花言葉は「勝利」 終了
終わりです!
自分でも、多々気に入らないところがありましたが、直す気力がないので。
あと、遅れてすいません。気が付いたら二週間たってました。すいません。
その分、量はちょっと多め……かな?
それでわ↓
実況者の声が響き、一拍おいて、静かな空間に轟くような歓声が聞こえてきた。
後ろから喜びの声が聞こえてくる。戦闘種の皆が駆け寄ってくる足音が聞こえる。けど、そんな音も次第に俺の耳からは消えていった。
なんで救ったの?
その思いだけで胸がいっぱいだった。
もう死ぬんだって思ってた。でも、父さんの仇もとれたし、もういいやって思ってた。でも……どうして、あいつは……ギボウシは、自分を犠牲にしてまで、なんで俺を救ったんだ……?
母さんが俺を後ろからぎゅっと抱きしめる。周りの大人たちが、俺を取り囲んで口々に祝いの言葉を俺に向かっていう。少し離れた子供たちが、俺をキラキラした瞳で見つめる。
それにも目をくれず、俺はギボウシが落下し、いつの間にか塞がって影も形もなくなった穴を見つめる。
塞がった穴の上には、膝をついて、中身が抜けたような状態になっているシロ。その瞳には、生きる力が見当たらなかった。
きっと、ここで歓声を上げている人々は……そして、この大会に参加し、残念がりながらもゴールしたことに喜びの声を上げている人々は、気づいていないのだろう。
この大会は、死ぬ危険性があったことに。
もしかしたら、これは俺たちだけだったのかもしれない。だって、あんだけでかいのが出てきたのに、誰も気が付いていない。それに、俺たちの後にゴールしたやつは、俺たちがいた方向から来た。なのにそいつを俺たちは見かけていない。
たぶん、見えない様に結界か何かがあったと考える方が一番辻褄があうが……その場合は、誰がやったのか?それに……俺たちを隔離したのは、俺たちの誰かを…誰を殺すためだったんだ?
そんな疑問が沸々と湧いてくるが、それを解決する術は見つからない。そもそも、このことを話しても、信じてもらえないだろうしな……。
そう考えていた俺の元に、人ごみをかき分けて……いや、皆がその人が通る道筋を作り、その人が俺の元へとやってきた。
「優勝……おめでとうございます。……リンドウ君?」
そういって優しい微笑みを浮かべるのは、小人族魔種の村長、トリカブトだ。
だが、俺は正直言ってこいつが嫌いだ。
なんか胡散臭いっていう、俺個人としての生理的嫌悪感もあるが……それいじょうに、こいつが俺の父さんや母さんに「小人族戦闘種の村長の権利を、私に譲ってくれ」って言ってたのが、一番こいつが嫌いな理由だ。
こいつが俺に声をかけたのは、ただの賞賛だけじゃないだろう。そう思い、母さんを他の人達の元へと押し、離れさせる。その後、トリカブトに再び向き直る。
その際に眉根を寄せてしまうのは、しょうがないだろう。
「おやおや……。そこまで警戒しなくても…………大丈夫ですよ?」
含みがあるような言い方に、思わず身構える。そんな俺をみたトリカブトは、ニヤリという表現があうような笑みを浮かべ、男性にしては長い、肩甲骨まで伸びている髪の毛を右手で払う。
そのときに、何かの合図のような音が響き……俺たちの周りは、静寂につつまれた。
……確実に目の前のこいつが何かをしたに違いない。……けど、周りはまったくもって気が付いていない。というか、普通にしゃべっているようだ。見る限り、音がないのは俺たちの周りだけだと推測できる。
「……何をしたんだ……?」
とりあえず、これをやった張本人に聞いてみることにした。
俺の問いを聞くと、あからさまに……ってか、確実にわざとだろうとわかるような感じに目を少し見開き、口元に手をやった。
笑ってやがるなコイツ……!!と思うとともに、苛立ちが募っていく。コイツ、いちいち仕草がムカつくんだよ。
「おや……リンドウ君ならご存知だと思っていたんですが……?これは、音閉結界ですよ。重要なこと、聞かれたくないことを話すとき、よく魔種では使うんですよ」
口元は手で覆っているからわからないが、、目が小馬鹿にしたような感じから、口元をニヤけさせて、笑っているんだろうと思う。
苛立ちと共に歯ぎしりをし、その、俺以外には聞かれたくない話とやらを、早く話せと視線で諭す。
その後、少し間をおいてから、トリカブトが話し始めた。
「……無駄な話は省いて、単刀直入にいいましょう。……草原種の少女を返してほしければ、私に戦闘種村長の座を譲りなさい」
温度はそのままのはずなのに、極寒の地かと思うほどに、ここがとてつもなく寒く感じた。それは、トリカブトの冷たい瞳のせいだろうと、その眼をみてすぐさま思った。
体が、どんどんと凍えて冷たくなっていく感覚がする。だが、体の内側は、怒りが沸々と湧きあがっていた。
こいつが……俺を殺そうとした。戦闘種の村長という、ただの地位が欲しいだけで。さらには、その罠に引っかかりそうだった俺を、無自覚にも助け、捕まってしまった無関係な幼い少女を、そんな地位のために取引の道具として使っているのだ。こいつは。
「それとも……死んでほしいですか?少女よりも地位をとると?」
そういわれ、俺の怒りがさらに上がった。
こいつは……ボウシよりも地位をとるやつだと、本当に思っているのか?
本当は、ボウシをとると、声高らかに叫びたい。しかし、母さんの意向もなしに勝手に決めるのはまずい。今の村長の地位をもっているのは、母さんだ。俺じゃない。だけど……あの少女を助けたいと俺が言えば、母さんはあっさりとその地位を譲るだろう。父さんが死んでも、絶対にこいつに譲らなかった「小人族戦闘種村長」という地位を。
それだけは避けたい。なんせ、トリカブトの事だ。魔種と同じように、全ての権利を支配し、自分のお思うように動かすだろう。いくら戦闘種の皆がやめてと言ってもだ。それに、戦闘種は戦闘に関してはピカ一だ。他の種族に戦闘種を使って戦争を仕掛けに行かせるという可能性も否めない。
それに、後にそんなことになったら、どうしてあげ渡したんだと俺と母さんは責められて、戦闘種として住めなくなってしまう。
……そもそも、トリカブトが前村長の家族である俺や母さんを生かすとは思えない。
だから、俺が「こんな地位」いらないと思っていても、一人で勝手に決めちゃいけないんだ。
「地位を渡してくれませんですか……。こちらとしては、残念ですが……諦めるしかないようですね」
「…………へ?」
突然身をひいたトリカブトに、思わず間抜けな声が俺の口から漏れた。
今まで無理にでも奪おうとした奴が……俺を殺してまで、あの地位を奪い取ろうとした奴が……なぜいきなり、しかも、こんなにあっさり身をひいたんだ?
そんな疑問は、次の言葉で凍りついた。
「お父様も見捨て……無関係な草原種の少女も見捨てるなんて……、あなたは本当に……外道ですね」
そういって冷めた目をしたトリカブトは……ニヤける口元を隠すことをしなくなった。
ど……うし……て?どうしてこいつが……、父さんのことを知っている……んだ?
あれは、戦闘種の人々でさえ知らないはず!だって……あのことを知っているのは……俺と父さんだけで…………。そして俺は、それを誰にも言ったことはない。
じゃあ……こいつは、偶然みてたってことか……?いや、それはない。魔種は、雨の日が一番嫌いなはずだ。行くとしたら、よっぽどのことがあったんだろうけど……こいつだったら、他人をいかせるだろう。
もしかして…………こいつが、父さんを殺したあの化け物を……錬成した?
そういえば、大会中に出た、俺を殺しに来たあのでかい魚。あの大きさにあの強さ。戦闘種で一番強かった父さんを殺したくらい強い奴だ。こんな奴を錬成できる奴は限られてくるに違いない。
強力な魔力を持ってるトリカブトの娘だったらあり得るけど……たしか、噂では、彼女は自分の父親に反発しているらしい。幼い頃から。だから、その線は低い。
だとすると……錬成したのは、トリカブト。
よもや、あの魚が野生ということはないだろう。……だって、あいつが生息している地域は、砂漠だ。父さんが死んだときにいた場所は、草原種の住居に近かった。ということは……必然的に草原にいることになる。今回のこの大会も、場所は草原種の住居の近く……草原だ。
こいつは……あの地位を奪うためにあの魚を錬成し、父さんを殺した。
父さんの後についていき、結局庇われて父さんを殺してしまったことを、棚に上げるつもりはない。けれど、それでも、体の奥底から湧き上がってくる怒りを抑えることはできない。
魔物を錬成すると、魔物の視界から見ることができるようになる。そして、遠くから指示を出すことも可能だ。
目の前のこいつは……魚の視界から父さんの事を見ており、故意的に殺そうとした。俺がいたのは、誤算だったに違いない。けれど、それすらも裏手に取る。
勝てない。
そう思った。直感的に。無理だと思った。
そう思うと同時に、俺の中の怒りや憎悪などの負の感情がどんどんと抜けていく。
……もう、いいよな。こんな地位、父さんも母さんもいらないだろ?
戦闘種の皆も、いいよな。俺、こんだけがんばったんだ。今まで戦闘にしか使っていなかったのを、全部使ってまで考えたんだ。けど……打開策は見つからなかったよ。だから……もう、いいよな。
諦めても、いいよな。
その時、聞こえるはずのない声が聞こえた。
「――――リンドウッ!!」
いつの間にか俯いていた顔を、弾かれた様に上げる。
それと同時に、パリンと音があたりに響き、俺とトリカブトの声だけだった空間に、色々な人の話し声が入ってくる。
それがだんだんと遠ざかり、シロの顔と声しか聞こえなくなった。きっと、この後の言葉がわかっているからだろう。
シロの顔は、悲しさと、そしてそれ以上に、嬉しさがあった。
シロが上を見上げる。その視線をたどるように、俺も同じ方に視線を向け……シロと同じ所で視線を止めた。
小さな小さな、特徴的な黒色をもつ、少女。
思わず踏み出してしまいそうな足を無理やりとめ、トリカブトに笑顔で、言う。
「あんたの負けだよ」
俺が言うとともに、トリカブトが苦虫を噛み潰したような顔になる。そして、俺の頭の中に負けた奴の負の感情が流れ込んでくる。
それを強制的にシャットアウトし、駆けだす。
数歩で、シロの近くまできた。ボウシの所までは、あと2、3歩あれば真下につく。
跳ぶために膝を曲げ、腰を落とすと、囁きのような呟きが聞こえてきた。
「……まかせた」
「――――っおう」
きっと、自分がいきたかっただろう。一日にも満たない時間しか、あいつらと行動を共にしていない俺でも、シロがボウシを家族として、とても大切にしているのはわかった。
けど、自分じゃできないから。怪我をしている自分じゃ、どうなるかわからないから。だから、俺に任せたんだ。あの悲しそうな顔は、自分でボウシを助けられない悲しさだろう。
……めんどくさいことを抜きにして、正直に言おう。嬉しかった。
いや、だってさ、ボウシが生きてて嬉しいとか、俺自身で助けに行きたい!とか、あるよ?けどさ…好きな子に任されたら、やるっきゃないし、それが一番嬉しいに決まってる。
……こんぐらいで舞い上がってちゃいけないってのは、しってる。けど……初恋なんだから、ちょっとくらいいいだろ!
そんな俺の思考を無視して、ボウシとの距離は近づいてくる。
ボウシの方に手を伸ばし、膝の裏と首に手を添える…いわゆる、お姫様抱っこってやつだ。まあ、こっちの方が地面に降りたときの反動が、逃がしやすいから特に他意はないんだけどな。
ボウシを横抱きに抱え、頭が下にならない様に注意しながら、そのまま下に落ちる力に任せて落下する。
下に向かって落ちているからか、腕に重さはほとんど感じない。状況が完璧に把握できていないせいか、思わずボウシを精霊かと思ってしまいそうなほどだ。
地面がどんどん近づいてきて…そして、足の裏が地面に触れた。
右足から降り立ち、地面に降りた反動を殺すように、受け流すように体のバネを使って膝を曲げる。少々ビリビリと反動がきたが、それと共に腕にかかった重さに、これは現実なんだ。と、思わず安堵した。
「ボーシッ!!」
声を上げながら、とてつもないスピードでシロが走ってくる。
数歩で俺との距離を縮め、目の前のあたりで急ブレーキをかけ、俺の目の前でちょうど止まった。俺が抱えるボーシを、心配そうに見つめる。
「気絶してるだけだよ」
そう声をかけると、大粒の涙をいっぱいにためた瞳で、勢いよく顔を俺の方に向けた。
顔が綻び、まるで大輪の花のような笑顔が、顔全体に広がる。涙が、一粒だけ零れて、頬を伝って地面に落ちた。
「……ありがとう。リンドウ」
その姿はまるで、生まれたときから太陽の光を一身に受けた一本の花みたいで……、その花がきれいに蕾を開かせたような気がした。
……何を考えているんだ。俺は。
なんだか無性に恥ずかしくなって、ボーシをシロに押し付け、いつの間にか火照った顔を隠すために、そっぽを向いた。
顔をそむけた先には、悔しげな表情を浮かべた、トリカブト。
トリカブトの思考が、俺の中に入ってくる。”なんで失敗したんだ””私の作戦は完璧だった””すべてはあいつが悪いんだ”その思考をシャットアウトし、トリカブトに向けて口だけを動かす。
―――ざまぁみろ。
さらに顔をゆがめたトリカブトから顔をそむけ、空を仰ぎ見る。
手に持った父さんの槍の矢じりを、太陽に向けて掲げる。
呟く。
「父さん。勝ったよ」
初めての、心地よい勝利の余韻に、浸った。
書いている途中で気が付いた。
これじゃあ、リンドウが誤解したままで終わる。
ということで、ちょっとおまけをやってから終わろうかと。
……本当におまけだけで終わるのかな……。
それでわ。




