2066年:始まりの場所へ
戦い続けて既に十年が過ぎた。
いつ終わるともわからない小競り合いの連続。
仲間は疲弊の色こそ見せないものの、刻苦は時の流れと共に確実に空気に滑り込み、体を蝕んでいった。
時が過ぎれすぎるほどに、仲間は減っていく。
狙撃されるもの。流れ弾に当たるもの。失血死。そして、自殺。
仲間は少しずつ減っていった。ソレと共に、道も遠のいていった。
誰かがやらなければならなかった。
道を開く者が必要だった。この道を、たった一人で歩く人間が必要だった。
―――行こう。
この道の先に未来があると言うのなら、この先に行き戦いを終わらせられるのなら。
一歩を踏み出せば、砂塵が舞い上がり夕焼けを霞ませる。
空はどんよりとしてやがて街が黄昏に沈む時に差しかかる。
そこは東京。
かつて俺達が平和に過ごした街、地下には迷路の如き線路と通路が走り、地上には巨大なビルがいつくも立ち並ぶ。
今は、それらが全て遮蔽物。
都庁ビルを中心に建物は巨大な壁になり、地下は敵の行く手を遮る。
そこは東京。
巨大な戦場となった、廃墟。今は亡き日本の中心。
黄昏の夕闇に、広大な戦場が沈んでいく。
もうすぐあちこちでサーチライトに夜の空が照らされて、廃虚の街は夜の戦いへと色を変えていくだろう。
沈む夕闇を身体に縫い、俺達は再び地面を蹴り上げる。
銃は片手に、防弾スーツを身につけ、通信デバイスを口元に添え、塵と灰の空気を吸い巨大な棺桶に身を包む。
六メートル強のパワードスーツ、徹甲弾を装備したガトリングを担ぎ、脚部には対地中用パルスバスターを装備。肩には予備弾薬を担ぎ、モニターの向こうに戦場を捉える。
皆、一斉に操作レバーを握りしめる――
夕日が沈む。
いよいよ、東京が夜に沈んでいく。
暗闇に染まった夜闇を無数のスポットライトが照らし、至る所で暗闇がかき消される。
不意に、夜風に硝煙が混ざり、突き出た鼻につく。
程なく遠くで対装甲ライフルの射撃音が尖った耳に響き、小さく息を吸い込み、脚のレバーを踏みこむ。
『―――先発隊が敵とぶつかりました』
強化パワードスーツが動き、それだけで地面が揺れる。
戦いの始まりだ。
明日に繋がるかもしれない、それともこれで終わりかもしれない。
第二次強襲作戦。
朝が始まるまでに、決着を付けよう―――
「ガングレド、皆の命を預ける」
『はい、隊長』
「行こう―――メグロ送電施設、今日こそ落とす」
夜の闇の中、俺達は駆ける。
これで終わることを信じ、明日へ命を繋げられることを信じ、地面を踏みこみ、強く歩いていく。
そして、目指すは東京都庁。
巨大なビルの奥へ――――