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死神といっしょ!  作者: 是音
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第87話 まさかの必殺技

 どうやらパレードが始まったみたいだな。


 カキぴーの放送はこちらにも聞こえていたので、地獄街の一階から六階までが騒ついている。

 皆口々にカキぴーの放送で出てきた《ジャック・O・ランタン》の名を話題にして話していた。


 思い出した。ジャック・O・ランタン。


 カボチャをくりぬいた顔の中に穏やかな光を含み、旅人を迷わせずに道案内をする事もある鬼火のような存在。名前は《提灯持ちの男》という意味であり、カボチャで作った蝋燭立てもまたそう呼ばれる。


 そいつが死神達が言っていた幻の人物で、夜叉さんの言っていた至上最高の引率係だという。すごい人気だ。


「ほぇ〜、エリート餓鬼さん達は危険な任務が多いんですか」


『ええ。もともと上級任務対策の為に居ますからね』


『だから今回のような任務は息抜きになって有り難いのですよ』


『着ぐるみを着せられて人間界の夏祭りへ呼ばれた事もありましたな』


『はははっ!その時の我らが総大将は依頼主にひどく怯えていましたね』


「あーっ!私それ知ってますよー!」


 渡瀬とエリート餓鬼五人が談笑している。

 雑貨屋カオスディメンジョンの前にテーブルを設置し、ゲルさんの店を手伝いながらオレ達はテーブルを囲んで座り、お茶をしながら話していた。

 周囲は音楽の効果もあって賑やかなムードで、なんつーか、祭りに参加してるなぁって気分だ。


「エリート餓鬼も大変だろ。あの大将さんじゃあ」


 オレの言葉に五人は肩を震わせて笑う。


『ははっ、確かに』


『閻魔様とドミニオン様を追い掛けるのはいつもの事ですよ』


『ただ、あの性格のおかげで皆は楽しく過ごせているのかもしれませんね』


『白狐様はいつも怒ってみえますけど』


 五人は再び笑う。


 へぇ、エリート餓鬼も色々考えるんだねぇ。別に機械的に仕事をこなしているわけじゃないんだな。


 久しぶりに楽な仕事が回ってきたのだろう、黒スーツと白い手袋、白い包帯に包まれた五人はリラックスしてそれぞれ任務の結果報告をしあったりしている。


『そういえば貴方は長期遠征に出ていたと聞きましたよ』


『ええ。例の脱走事件を魔導社の私設部隊メンバーと合流して追っていましたから』


『そうでしたか』


『とすると、魔獣の件は知らないのですね?』


『はて、知りませんな』


『魔列車で護送中の・・・』


 聞いていると、この人達は短期間で凄い数の任務をこなしているのがわかる。


「大変なんですねぇ」


 渡瀬が五人のカップにお茶を注ぎながら、うんうんと頷いていた。


『あ、有難うございます渡瀬様!』


『自分達で注ぎますからどうぞお座りください!』


 あたふたする五人へ渡瀬は満面の笑みを向ける。


「たまにはいいじゃないですか。今日くらいはゆっくりして下さい♪」


『・・・あ』


『・・・あ』


『・・・あ』


『・・・あ』


『・・・い、いい人です』


 五人目がおもわず呟いた。

 が、次の瞬間五人は凄まじい速さで頭をぶんぶん振る。


『い、いけません!』


『いけません!』


『我々は《エリート餓鬼》!』


『不粋な考えは捨てなければ!』


『その通り!』


 ははっ。渡瀬、ファンが増えたな。

 なんだかんだ言いつつ、エリートな餓鬼達は渡瀬の押しに負けて何杯も紅茶のお代わりを頼んでいた。渡瀬由良ファンクラブもついに地獄まで規模拡大か?


 ちなみにオレはというと、ゲルさんと二人で会話をしていたりする。いや、ゲルさんはジェスチャーなので会話とは言わないかもしれん。


 しかもなんとなく言いたい事がわかってしまう。

 ゲルさんジェスチャー上手すぎ。


『・・・(ロシュは礼儀が正しくて良い子だよ)』


「そうなんですか?アイツが?」


『・・・(うん。値切りも上手だし。イタズラ道具は大抵ここで買ってくれるよ)』


「ははっ、死神の影の協力者ですねゲルさんは」


『・・・!(あははっ、ロシュのイタズラパターンは誰よりも知っているかもしれないねっ)』


 アップテンポで奇妙な音楽が流れる中、のほほんとした時間を過ごしていたオレ達だったが、そんな中、突然エリート餓鬼の無線に連絡が入ってきた。


『はい、こちら《里原様・渡瀬様担当班》』


 わざわざそんな班を作って頂いて有難うございます。


〈ザザッ・・・こちら《地獄旅館治安課》!〉


 治安課から連絡とは穏やかじゃねぇな。


『どうしましたか?』


 五人が一つの無線機に集まる。渡瀬とオレも聞き耳を立てるが、ゲルさんだけはカラカラとマイペースでカップの砂糖を掻き混ぜていた。


〈ザザッ・・・ハロウィンパーティーの最中に失礼します。警備担当の餓鬼より、何やら不穏な動きを見せている者達が確認されたとの報告あり〉


『不穏な動きを見せている者達・・・ですか?』


〈ザザッ・・・はい。それとほぼ同時刻に社員区画、居住区画でハロウィン用に用意した《お菓子》の盗難が多発しております〉


『関連性がありますね』


 エリート餓鬼五人は顎に手を当てて話を聞いている。


〈ザザッ・・・目撃現場と情報を重ね合わせてみても間違いはないかと思われます〉


『了解。こちらの任務は時間ができましたのでそちらの任務に一時参加します』


〈ザザッ・・・宜しくお願いします〉


 通信が切れた。

 ハロウィン用のお菓子を狙った泥棒かぁ。

 エリート餓鬼達は席を立ち、無線端末に送られた情報を見て既に対策を練り始めている。さすが。


『里原様、申し訳ございません。パレードがこちらに来るまでには戻って参ります』


・・・んー。


「敵は強いみたいだな」


 既に対応に向かった警備担当の餓鬼やエリート餓鬼が撃破されたという情報をオレはチラリと見ていた。


『そのようです』


「ならオレも行くよ。パレードが来るまでは時間があるし」


『し、しかし』


「早く終わらせた方が良いだろ?」


『・・・』


 少しの間五人は思考し、効率、確実性がどうとか話し合いながら納得した様子で頭を下げた。


『では、お願いします』


「あいよ」


 オレはゲルさんに少し抜けるという旨を伝え、エリート餓鬼五人と走りだした。


・・・。


「ぅわっ!何で渡瀬も付いてきてんだ!?」


 隣では笑顔の渡瀬が走っていた。さすがテニス部、速ぇ。


「だって楽しそうじゃないですか!地獄旅館を見て回れる良い機会ですし」


『仕方ありませんね』


『渡瀬様は我々もお守り致します』


 ここで渡瀬が声優モードに突入した。


【頼むぞ皆の衆!進めー!】


 武将モードだ!


『はっ!』

『了解!』


 エリート共はまんざらでもない様子。


 冬音さんの多重人格と良い勝負だ。


――――――――


―――――


―――


 騒げ騒げよ盛大に〜!


「あぁ、今日はなんて素敵な日なのかしら」


「メア、目が遠くを見つめちゃってるぞ」


 ジャックを先頭に私たちはパレードの真っ最中。メアやバンプはもう袋の中にたくさんのお菓子を貰って満足そう。


 ふふっ、でもまだまだ袋には空きがあるのよ!


 フワフワと先頭で浮かぶカボチャ頭のアイドルがこちらを振り向く。


『さぁみんな!次は第二宿泊区だよ!』


 宿泊部屋からはたくさんの魂や仲居さん達が身を乗り出してお菓子を配ってくれている。


『ふふっ、さぁ合い言葉はーー!?』


『トリック・オア・トリート!!』×無数


 さぁ、貰うぜ〜!袋いっぱいにするんだからっ。


「早く行くわよロシュ、バンプ!」


「元気いっぱいだなぁメアは」


「メア太れ♪メア太れ♪」


「やかましい!」


 私達も宿泊部屋の一つに向かう。

 人によってお菓子が違うから、何種類も食べられるの!サイコー!


「はいどうぞ♪」


「ありがとー!」


 仲居さんからお菓子を受け取る。これでまた一つ楽しみが増えたぜっ。


『いいねぇいいねぇ、みんなの笑顔が僕は大好きさ♪』


 ジャックはひゅんひゅんと人混みの中を飛び回りながら皆と喋っている。


「あっ!」

「こっちに来るよ!」


 うわぁ!ついにジャック・O・ランタンが私達の所へ来た!


『こんにちは、楽しんでるかい?』


 うーん、近くで見てもカボチャ頭の中がよく見えないなぁ。あったかい光が漏れてて、見てるとほわぁ〜、ってなるよー。


「握手してほしいですー!」


「ぼ、僕もー!」


『ふふっ、はいはい』


 や、優しすぎよこの人ー!

 私も握手してもらおっと。


「私もー!」


『はいは〜い♪・・・む?』


 あれ?私と握手していたジャックは突然上を向いて首を傾げた。

 私じゃなくて、何か別な事に反応してるかんじ。


『・・・何やら不穏な動きがあるみたいだけど。ふむ、どうやら心配はいらないかな?』


 何かブツブツと呟いていたジャックは、再び私の方を見た。


『あぁ!ごめんごめん!えっと、君は死神だね?』


「うん!」


『これも貴重な巡り合わせ。君には僕からもお菓子をあげよう』


 ジャックは私の手の上にポンと小袋を乗せると、ひゅんひゅんと人混みの中へ行っちゃった。


・・・。


 ジャ、ジャックにお菓子を貰っちゃったよー!


「あー!いいなー!」


「ロシュだけずるいぞー!」


「ちゃんとメアとバンプにも分けてあげるわよっ」


 よっしゃ!早く地獄食堂で《獏》さんのお菓子も貰わなくちゃ!獏さんは人気が高いからねっ。


『よーし、それじゃあパレード再開だぁ!』


――――――――


―――――


―――


 たった今送られてきた情報だと、謎の集団は大広場という場所で動きを止めたらしく、オレ達はそこへ向かっている。


 のだが・・・。


「なんだこの格好」


「似合いますよ里原くん♪」


 オレは狼の仮装をさせられ、渡瀬は猫の仮装をさせられていた。鼻と耳と尻尾を付けただけだが。


『一応ハロウィンパーティーですからね』


 エリート餓鬼がちゃっかり用意していたところからして、最初から着させるつもりだったらしい。


 む、そろそろ到着か。


 大広場はなんだか神秘的な場所だ。

 透明な地面が広がり、その下を水が流れている。水面を歩いている感覚だ。

 大広場も今日はハロウィンなのでお菓子を持ち寄った大勢の人で賑わっていた筈なのだが、今は皆非難させられ、だだっ広い広場には少数の人しかいない。


 オレ達の反対側からやって来ていたのは夜叉さん、白狐さん、美香と三笠だ。


 そしてオレ達と夜叉さん達に挟まれる形で広場の中心に追い詰められた三つの人影。


 なんとなく予想はしてたよ。


 騒ぎを起こしていたのは閻魔さん、カブキさん、シャドーの三人だった。


『フハハハハ!いやぁ追い詰められちまったな』


『閻魔が言い出しっぺなんだからなんとかしろよ!』


『まったく、《お菓子横取り作戦》だなんて。こんなこと言い出すのはバイキ○マンか閻魔様くらいです〜』


 地獄の大将がしょーもないイタズラしてんじゃねぇよ。


「里原くん、あの人達は?」


「聞いて驚け渡瀬。地獄と魔導社のお偉いさん達だ」


「えーー!」


 向こう側では白狐さんの頭から怒りの煙が出始めている。


「閻魔!今すぐお菓子を返しなさい!」


『死んでも返すかぁ!』


「じゃあいっぺん死にやがれぇ!」


 白狐さんと夜叉さんが三人へ飛び掛かる。

 美香と三笠はお菓子を食べながら観戦するつもりらしい。


『里原様、我々も加勢を!』


「お、おう」


 オレとエリート餓鬼も三人へ向かって走った。


『おぉう!?里原じゃねぇか!』


 魔剣を肩に乗せた閻魔さんがこちらを振り向く。


『よしカブキ、シャドー!そっちは任せる!』


 どうやら閻魔さんはこちらに狙いを定めたらしい。


「つーか閻魔さん、なにやってんですか!」


『いやぁ、だって俺様もお菓子欲しいじゃねぇか』


・・・。


・・・。


「大人気ねぇ事言ってんじゃねぇぇぇぇ!!」


――――――――

――――――――


「あら?見て見て三笠くん、里原くんの様子が変よ?」


「おや、あれは噂の《裏里原くん》というやつですね」


 僕はノートパソコンで彼のデータを閲覧しながら言う。ノートパソコンがどこから出てきたのかは触れてはいけませんよ。


 僕と美香さんは、里原くん達の戦いが見やすいように渡瀬さんの隣に移動する。


「あっ、美香さんに三笠さん!」


「ヤッホー由良ちゃん」


「あの、里原くんが急に鬼のようになってしまったんですけど」


 きっと閻魔さんのあまりの幼さに呆れギレしてしまったのでしょうね。


『おわっ!里原が急に強くなったぞ!』


〈んぁ、どうした閻魔〉


 さすがに魔剣も目を覚ましたようですね。


『お菓子ならオレが好きなだけ作ってやるよコラァァァァァ!!』


 里原くんはよくわからないキレ方をしている。


『フハハハハ!約束だぞ里原ぁぁぁぁ!』


 さて、エリート餓鬼五人は夜叉さんと白狐さんの援護に向かわせた方がよさげですね。


「エリート餓鬼さん達は・・・」

【エリート餓鬼は二人の援護に向かえぇ!】


 わ、渡瀬さんが武将モードだ!


『はっ!』

『了解!』


 どうやら渡瀬さんはどういうわけか五人のエリート餓鬼を従えてしまったらしいですな。


「いけー里原くん!」


 美香さんはお菓子片手に観戦モード。


 裏里原くんといえど、閻魔さんとやり合うのは無謀と思われたのですが、そうでもないみたいです。


『しゃぁぁらぁぁぁぁ!!』


ドドドドドドドドドドドド!!


『フ、ハハッ!まさかの間合いだなこりゃあ』


 そう。裏里原くんの真骨頂はこの《超ショートレンジ攻撃》。

 肘と膝による連続打撃。相手に密着した間合いでの攻撃ですな。


「わぉ。閻魔さんが手も足も出せてないわよっ」


「ええ。魔剣ドミニオンという大剣を扱う閻魔さんにとって、裏里原くんはとても戦いづらい相手です」


「なんで三笠くんのパソコン、そんな情報が入ってるの?」


「・・・秘密です」


 佐久間さんから《準対策を研究してくれ》と頼まれてデータを譲り受けたなんて言えません。


 気付けば渡瀬さんは武将モードのままエリート餓鬼五人に指示を出している。

 さすがのカブキさんとシャドーさんでも時間の問題ですかね。


〈閻魔、早く距離をとれよ!〉


『んなこたぁわかってる!』


 ここはさすがに閻魔さん。力ずくで裏里原くんを弾き飛ばす。


『フハハハハ!里原を倒して、里原のお菓子を食べ放題だぜ!』


 だんだんこの人がお茶目に思えてきました。


『いくぜドミニオン!最終審判・・・《ドゥームズデイ》!!』


 閻魔さんは必殺技を出すべく魔剣に魔力を溜め始める。

 しかし裏里原くんを前に隙を作ったのは失敗ですよ。


『甘いぞ閻魔さん!隙ありだコラァァァァァ!』


 高速で閻魔さんへ向けて駆け出す裏里原くん。


 さぁ、初公開。彼の必殺技です。


『や、やべぇ!吸収中止だドミニオン!』


 その殺気に気付いた閻魔さんも慌てて対応しようとするものの、裏里原くんの方が少し速い。


『くらえぇぇぇぇ! 《ドライブ・ディバイダー》!!!』


バガァァァァァァン!!


 速さと重さが加わった鋭い飛びヒザ蹴り。

 こんなものをくらったら本当に《ディバイド(分断)》されてしまいますよ。


「ふむふむ。佐久間さんが里原くんに勝てないのはコレが理由なのかしらねぇ?」


 お菓子を食べながらパソコンを覗く美香さんはのんきにそんなことを言う。


 閻魔さんはその驚異の飛びヒザ蹴りを間一髪、持っていた魔剣で弾きましたが、衝撃で吹き飛ばされてしまいました。


 攻撃を外した裏里原くんも弾かれた勢いで床を滑ったのですが・・・。


 床には《ドライブ・ディバイダー》の衝撃による大きな亀裂が入っていたり。


・・・。


 ほ、本当に何者ですか里原くん。


『フハハハハ!ダメージ大!』

〈閻魔テメー!オレを盾にしやがったなぁ!また魔導社の修理行きじゃねぇか!〉


 ダメージ大とか言いつつピンピンしている閻魔さんは凄すぎです。


「いやぁ、いいもん見られたわねぇ」


 おや、そろそろ里原くんが裏モードから我に返りそうですな。


 では、グラサンスキンヘッドこと、僕[三笠 万座右衛門]視点でお届けいたしました。


「次は私視点ねっ!」


「美香さんは意味不明だからダメですよ」


スパァン!


―――――――

―――――――




 あぁ、全身が痛ぇ。


 頭を振りながら立ち上がると、目の前にはボロボロになったカブキさん、シャドー、そして閻魔さんが座らされていた。


『アッハハハハ!参った参った』


 楽天的に笑うカブキさん。


『真に恐ろしきはエリート餓鬼に絶妙な指揮を出していた方ですな〜』


 シャドーは腕を組んで一人で頷いている。


〈この馬鹿閻魔!もっと魔剣を大切に扱え!〉


『仕方ねぇだろ!』


 閻魔さんと魔剣はケンカを始めてしまっている。


「まったく、人騒がせなんだから!」


「しかしこれで一件落着ですな」


 呆れた様子で三人を見下ろす白狐さんと夜叉さん。

 エリート餓鬼の援護のおかげでわりと無傷な状態だ。


「おーい里原くーん!」


「いやぁ里原くん、お見事でしたよ」


 美香と三笠が手を振っている。

 渡瀬と五人のエリート餓鬼も一緒だ。


「あっ!里原くん、早く戻らないとパレードが来てしまいますよ」


『急いで戻りましょう里原様、渡瀬様』


 すっかり仲が良くなってしまった渡瀬とエリート餓鬼達は大広場を出ていく。


「七崎殿、三笠殿、我々も戻りましょう」


「はいはーい!」

「いやぁ、楽しいものが見られましたなぁ」


 夜叉さん達もお菓子を配る為に持ち場へ戻っていく。


「あなた達三人は、大広場の修理をする事!」


『はぁい』

『はぁい』

『はぁい』


 ま、自業自得だな。

 大広場の地面は穴だらけになっていて、水が溢れだしている。


・・・。


 せっせとその修理を始めようとする閻魔さんに、オレは聞いてみた。


「閻魔さん、本当にお菓子が欲しいなんて理由でこんな騒ぎ起こしたんですか?」


『フハハハハ、さすが里原!鋭いなぁ。そう、目的は別にあったのさ』


 さすがに閻魔さんでも無理がある動機だったからな。


「別の目的?」


『《ジャック・O・ランタン》さ!』


 と、板を運びながらカブキさんが口を挟む。


『そう。ハロウィンの主役である彼には謎が多いだろ。それが魅力でもあるんだがなぁ』


 困った顔で閻魔さんは腕を組む。


『我が魔導社でもデータが掴めない程に謎な人は滅多にいないです』


 と、カンカンと金槌で床を補修しながらシャドーが言った。


『うむ。俺様の場合、楽しいイベントは大歓迎だし、人気がある人物ってのもおおいに結構なのだが、あまりに謎すぎるのも考えものでな』


 なるほど。地獄の大将、支部長として、正体不明の人物にイベントを任せるのは不安だったわけか。


「なら直接本人に聞けば良いじゃないですか」


『ん・・・ま、まぁそうなんだが』


 閻魔さんはなぜか少しバツの悪そうな顔をした。その理由をカブキさんとシャドーが説明する。


『アッハハハハ!俺達も昔はハロウィンで世話になった人だからさ!』


『面と向かって《アンタ何者?》なんて失礼な事は言えないわけです』


 なるほどー、だから強行手段に出たわけね。


・・・。


 ジャックについては本当に謎が深まる一方だなオイ。


『まぁ、今年は失敗だったな!フハハハハ!』


『里原も早く持ち場に戻らねぇと・・・』


『パレードが来てしまいますよ〜』


 おっと、そうだった。

 オレは慌てて大広場を出ていったのだった。


〈なぁ閻魔、お菓子欲しいってのも本音だろ?〉


『やかましい!』



というわけでまさかの初登場を果たしました裏準くんの必殺技の一つ。笑 ハロウィンは次回に続きます♪

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