4人目 似ているような君。
…もう、なんなんだろうね。この子達。
どうして言葉の内に隠されている意味に気がつけないのか…。あっ、それがわかるのは僕だけか。
でも…本当に偶然だとしても、色々とすごいよ。まさかこんな広い世界で出会うなんて…ね♪
前回のあらすじ?はーい。わっかりましたよーう。言えばいいんでしょ。
えーと…「目的地に向かって出発した彼女たち。その時、チャラ男はめーさんから疑うような真実の話を聞いていた…」これでいい?省いたけど。
だいたい一緒でしょ?すごい!僕てんさーい☆
さあ、シーちゃんの観察、再開しようか…。
………
おはようございます。ギボウシです。
…まさかこんなふかふか柔らかな所で一夜を過ごすことになるとは……とても気持ちよかったです。はい。
ちなみに、めーさんとチャラ男は朝食の準備中です。
もうすぐ私の村につくそうなので、その前に朝食を摂っておきたいそうな。
私は何をしているのかって?ついさっきまで惰眠を貪ってましたよ。
この情報は、壁一枚隔てたところにいる御者さんのお話で理解しました。
ほとんど褒めてばかりで理解するのに時間かかったけど。
そんなことを考えているうちに、いいにおいがここまで漂ってきた。
ドアの横にある窓の縁に飛び乗り、開けられた窓から馬車の模様の凹凸を使って下へ降りる。
…降りやすい形でよかった。この高さだと落ちたらよくて骨折。悪くて死ぬからね。
ゆっくり下に降り、地面に足をつける。
ほっと一息つくと、お腹がご飯の催促をするように鳴った。
早く食べたいので結構早く走る。
小人族は、小さいのに身体能力が高いから並みの人間よりも足が速い。
運動音痴な私でも、50m8秒くらいで走れる。速い人だともっと速い。シロ兄は5秒くらいだった。
めーさんの所まで駆け足で行き、鎧の凹凸を使ってめーさんの体を上り、肩に飛び乗る。
よし!手を使わずに上れた!前は葉とか手を使わなきゃ上れなかったんだよな…。
……本当に運動音痴だからね?シロ兄なんて、地面蹴っただけでここまで上れるんだから。
……悲しくなってきた…。早くご飯食べたい…。
「…あと、器によそうだけだから…」
早くよそって下さい!お腹すきました!ってか、昨日ご飯食べてないんで、いつも以上にお腹すいてます。
あ、ご飯は小皿に移してください。人間が使う器だと落ちておぼれるんで。
少しして、めーさんの横に小さい皿が置かれた。肩から体を伝って地面に降り、人間用のスプーンを使ってシチューをすくい、食べる。
…おいしいです!
おいしくてどんどん食べていく。まあ、それでも人間の食べる速さと比べるとぜんぜん違うけど。
……ごちそうさまでした。
食べ終わり、満腹です。ちなみに、シチューの中に頭から突っ込むなんて茶番はなかったです。
めーさんが近くの川まで食器などを運び、洗いにいく。
そして、ここに残ったのは私とチャラ男だけになった。
「…なあ、お前は……いや、なんでもない」
気まずい。気まずすぎる…と思ってたところに、チャラ男が話しかけてきた。
けど、本題を話す前に止めてしまった。…これって、わからないからモヤモヤするんだよね…。
なんかムカつくからでこピンしようと思う。うん。そうしよう。
胡坐をかいているチャラ男の膝に乗り、肩に乗る
「…え、うっ、うっわ!なんだ!?」
すっごい驚いて動くが、気にしない。私、バランス感覚だけはいいから、落ちないしね。
チャラ男の肩に乗り、右耳を引っ張る。
イタタタという声を無視して、私のほうへ向けさせ…ジャンプして額をバチンとたたいた。
「っ!っー………痛いな!いきなり何するんだよ!」
その声に、私は嫌味ったらしく満面の笑みをチャラ男に向けた。
そして、言った。
「………ひみつ………」
それに、痛ましそうに目を見張り、視線をそらすチャラ男。
絶対怒るだろうなーとか思っていたのだけれど…、なんでこんなに辛そうなんだ?
……わからない。たぶん、過去の何かがあるんじゃないかと思う。
私は他人だから、そんなことには踏み込まない。
そう思っていた時、チャラ男がポツリとつぶやいた。
「……カイア・エピドート……」
「?」
「……俺の名前だ」
遠くを見つめ、呟くチャラ男…いや、カイア。
その姿に、何故だかとても謝りたくなって……変わりにこう言った。
「…ギボウシ」
その時間はめーさんが帰ってくるまで続き、出発するころに、ようやく重苦しい空気が消えた。
ホッとしたのもつかの間、見えてきたのは……私の村、草原種の小人族の村だった。
***
「…なあ、お前は……いや、なんでもない」
”人間なのか?”…そう言おうとして、俺は止まった。
これ以上先は、聞いちゃいけない気がした。
何故かはわからない。ただ…何かを感じたんだ。何かを…。
そんな風に物思いに耽っていると、小人が俺の体を上り始めた。
最初は、何なんだろうか?と思っていたのだが、小人が肩にたどり着いた時、何かをしようとしているのに気がついた。
「…え、うっ、うっわ!なんだ!?」
思わず素っ頓狂な声を出してしまったが、それにも構わず小人を肩から振り落とそうと試みる。
だが……こいつぜんぜん落ちねぇ!!なんでだ!?あれか、小人族に必ずある運動神経か!!
けど、その抵抗も空しく、小人族に右耳を引っ張られた。
無理やり右肩の方に向けさせられ、耳が少し痛い。
イタタタ…と小さく呟くと…小人は俺の額くらいの高さまで飛び上がって、俺の額をデコピン並の威力でバチンと叩いた。
痛みに思わず顔をしかめる。
一言文句を言ってやりたくて、後ろを向いた小人に、俺は怒鳴る。
「っ!っー………痛いな!いきなり何するんだよ!」
小人の体がピクリと反応し、そして、クルリと俺の方を向いた。
その顔は…
満面の笑顔だった。
「………ひみつ………」
何が楽しいのか。何故そんな笑顔なのか。何で叩いたのか。聞きたいことは山ほどあったのに…、そのすべてが無くなり、ただひとつだけ…妹のことを思い出した。
俺が妹の余命宣告を受け…妹には隠し事はしないと約束した俺は、妹に言おうとした。
けど……言いたくなくて、俺は言葉をとめた。
そんな俺を寝たきりの妹は、俺にデコピンをひとつして、俺を見上げてこういった。
「ひ……みつ……」と…
満面の笑みだった。心から楽しそうな…。
何故か、こいつに妹の姿を重ね……辛くなって顔を背ける。
何で…そんな楽しそうな顔をするんだ。何で……何で……妹と同じことをするんだよぉ…!
でも、不思議と怒りは沸いて来なかった。前だったら、怒っていた筈なのに。
隊長の話を聞いたからだろうか?…そんな簡単に心境が変わるはずはないと思うんだけど…。
横目でチラリとそいつを見る。
髪色も違うし、顔もぜんぜん似ていない。なんで…妹と重ねたんだ?
…こいつに関われば…わかるのだろうか…
「……カイア・エピドート……」
「?」
何で妹に重ねたのかも、この心境の変化も……妹を殺す原因を作った…小人族のことも。
「……俺の名前だ」
そう呟いた俺に、そいつは目を丸くし……申し訳なさそうに…何かを謝るかのように…言った。
「…ギボウシ」
もともと無かった話を入れました。
いや、前の話でめーさんとチャラ男の名前が判明するはずだったんですが、私がめんどくさいから省こう。とか思ったばっかりに……。
文章は少ないです。予定してなかった話なので。
………ご飯シーンって、書くの難しいですね。
次回は、目的地に到着!…できるといいなー…。
それでわ。