おとぎ話
高い高い山脈の向こう側にはとても広い大地が横たわり、いくつもの王国がありました。
そのうちのある王国にはとても立派な王様ととてもお美しく、またお優しい王妃さまがいらっしゃいました。
お二人の間には三人の王女様がいらっしゃいました。
一番上の王女様は王妃さまに似て、とてもお優しく、きれいな方でした。
お隣の国の王子様とはちいさなときから、とても仲良しでした。
王女様の二十歳のお誕生日の日、王子様は“結婚しよう”とおっしゃいました。王女様はにっこりと笑って頷かれました。
真ん中の王女様は王様に似て、とてもお強い方でした。
剣をお持ちになると兵士たちにも負けませんでした。
大臣たちの中には王女らしくないといって笑う人もいましたが、兵士たちは彼女のことが大好きでした。
ある日、王女様は森で大変な怪我をした青年に会いました。
彼は森の向こうの国の騎士で、悪い王様からみんなを助けようとしていました。
王女様は青年といっしょに悪い王様を倒しました。
新しい王様になった青年は、王女様にいいました。“わたしと結婚して、この国を守ってください”
王女様はほっぺたを少し赤くして、頷かれました。
一番下の王女様はとてもおてんばな方で、街に行くのが大好きでした。
ある日、お城を抜け出して街にいくと、知らない人がたくさん近づいてきました。
王女様は怖くなって、泣きたくなりました。
すると、ひとりの男の子が王女様の手を引いて助けてくれました。
王女様を助けてくれた男の子は王女様の従者になりました。
おてんばな王女様と従者の少年はいっしょに他の国のお城へお勉強にいったり、いつもいっしょでした。
大きくなった王女様は彼と結婚したいとおもいました。
ですが王女様は家来である彼とは結婚できません。
だから王女様は王様にいいました。“王女の地位を捨てて、彼と結婚し、遠くへ旅にでたいのです”
王様は幸せになりなさい、とふたりにいいました。
そして、ふたりは結婚して、高い高い山脈の向こう側への旅にでましたとさ。
遠い遠い昔のある王国の王女様たちのお話。