート。


 鞄の中に入れて、少し早めに僕は学校へと家を飛び出した。


「行ってきますっお父さん、お母さんっ」


「はぁい行ってらっしゃいっ」


「ちゃんと勉強してくるんだぞ」


 父と母は笑顔で僕を見送った。


 いつもと変わらない、日常の風景だった。


 僕は玄関を飛び出し、まだ太陽の昇りかけた朝の七時にあの坂道を走っていく。


 寝不足のぎこちない顔は、二人に見せられなかった。


 キリッとしっかりとした顔を、彼女に見せたかった。


 ふと、坂道を降りて行きながら街を見下ろせば、朝焼けが海の方から昇ってきて、街を紅く染めていった。


 灰色に染まっていた家の屋根は、光を浴びて様々に色を帯びる。


 広がる海は太陽の光に赤い絨毯を引き、空は茜色に染まっていく。


 木々は海の風にざわざわと揺れ、遠くで犬の鳴き声が聞こえて、朝がやってくるのを告げる。


 ―――2056年2月14日。


 夜明けがやってくる。


 注ぎ込まれる日差しに、胸の中の期待が膨らむ。


 僕は冷たい空気を吸い込み、昇る朝日を全身に浴びながら、少しだけ顔を強張らせる。


(……彼女に告白しよう)


 好きだって。


 手を繋いで、一緒に同じ空を見ていたいって。


 僕は昇る太陽を横目に、また坂道を下りていく。


 彼女より先に、下駄箱に手紙を入れよう。それから―――彼女に会って、それから。


 そう考えながら、顔がみるみる真っ赤になって、息ができないくらいに胸がドクドクいって苦しかった。


 



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ