第99話 St. Christmas Eve♪
今日はクリスマスイブ。街は冬の一大イベントに大盛り上がり。
皆自分の家にあるクリスマスツリーを飾り付けたり、イルミネーションを煌びやかにセットしたりと、たくさんの人々が幻想的な空間を作り出す素敵なイベントだ。
楽しさを全力で表現する為に、笑顔いっぱいで仕度をする日。クリスマスイブ。
ただ。
今日のオレの部屋は、少し違っていた。
部屋も、ツリーも、中途半端に飾り付けられたまま、まるでオレの部屋だけ時が止まったようになっている。
居間で棒立ちになるオレ。
そしてオレに向き合う形で立つ黒ローブ。その肩は小刻みに震えているのがわかる。足元には奴が落とした星の飾り。
「準くんなんて・・・」
・・・。
なにをどう説明したらいいのか。
オレ自身もかなり混乱している。
一言で言えば、とっても大変な事態になってます。
「準くんなんて・・・」
オレの目の前に立った死神は涙目。
その目は激しい怒りに満ちており、そしてそれはオレに向けられている。
・・・。
次の瞬間、奴の口は大きく開いていた。
「準くんなんて大っ嫌い!!」
・・・!!
【里原準は精神に99954のダメージを受けた】
死神の発したその一言は居間に響き渡り、オレの頭の中で反響した。
反響するのだが。精神にダメージがあるのもわかってはいるのだが。真っ白になったオレの頭では、それを理解する事さえも時間を要した。
だんだん、目の焦点が小さな金色の頭に戻っていくのと同時に理解という名のスキャンが再起動し、今度は激しい動揺が内側から出てきた。
奴は今・・・。
い、今。
だ、大嫌い・・・って。
大嫌い?
え?
誰が。
オレが?
オレに言ったのか?
まさか。
冗談じゃなくてか?
いやこの顔はマジだ。
死神はオレの目を強く見ているのだから。
そして胸に軽い物理的な衝撃を感じたオレは胸元を見下ろした。
「ちょっ、おい死神!」
「大嫌い大嫌い!」
オレは携帯電話を持ったまま居間に立ち尽くし、そんなオレの胸元を死神がポカポカ殴っている状態。
「聞けって死神!」
「やだやだ!準くんは嘘つきだ!キライ!キライ!」
叩かれるままだったオレはここで初めて身体を動かし、死神の腕を掴んだ。
「落ち着いて話を聞けって!」
「やだ!準くんの顔なんて・・・見たいけど今日は我慢して見たくない!」
死神はオレの手を振り払うと、真一文字に閉じた口元を震わせた。
不謹慎かつオレにしては珍しい事なのだが、何故か怒った死神の顔に一瞬見入ってしまった。
「準くんなんか《豆腐のカドに頭をぶつけてドロッドロ》になっちゃえぇーー!!」
リアル!
「お、おいっ・・・!」
「うぇぇぇぇぇぇん!!」
死神はフードを深々と被り、マジ大泣きで部屋を飛び出していってしまう。
「待てって!死神!」
オレの言葉には耳を持たずに玄関扉を勢い良く開いて飛び出した死神だったが、
ドスン!
「あぅ!」
ちょうどオレの部屋に用があったらしい人物にぶつかってしまった。
「おー。どうした死神、急に飛び出したら危ないぞ?」
死神がぶつかったのは保健教師を適当にやっている高坂早苗先生だった。
「うぅ・・・うぇぇ・・・ぐすっ」
泣きながら先生の背後に隠れる死神。
突然の状況に呆然としていた先生は、まず死神の様子を見て〈む?〉と片方の眉を上げる。
そして次に玄関の上がり端に立つオレの方を見て〈ふむ〉と小さな溜め息を漏らした。
オレがその溜め息を鼓膜に響かせた時には、先生はオレの目の前に立っていた。
しゅ、瞬間移動!?
「おいおい里原」
うわ、めっちゃ怖ぇメンチ。
冬音さんでもここまでのガンは飛ばさねぇよ。
「・・・い、いや。その」
「おいおいおいおいおいおい」
高坂先生はずんずん顔を近付けてくる。
「ちょっと先生、近、近い・・・!」
「おいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおい」
「・・・!」
こ、殺される・・・!
このナイフみたいな目は殺る気の目だ・・・!
「女の子を泣かせるたぁ、なっちゃいねぇなぁ里原。あぁん?」
あぁ・・・もう駄目だ。
この白衣の悪魔(今日は私服だが)はオレをバラッバラに解体する気だ。
ポケットから出したその片手が今にもオレに攻撃を加えそうで、ビクっとしたのだが
「ふむ。・・・でもまぁ」
「?」
しかし高坂先生はオレの肩をポンと叩くだけだった。
「何か理由がある事くらい想像がつくっての」
言いながら先生はくるりと背を向けて部屋を出ていき、部屋の外で扉に隠れながら先生のメンチにビクビクしていた死神と手を繋いで行ってしまう。
「ま、ちょっとの間だけ死神を預かっててやるよ」
――――――――
―――――
―――
再び一人でオレの部屋に戻ってきた高坂先生は、居間のコタツに入って頬杖をついた。
死神は高坂先生の部屋でDVDをおとなしく見ているらしい。
「おい。なーにガラにもなくマジでへこんでんだよ里原」
「残り精神ポイントが45だからですよ・・・」
「なんだそりゃ?」
高坂先生の向かい側に座ったオレも頬杖をつき、溜め息を吐いた。
「はぁ・・・」
「お、おいヘコみすぎだろ。私はそんなお前の姿、初めて見たぞ」
自分の事はよくわからん。
「たまにはケンカもあるって。で、そのメチャメチャ面白そうな、事態の経緯を聞こうじゃないの。この高坂センセに話してみな!」
ケラケラ笑う先生。
状況を楽しんでんじゃねぇよ。
まさに《人の不幸は蜜の味》を完璧に表現したような顔をする先生を軽く睨みながら、オレは話す事にした。
――――――――
―――――
―――
あれは聖夜祭から帰ってきた後の事だ。
聖夜祭よりも、次の日にこの部屋で皆が集まるクリスマスパーティーの準備で頭がいっぱいだったオレは、死神と一緒に飾り付けをしていた。
後で冬音さんと彩花さんと地獄旅館へ死神達のクリスマスプレゼントを買いに行く約束もしている。
クリスマスを全力で楽しみにする死神は、上機嫌でクリスマスツリーに飾り付けを施していた。
そう、まだこの時は何も問題が無かった。
「さあ、いつでも来なさい《サンディ・クローズ(カギ爪の男)》!」
「サンタクロースだ」
つーか間違え方がティムバートン作品の真似である。
「知ってるよ〜♪サンタさんにプレゼント貰うんだもん」
鼻歌を奏でながら死神はせっせとツリーを飾り付ける。
オレは携帯のバイブが鳴っているのに気付き、コタツの上に置いてあった携帯電話を手に取った。
「はいもしもし」
『あ!里原さんこんにちは!』
この声は聞き覚えがあるぞ。ファンタズマの・・・誰だっけ。
部隊は・・・。
「えーと、《フォビデンス》の奴か?」
『違いますよ、あんな危ない連中と一緒にしないでください!後輩のテツマです!《ヴァニシュ》の!』
・・・あー、隠密機動隊の奴だ。思い出した。
「おー、テツマか久しぶり。どうした?」
『いやー、実は今年もケーキ屋のバイトが人数足りなくって』
「オレがまたサンタをやれってか?」
『そうなんです!衣裳はこちらで用意しますんで!』
例年このシーズンになるとオレはサンタの衣裳でケーキを配るバイトに引き出されるのだが、さすがに今年はそんな暇はない。
「いや、今年サンタは・・・」
『無理・・・ですか?』
「うん。毎年毎年やってたけどなぁ」
『残念。仕方ないですね、わかりました。オレは気が乗らないですけど、冬音の姐さんに怒られてしまいますからね』
ファンタズマの活動費調達の意味もあるからなぁ。
「そりゃ行かないと」
『ですよねー。あ!あと最後に伝言が・・・』
「?」
伝言?メンバーからか。
『《フラッシュ》の連中が〈LOVE里原様・・・』ブチィ
即座に電話を切った。
アホか。
ああ、ちなみに話に出てきた
《フォビデンス(禁)》
《ヴァニシュ(消)》
《フラッシュ(瞬)》
とは、すべてファンタズマに数ある部隊名の一部だ。
オレや冬音さんはそれらを統括する、ファンタズマの中枢とも言える最高位
《ヴァーテクス(頂)》
って部隊に居たのだが、まぁ昔の話だから特に語るものでもないか。
パタン、と携帯を折り畳んだオレは作業の続きに取り掛かろうとしたのだが、その状態のまま硬直した。
呆然とした顔の死神が、目の前でオレを見上げていたからだ。
「どういうことなの準くん?」
「・・・?」
どういうこと、とは一体何の事だ?
今していたバイトの話が気になったのか?
しかしなにやらとても真剣な表情だ。
手を滑らせてコロン、と持っていた星の飾りを落としてしまった死神はしかし、そんなことは微塵も気にせず突然叫んだ。
「準くんの馬鹿ぁ!」
「へ!?」
無論オレは驚くしかねぇ。
・・・な、なんで?
「準くんはサンタさんじゃないもん!」
・・・。
どういう事だ?
何に怒っているのか皆目見当がつかなかったオレは、さっきのテツマとの会話が原因だと悟り考えた。
〈オレがサンタ〉である事に怒っているのは間違いない。
んー。死神はサンタが本当に居ると信じているとか?
それでオレがサンタやってるとかっていう会話を聞いて怒ったわけか?
バイトの話だから勘違いしてるだけだと思うが。
「ははっ、違う違う死神。バイトの話・・・」
オレは軽く笑いながら弁解しようとしたが、何故か死神の怒りはおさまっていなかった。
「準くんなんて・・・」
――――――――
―――――
―――
「・・・というわけなんです」
「ふーん」
高坂先生に全て話してはみたが、オレだって死神が怒った理由がわからないのだ。もしかしたらオレがサンタの事を弁解しきれていなかっただけなのかもしれないが。
でもって高坂先生も理解できたのかできなかったのか、
「ふぅーむ」
と難しい表情をするだけだった。
「まぁなんだ。里原もよくわからないのなら、本人に聞いてみるしかないわねぇ。相当ご立腹な様子だからそれは私が引き受けてやるよ」
あぁ、相当ご立腹なのか・・・。
オレの発言に怒ったのはわかるが、思い込みだとしてもサンタがオレだなんて低級の嘘であんなに怒るものなのか?
とにかく、ちょっと憂欝だ。
「じゃあ、死神をお願いします」
「声のトーン低っ! 任せろ。里原はこれから佐久間さん達とプレゼントを買いに行くんだろ?死神の気に入りそうなモン買ってきてやれ」
「はい」
「あ、私のクリスマスプレゼントは《ドンペリピンク7本》でよろしく!」
ふざけんな酒豪!
――――――――
―――――
―――
まぁ、とにかく死神の機嫌が落ち着くには時間が必要だろう。
あれから約一時間。オレは地獄旅館に居た。
「まさかお前がこんな店を知ってるとは思わなかったよ」
地獄旅館の裏町区画。喫茶店、《カノープス》。そのテーブル席でオレと冬音さんは向かい合って座っていた。
この喫茶店は、かのハロィンアイドル《ジャック・O・ランタン》に教えてもらった穴場である。
「そういえば、彩花さんはどうしたんですか?」
「ん?須藤はとっくに帰ったぞ。大学内の幼稚園でクリスマスパーティーがあって、友人に誘われたんだとさ」
「へえ」
「まったく、大忙しだなアイツは」
言いながらパンプキンティーを一口飲んでテーブルに置いた後、冬音さんは突然吹き出した。
「ぷっ!わははははっ!しかし準と死神がケンカだなんて珍しいな」
「わ、笑い事じゃないですよ。マジで怒ってるんですからアイツ」
「珍しいのはお前の現状を含めてだよ」
「?」
「準が他人の感情に激しく動揺するなんて初めてだからね。冬音お姉さんは嫉妬を抱いちゃうよ」
「?」
「まあいいさ。で、そのメチャメチャ面白そうな事態の経緯を聞こうじゃないの」
そう言われたオレは、どっかのヤンキー保健教師と似たようなことを言う冬音さんにも出来事を話した。
「――ふぅん、テツマから電話がねぇ。ちきしょー」
何がちきしょーなんだ?
「なんで死神があんなに怒るのか全くわかんないんですよ」
とオレが溜め息混じりに言った瞬間、真正面からスプーンが飛んできた。
危なっ!
「準、お前が悪い」
冬音さんは怒ったような、でも笑いをこらえているような、そんな顔で言った。
「オレ・・・ですか」
「うん。そんでもって死神にも非はある」
よくわからない事を言われた。
「まー、高坂センセも気付いてるだろうよ。早くプレゼント買って帰ってやれ」
そう言うと冬音さんは席を立った。
スレンダーな体型の、華奢な腕がオレの顔面に伸び、
ビシッ!
「あ痛っ!」
デコピンをかまされた。
額を押さえるオレに冬音さんは伝票を押しつける。
「・・・今度私の為に暇を作れよ準。ヒントをやったお礼だ」
「は、はあ・・・時間」
「にひひひひ、デートだデート!」
すごい約束を取り付けられた・・・。
「さて、メアへのプレゼントも買ったし。私は一足先に帰るかねぇ。じゃあまた明日クリスマスパーティーでな!」
オレはスタスタと喫茶店を去るスーツ姿の冬音さんの背中をぼーっと眺めるしかなかった。
『あのー、お客様?』
テーブルの隣に立っていたのはドラゴンの仮面を付けた店員だった。今日はさらにサンタクロースの帽子まで被っている。
『スプーン落としましたよ?』
「あ、ああ。すみません」
考えにふけるオレは二人分のお茶代を支払い、首を傾げる店員をよそに喫茶店を出たのだった。
冬音さんも高坂先生も何で死神が怒ったのか知っているらしい。やっぱり偽サンタが許せなかったのだろうか。
ずっと考えながら歩いていたオレは気付けば地獄旅館五階、ゲルさんのお店である《雑貨屋カオスディメンジョン》に着いていた。
ここで死神のクリスマスプレゼントを買うつもりなのだ。
「こんにちは〜!」
『はいはいー!』
!?
店の奥から出てきたのは何故かエリート餓鬼。
「何でエリート餓鬼が!?」
『実はゲル様からの派遣依頼がよくございまして。こうしてたまに一人ずつお手伝いに来るのですよ。私も初めてですが、こういう仕事も悪くないですな』
楽しそうに品物を整理している。
わかったぞ。多分ハロィンパーティーの時にゲルさんはエリート餓鬼の働きぶりに関心していたから、バイトで何度か派遣を頼むことにしたんだろう。
上級任務派遣課のエリート餓鬼をバイトで雇えるのはゲルさんくらいだ。
少し経って奥からゲルさんも出てくる。
「こんにちはゲルさん!」
『・・・(いらっしゃい里原くん)』
相変わらずジェスチャーが上手い。
「頼んでいた物、ありますか?」
『・・・(ロシュへのクリスマスプレゼントだね?ちょっと待ってて)』
ゲルさんは奥へ戻っていく。
その時、品物を整理していたエリート餓鬼が無線機を耳元にあてた。
『はいこちらゲル様派遣係です』
話し相手が誰かはわからないが、なにやら楽しげな様子だ。
『はい・・・え!?・・・はい・・・馬が・・・。えぇはい、地獄旅館に。・・・ははっ、お気の毒ですな』
何の話だ!!
『では頑張ってください』
通話を終えたエリート餓鬼にオレは尋ねざるをえなかった。
「な、なんの会話だったんすか?」
『え?ああ!《我らが総大将の閻魔様が競馬で大外れして大暴れし出したので、地獄旅館内で確保の任務を遂行中》という話ですよ』
アホか大将。
「ははっ、でも何の話題かと驚いた」
『里原様は私の声しか聞いていませんでしたからね』
・・・。
・・・?
そう。オレはこのエリート餓鬼の声しか聞いていなかった。
だから話題がわからなかった。
むしろ《馬が地獄旅館で走り回っている》的な話題だと誤解してしまった。
・・・。
誤解。
・・・!
あっ!
「そうかぁぁぁぁぁ!!」
『ど、どうしたのですか里原様?』
「うおぉぉ有難うエリート餓鬼!やっとわかった!」
『は、はい?』
『・・・(はい里原くーん、プレゼントをラッピングしておいたよー)』
「有難うゲルさん!」
オレはゲルさんからラッピングされたプレゼントの箱を受け取ると、足早に帰路についた。
『いったい、どうしたのでしょうか?』
『・・・♪(ふふっ、《思案投首》が《意気軒昂》に変わったみたいだね♪)』
――――――――
―――――
―――
高坂先生と冬音さんが簡単に気付けて、オレが気付けないわけだ。
オレは足早にマンションに到着し、エレベーターの中で無意味に七階のボタンを連打していた。なにやってんだろ。
とりあえず部屋に戻ったらプレゼントを置いて、それから高坂先生の部屋へ死神を迎えに行こう。
チン
という音が鳴り、エレベーターを降りたオレはポケットの中に片手を入れて鍵を探しながら、部屋の扉の前に立った。
その時。
トスン
背中に負荷がかかった。
ビックリして、身体はそのままに首だけを後方に回す。
背中にぴと、と黒いローブがくっついていた。
「ぐすっ・・・ごめんなさい」
死神だった。
「早苗ちゃんに聞いたよ。私、勘違い・・・ぐすっ。だって・・・約束・・・。準くんバイト・・・」
「オレがバイトに行くと思っちまったんだよな?」
金髪の頭が頷く。
「キライなんて言って、ごめんなさい・・・!」
口の動きが背中から伝わってくる。
オレは死神の頭に手を乗せた。
「オレがもしお前の立場だったら、同じように怒ってたぜ」
「ぐすっ」
「まー、電話の会話ってのは本人達にしか話題がわかんねぇ場合もあるからな」
「ぐすっ」
「約束だったもんな。クリスマスイブはケーキ作ってやるって」
「うん」
そりゃあな、あの電話での会話でオレの声だけ聞いてたら怒るわ。
完璧に《オレがバイトで留守になる》的な話題だと勘違いされても仕方ない発言しかしてなかったからよぉ。
「結局はどっちも誤解してたっつーことだ」
「・・・けんかりょーせーばい?」
「ん、ちょっと違ぇ気がするが・・・まぁそんな感じだ」
呆れたのかホッとしたのか自分でもよくわからんが、オレが笑うと死神もニッと笑った。
「ほらケーキ作らねぇと。飾り付けも残ってるし。ちゃんと手伝えよー?」
「はぁい♪」
玄関を開けて中へ入ったところで、死神の目がオレの手元に集中しているのに気付いた。
あ。
「準くん、それプレゼント!?」
バレた。
「うん、ちょいと早いがクリスマスプレゼントだ」
「わぁーい!」
プレゼントの箱を受け取った死神は駆け出し、コタツの上で早速開いた。
中身は奴が前から欲しがっていたものだ。
「うわぁぁぁい!私が欲しかった魔力増加腕輪だぁ!」
・・・商品名をゲルさんに伝えるときオレがどんなに恥ずかしい思いをしたか。
さて、これでなんとか無事にクリスマスを迎える事ができるな。
ふぅ。
オレにしては珍しく、ちょっと焦ったクリスマスイブでした。
「必殺技の威力が上がるかなぁ?」
しまった!考えてなかった!
たまにはこんな雰囲気もと思い、珍しく準くんが気を揉むような宵祭を書きました。では、Merry Christmas♪