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死神といっしょ!  作者: 是音
91/116

第91話 死神と学校(理不尽?)

「でねでね死神ちゃん、気が付いたら三笠くんの頭に《寿》って書いてあったのーーー!」


「AHAHAHAHAHAHA!」


・・・。


 また今日も死神と美香は教室で三笠について盛り上がっている。


 ちなみに最近の三笠はなんと、スキンヘッドではないのだ!


 ちゃんと死神が・・・


 サインペンで髪の毛を描いているのだ・・・。


・・・。


 駄目じゃん。


「AHAHAHAHAHAHA!ひぃー、お腹痛い〜!ね、ねぇ美香ちゃん、それで三笠くんはその人に何て言われたの?」


「『Are you HAPPY?(幸せですか?)』」



「ギャーハハハハハハハ!!」


 とても痛々しく見られたんだな。


 その三笠はというと、


キュッキュキュキュ〜、キュッキュキューキュ、スパン!キュッキュキュキュ〜♪


 死神によって頭に何か書かれている真っ最中だったり・・・。


 爆笑しながらサインペンで何かを書いている死神と、たまに頭を叩く美香。


「ひぃー!お腹が吊りそうー!そ、それで三笠くんはどう答えたの?」


 散々笑われていたグラサンスキンヘッドは、うーん、とか言いながらその時の事を思い出している。


「そうですねぇ。とりあえず『BANZAI(万歳)』と・・・」


「ギャー!会話成立してねぇーー!AHAHAHAHAHAHA!」


 会話成立してねーー!


 ところでさっきから死神は何書いてんだろ?


「死神ちゃん、描けたー?」


「描けたよ《ちょんまげ》」


 コラ。


 スキンヘッドにちょんまげの絵を描いただけなので、ものすごくおかしなことになっている。


「三笠くんこっち向いてみて!」


「はい」


 三笠がこちらを振り向く。


・・・。


・・・。


 ぶはぁぁぁぁ!!


「ぶはぁぁぁぁ!!」

「ぶはぁぁぁぁ!!」


「死神ぃぃ!てめぇが笑いながら描くから変な線が何本も入って《落ち武者》みたいになってんじゃねぇかぁ!!」


「ぎゃぁぁぁぁ!こ、怖いぃぃぃ!」


「こんな三笠くんイヤァァァァ!!」


 渡瀬を隣のクラスから呼んで四人がかりで三笠の頭を拭きました。


 でも渡瀬は三笠を見た瞬間に爆笑して失神しかけたので全然役にたちませんでした。


 その時、オレは数多くの視線を感じたのだが、それが三笠のスキンヘッドに向けられていると思っていたオレは、まだその視線がオレに向けられているのだとは知るよしもなかった。


――――――――




 昼休み。


キュキュキュー♪キュッキュキュー♪


「ぬーん。ごめんなさーい。ミスしてごめんなさーい」


 いつものように屋上で昼食を終えると、死神は美香、三笠、渡瀬にマジックペンで顔を落書きされていた。

 コーディネーターが失敗したことによる罰ゲームらしい。


「ふふ〜、ネコヒゲ描いちゃえ!」


キュッキュキュー♪


「じゃあ僕は眉毛を太く・・・」


キュッキュキュー♪


「私はまぶたに目を・・・」


キュッキュキュー♪


 う、うわぁ。


 アホすぎてちょっと可愛いかもしれん。


 鏡を片手に死神は叫んだ。


「誰じゃこりゃぁぁぁ!」


 お前だよ。


「里原くんも何か描きなよー!」


 オレも描くの?


「あとはおでこが残っていますよ」


「はい、ペンですっ」


・・・。


 やれやれ。


「じゃあおでこに《肉》と・・・」


キュポッ♪


「やだぁぁぁぁぁ!!」


 オレがサインペンのキャップを外すのと同時に死神は悲鳴をあげながら逃げ出した。


・・・。


 はは。


「逃がすかぁぁ!!」


「やぁぁぁぁん!」


「ありゃー、里原くんったら中学の時の習性が出たみたいね」


「確か昔の通り名は《ティンダロスの猟犬》でしたっけ?」


「どひっ!なんですかその異名は!?」


――――――――


―――――


―――


「にゃぁぁ肉はイヤーー!」


 校舎内に逃げ込んだ死神を追い掛ける。

 こうなったら奴の額に肉と描くまで追い続けてやる。


 黒ローブはふわふわと廊下を走りぬけていく。


「くらえ準くん!《画鋲×100》!」


 あろうことか生徒が行き来する廊下に画鋲をばらまきやがった。


 地味に危ないよね。


 どこに隠してたんだろうね。


 画鋲地帯を飛び越え、そのまま校舎の外へ。


「ぬぬぬ」


 ついにアホ神を校舎裏へと追い詰めたオレは黒ローブを引っ掴んで額に落書きを開始した。


キュッキュッキュッキュッ、キュッキューキュ♪


「えーーん!キン肉○ンみたいじゃーん!」


「ははははは!似合う似合う!」


「ちくしょー!」


 手鏡を見て地面に崩れ落ちる死神と、その頭をポンポン叩いて笑うオレ。


 その時だった。


『見つけたぞ里原準』

『覚悟してもらおうか』


 後ろから声をかけられたオレは後ろを振り向いた。口調とセリフからして敵意を感じるよね。


 な、なんと立っていたのは男子生徒がズラリ約40人。

 何事だおい。


 死神はというと、


「良かったー。私見えなくて良かったー」


 額を押さえながらオレの背後に隠れていた。


『里原〜』

『このやろー』


 殺気すげぇなオイ。オレ何かしたっけ?


「何だ?」


『我らは人呼んで・・・』


『《渡瀬由良ファンクラブ》だ!』


・・・。


 う、うわぁぁぁ!実在してたのかぁぁぁ!


『ほぼ毎日渡瀬さんと一緒に帰っていく貴様を我々は許しておけん!』


『そうだそうだ!』×39


 いや、そりゃあ同じマンションに住んでいるわけだし、死神が渡瀬と帰りたがるから・・・。


『成敗!』×40


 聞く耳持つ気ないよねこいつら。


『しかし大丈夫なのか?』


『相手は里原準だぞ』


『手ぇ出しちゃいけない男だって先輩が昔言ってたぜ』


『い、1対40では勝ち目はあるまい』


・・・。


『ファンクラブの制裁を受けよ!』


・・・。


 このやろー、言いたい放題かよ。


「上等だてめぇら!全員まとめて・・・」


 ぶっ飛ばしてやる。そう言おうとした瞬間、オレは自分が戦いづらい体制になっていることに今更気付いた。


 死神が、制服の上着の中に頭を突っ込んだままガッチリホールドしていたのだ。


「あーん、こんな落書きされた顔、人前に出せないー」


 テメーどうせ見えねぇだろうが!


 オレは今すんげぇ変な格好になっている。背中が膨れ上がっているのだ。


『うおぉぉーー!』×40


 うわぁやべぇぇぇ!


 オレは黒ローブを引きずりながら全力でダッシュを開始した。

 まったく、敵前逃亡とは・・・。


 まぁ、最近よくあるからいいか。


『逃げたぞ!』


 しっかし《渡瀬由良ファンクラブ》が本当にあるとは思わなかったなぁ。


――――――――


―――――


―――




 《渡瀬由良ファンクラブ》。オレがその名を知ったのはいつだったか。


 ああ、サボって校舎裏に居たとき仲間から聞いたんだ。

 よくよく考えてみると渡瀬は常に美香によって守られているわけで、渡瀬を狙う不貞な輩みたいなのは美香を突破しなければならない。それは不可能と言って良いだろう。

 なら何故ファンクラブが存在するんだ?


・・・。


 七崎美香公認だからという可能性がとても大きいね。


 でも渡瀬自身はこの存在を知らないんだよね。


「いい加減離れろ死神!」


 そう。オレは今40人のファンクラブメンバーに追われている真っ最中であり、アホな落書きを顔に描かれ、恥ずかしくて制服の上着に頭を突っ込んだ死神を引きずって走っている。


「なんか悪くないわねコレ。あったかいから眠っちゃいそう」


 寝るのは構わんが、放せ。




「すぴー」


 うわぁマジで寝やがったー!全然離れねー!

 どーしよ。どーしよ。


 後ろを振り替えればやはり集団が追い掛けてきている。追い付かれるのは時間の問題だね。


「あら!里原くーん!」


 呼ばれたので振り向くと、先程屋上で別れた美香がこちらに手を振っていた。


「み、美香!助かった」


「死神ちゃんたら、すごい体勢で寝てるのね」


「ちょっと匿ってくれ!」


 そう頼むと、美香は近くにあった掃除道具を入れるロッカーをパカリと開けた。


・・・。


 入れってか。


「早く早く!あの騒いで走り回る集団に追われてるんでしょ!?」


 美香はぐいぐいとオレを押し込む。


「痛てっ、痛ででででで!おい美香、何で死神まで詰め込むんだ!」


バタン♪


 無理矢理ロッカーの中に詰め込まれたオレと、こんな状況で爆睡するアホ神は、とりあえずこの中で連中をやり過ごす事にした。


 く、苦しい。


ドドドドドドド!


『どこだ里原ー!』

『あっ!七崎さん!』

『里原を見かけませんでしたか!?』


「この中♪」


 あいつ絶対ぶっ殺ーーーーーす!!!!


『出てこい里原!』


 あぁぁ・・・。


『居たぞーー!』


 あぁぁ・・・。


『引きずりだせーー!』


 あぁぁ・・・。


 オレ、何もしてない・・・。


『せいばぁぁぁぁい』×40


 ギ、ギャァァァァァァァ理不尽!!


ボカスカボカスカボカスカボカスカ!

ボカスカボカスカボカスカボカスカ!


「みぎゃぁぁぁぁ!何?何?」


――――――――


―――――


―――


しゅぅぅぅぅぅ・・・。


 あ、これオレの頭から出る煙の音です。

 美香の瞬速の裏切りによって《渡瀬由良ファンクラブ》の制裁を意味なく受けたオレは、これもまたとばっちりを受けた死神と共に頭から煙を出しながらぶっ倒れていた。


「マジ・・・なんなんだ?今日は」


「わ、私関係ナイヨ」


 そしていとも簡単にオレ達を裏切ったクレイジー女がスキップでやって来ると、オレと死神の手にそれぞれカードを手渡した。


・・・。


【渡瀬由良ファンクラブ・会員NO.41《里原準》】


【渡瀬由良ファンクラブ・会員NO.42《死神ちゃん》】


・・・。


「なんじゃこりゃぁぁぁ!」

「なんにゃこりゃぁぁぁ!」


 か、会員入り・・・。しかも死神まで・・・。


「あ、会員費は全部《七崎美香》までよろしくね♪さて、次は三笠くんよ〜」


 スキップでその場から去っていくクレイジー女子高生。

 だが、《ティンダロスの猟犬》の異名を持つオレと・・・。


「み、美香ちゃぁぁぁぁぁん・・・」


 殺気丸出しの死神に狙われた奴が・・・。


「逃げられると思うなぁぁぁ!」

「逃げられると思うにゃぁぁ!」


「キャーーー!速い速い!助けてーーーーー!」


 あくどい金儲けはしちゃいけねぇよな。


――――――――


「わはははは!そりゃ災難だったな里原!」


 気絶して頭から煙を吹く美香は保健室のベッドで寝ている。

 で、オレは死神の顔をタオルで拭きながら保健室の主である高坂先生に事の顛末を話して笑われていた。


「ぬーっ!笑い事じゃないよ早苗ちゃん!」


 死神がプンプン怒っているが、タオルで顔を拭いているので表情が見えない。

 拭き終わったタオルを高坂先生が片付けに行くと、死神がオレの服を引っ張った。


「じゅ、準くん・・・あれ」


 死神が指差しているのは先生のデスクだ。写真やらカレンダーやらが立て掛けられている中に、それはあった。


・・・。


【渡瀬由良ファンクラブ・会員NO.0。《高坂早苗》】


・・・。


 か。


 会員ナンバー・・・。


「幻の・・・」

「0番だよ・・・」


 また一つ高坂先生の謎が増えた。

 そして実は渡瀬が学校最強なのかもしれないという説も生まれた瞬間だった。

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