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死神といっしょ!  作者: 是音
92/116

第92話 『only1なら既にNO.1じゃねぇか』 (by佐久間冬音・高坂早苗)

「準、ビールだビール!」


「里原、私はカルーアを頼む」


・・・。


 酒なんか置いてねぇよ、この武闘派変人共が。

 つーかサブタイトルまで乗っ取んじゃねぇよ。


 この声は冬音さんと高坂先生のものだ。冬音さんはわかるが、何故高坂先生が居るのかというと・・・。


 なんとビックリ、先生がこのマンションに引っ越してきたのだ。


 なんでも保健教師の他にやっている副業が大成功したらしく、遊んで暮らせるような大金をGETしたのだという。

 公務員が副業を持ってはいけないというこの国のルールは、この人には通用しねぇ。本人が言うことには『私は超越だから』だとさ。理由になる以前に意味がわからん。


 で、引っ越しが決まった後にどこで調べたのかオレと死神、渡瀬、彩花さんがこのマンションに住んでいる事を知った先生は当然のようにオレ達を引っ越しの手伝いに呼び出したあげく・・・これが一番の謎なのだが、最強変人・佐久間冬音とナイトメアまで手伝いに引っ張り出したのだ。


 渡瀬は教会のアルバイトが入ってたから留守だったけど。


・・・あ、彩花さんも留守だったよ。でもオレは絶対に偶然じゃないと考えている。


 何故なら須藤宅の玄関先に縛られたバンプが『無料』と書かれた紙を貼られて転がっていたのだから。


 つまり高坂先生は何の苦労もなくオレと死神、冬音さんとメアちゃん、そしてバンプという五人のお手伝いを確保しやがったのだ。


・・・今回、高坂先生が負担した引っ越し費用は、《輸送トラックのチャーター代》だけ。


 高級マンションへの引っ越し代を節約するというスーパー矛盾だ。


 そしてその大仕事が一区切りした今、へとへとになった連中(冬音さんと高坂先生以外)が我が家の居間でくたばっていた。


 酒が出ないとわかった武闘派変人二人は、なにやらひそひそと話し始めている。が、オレは居間でへばっている連中に茶を出すので手いっぱいなのだ。


「ヒソヒソ・・・(ところで高坂先生よぉ、例の約束は本当だろうな?)」


「ヒソヒソ・・・(心配するな佐久間。始業式の日、保健室で寝てる時に撮っておいたのがある)」


「ヒソヒソ・・・(ナーイス!メアも欲しがってるから焼き増し頼むわ)」


「ヒソヒソ・・・(ふふふっ、何かに役立つと思ったけどこんな風に役立ったとはね)」


「ヒソ・・・(つーか教師としてどうなんだ?)」


「ヒソ・・・(死神の許可を得ている)」


「ヒソ・・・(抜け目ないなぁ。さすが白衣の悪魔ね)」


――――――――


―――――




 ま、バテていた死神達はすぐに回復したわけで・・・。


ドタバタドタバタ


「テメーロシュ!もういっぺん言ってみろー!」


「何度でも言ってやるわよ!この《シガレットポンポン》が!」


「それ怒っていいのかもわかんねーでしょうが!」


「貴様なぜ私が紅しょうがアレルギーだとわかった!?さては貴様八大地獄の餓鬼だな!おのれ餓鬼の分際で・・・」


「メアもロシュもやめなよ〜」


 駆け回る死神とナイトメア、そして二人の裾を掴んだまま引きずられるヴァンパイア。お馴染みの光景だ。


 しかしこの日、高坂先生の一言でお馴染みの光景が更に悪化する事になる。


 三人が暴れ回る様子を、コタツの中で笑いながら見ている冬音さんと高坂先生。

 二人が知り合ったのは文化祭でとんでもねぇ激戦を繰り広げたあの大会。

 ちなみにあの後の打ち上げでは《日本昔話》を鑑賞したのだが、あの場に居たほとんどの連中がまさかの大盛り上がりを見せた。

 先日のワイン解禁パーティーも実は冬音さんと彩花さんは高坂先生に連れていって貰ったらしい。なにかと交流があるのだ。


 そして彼女はあのラビット・ジョーカーに向かって廻し蹴りを放ったという逸話がある。

 ウサギ頭がいたく気に入ってしまったようで、保健室へ行くと度々

『あのウサギ頭は元気か!?なぁ、なぁ!』

 と死神の肩を掴んでシェイクしまくるのだが、決まって死神は目を回すのだった。


 そんな金髪保健教師はコタツに入って自前の酒を持ち出していた。(オイ)


「ほれ佐久間、飲め飲め!」


「おー、リザーブかい」


 オレはというと、死神業者三人が通った後の散らかった部屋を片付けながら歩いていたり。


 そしてついに、三人へ向かって高坂先生が陽気な調子である一言を言い放った。


「なぁ、お前等三人って結局誰が一番強いんだ?」


 何気ない一言だったのだが、死神業者三人はピタリと固まった。


「誰が」


「一番」


「強い?」


 顔を見合わせる死神、ナイトメア、ヴァンパイア。

 冬音さんも興味があるらしく、グラス片手にニヤニヤしている。


 ふむ。そういえば考えた事もなかったよね。つーか考えないで欲しいよね。


「そりゃこのグラマラス死神が一番だぜー!」


「私に決まってんでしょー!」


「僕が一番だー!」


 さぁ揉めはじめたぞ。

 高坂先生も冬音さんも酒を飲みながらニヤニヤしている。絶対彼女達の計画どおりの展開って感じだよね。


「だって私《死神業者最強決定戦》で優勝したもん!KING OF HELLなのよ!」


「それは準くんが居たからでしょー!」


「メアだって冬音さんが居たじゃないか!」


「バンプも彩花さんが一緒だったぜー!」


 あぁ・・・。

 三人からオーラが出始めている。


「ぬぬぬ」

「ぬぬぬ」

「ぬぬぬ」


 あぁ・・・。

 ヤバい・・・。


「こうなったら今ここで決着をつけてやるわぁぁぁぁぁぁ!」


「上等よーーーー!」


「望むところだぁぁぁぁぁ!」


 ここがオレの部屋だって事、忘れんじゃねぇぇぇぇぇ!!


――――――――


―――――


―――


(部屋内騒然の為、音声のみでお送り致します)


死神:【私こそNO.1!!】


メア:【ふざけんな!】


バンプ:【僕だー!】


死:【くらえ必殺、《おにぎり娘》!!】


メ:【《ブラックマター・ボール》!!】


バ:【《ブラッドニードル》!!】


(本当に始めやがった!)


ボカァン!バァン!ズドドドドド!


早苗:【わははははは!】


冬音:【いいぞやれーー!】


(おいコラ黒幕共)


(あぁ・・・。へ、部屋が・・・)


ボカァン!バァン!ズドドドドド!


死神:【なかなかやるわね二人共♪】


メア:【そのネーミングセンスどうにかなさいよ】


バンプ:【《おにぎり娘》ってなんか可愛いねロシュ!】


メア:【つっこむ気すら起きないわよ】


(同感だナイトメア)


死神:【くらえ《メアのバストは○○センチ》!!】


メア:【ぶっ殺すぞてめぇぇぇぇぇぇ!!(半泣き)】


バンプ:【ぶはっ!】


(ぶはっ!)


ドギャン!ヴォン!ギャリギャリギャリギャリ!ぱいーん♪ボカン!ベガァン!


早苗:【うむ。今後の発育に期待だな】


冬音:【だな】


ドギャン!ヴォン!ギャリギャリギャリギャリ!ぱいーん♪ボカン!ベガァン!


(部屋がさ・・・)


(ボロボロだよ・・・)


ベキベキッ!ボカァン!ちゅどーん!


(・・・片付けるの大変なんだぜ?)


ベキベキッ!ボカァン!ちゅどーん!


(お構いなしか・・・?お構いなしなのか・・・?)


ベキベキッ!ボカァン!ちゅどーん!


(そうかい)


(じゃあ・・・)


(・・・)


裏準:【テメェら全員《ピーーーーー(自粛)》にすんぞコラァァァァァァァァァ!!】


ドガァァァァァァァァン!!!!


死神:【ひっ!】

メア:【ひっ!】

バンプ:【ひっ!】

早苗:【ひっ!】

冬音:【ひっ!】


――――――――


―――――


―――




 さてと。


「バンプはオレと居間掃除だ」

「は、はい!」


 散らかった部屋をそれぞれ分担して片付ける。

 居間はオレとバンプ担当で、


「冬音さんと高坂先生はキッチンお願いします」


「へい」

「へい」


 酔っ払い気味な二人はそれでもいそいそとキッチンへ向かう。


「ヒソヒソ・・・(先生、準は怒るとおっかないのよ)」


「ヒソヒソ・・・(そ、そうみたいだな)」


 居間とキッチンもひどい有様だが、それは廊下にも及んでいた。

 ってなわけで、


「死神とメアちゃんは廊下掃除だ」


「えー、メアとー?」

「やですー!」


・・・。


『死神とメアちゃんは廊下掃除だ・・・』


「ひっ・・・!」

「裏・・・!」




――――――――


―――――


―――


 部屋を片付け終わる頃には外はもう真っ暗で、これまた騒々しい夕食の時間を皆で過ごし、その後二人の《武闘派変人》は《武闘派酔っ払い変人》に進化した為、オレは三人の死神業者を連れて外へ出ていた。


・・・本当に寒くなったよなぁ。


「ぬー、結局誰が一番かは決まらなかったね」

「ま、今回は私がおとなげなかった感じよね」

「仲良しが一番だよ〜」


 前を歩く三人はどうやらこの件を保留とすることにしたらしい。


 あれこれ喋る三人組の後ろを歩いていたら、気付けば高台の公園まで来てしまっていた。

 無論夜中なので人の姿はない。


 前の銀髪吸血鬼は、ぶるるっと身体を震わせた。


「ん、バンプ寒いのか?」


「僕のレザージャケット、防寒効果が薄いみたい」


「ほらよ」


 わりと厚着だったオレはコートを一枚バンプに貸した。寒がりな吸血鬼ってどうなの?


 死神は何かに気付いたらしく、突然


「わーっ!」


 と叫んだ。

 隣に居たナイトメアは訝しげな顔をする。


「何やってんのよロシュ?」


「だって声がよく響くんだよっ。わーっ!」


 確かに冷えた空気の中だと音はよく響く。


「ホント!わーっ!」


「わーっ!」


 それに気付いたナイトメアとコートを羽織ったヴァンパイアも声を響かせる。

 そんなに楽しいか?


「メアの《面白ニット帽》ー!」


「うるせー!」


 二人はまた追い掛けっこを始める。よく飽きねぇもんだ。


「ロシュの《ゲテモノ好き》ー!」


「うるせー!」


 やれやれ。部屋じゃないからほっといてもいいか。


「冬になるねぇ準くん。雪降らないかなぁ」


「ああ。そろそろだな」


 オレとバンプは空を見上げる。

 澄んだ空気だから星とかもよく見える。小さい頃は死んだ親父と、今の親父と三人でこんな風に冬の大三角形を探したっけなぁ。


「準くん、あの明るい三つは何?」


「おお、あれが冬の大三角形って言うんだぜ」


「へ〜」


 ははっ、これじゃあ親子みてぇだ。


 遠くではまだ死神とナイトメアが叫びながら駆け回っている。


「準くんは《虫フェチ》だぜー!」


「バンプは《即死キャラ》ですー!」


・・・。


 覚悟はできてんだろうな死神。


「即死キャラってなんだよメアーーー!!」


 オレとバンプは寒さも忘れて疾走を開始したのだった。

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