第77話 文化祭フィナーレ開始♪
文化祭一日目の死神ラジオは大成功と言って良かった。
お便りもPCにどんどん寄せられてくるし、雑談は大人気だし。
BBSの反響も凄かった。
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〈いいねーラジオ!〉
〈死神とかいう子カワイイー!〉
〈死神ってあだ名だろ?〉
〈どこのクラス!?〉
〈七崎さん良い!〉
〈死神ー!〉
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こんな感じで、掲示板は謎のDJ死神の話題で持ちきりだった。大人気だな。
・・・。
・・・。
ん?
・・・。
んー?
なんだこの感じ?
まぁいいや。
ともかく今日は文化祭二日目です。
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―――(放送中)
美:【・・・というわけで、二日に渡りお届けしてきました《死神ラジオ》は、正午をもって終了しまーす!】
死:【えーーー!】
美:【楽しかったね、死神ちゃん】
死:【喋り足りないけど楽しかったぜー!】
美:【皆様、たくさんのお便り、有難うございました♪】
死:【ありがとーございましたぁ!】
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《死神ラジオ》は大盛況・大反響のまま、お昼をもって幕を閉じたのだった。
昼からは実行委員会が担当する決まりがあるから仕方ない。
「楽しかったぜー!」
「楽しかったねー!」
ブースから出てきた二人を三笠とオレは飲み物や食物を用意して迎えた。
「お疲れ二人共」
「始終大好評でしたよ」
死神と美香はパソコンの掲示板に書かれたコメントを見ながら大はしゃぎしていた。
正直な話、こいつらがラジオでやらかしすぎて途中打ち切りにならないかと心配していたのだが、無論そんなことはなく二人は楽しみながらもよく頑張っていた。
二日目のラジオは雑談に入りきれない程の便りがパソコンに寄せられていて、全て読み切れなかったのが心残りだと美香が言っていた。
絶対無理だ。
大きく伸びをした死神がオレを引っ張る。
「それじゃあ文化祭を見て回ろうぜ準くん!」
あぁ、なんだかんだで放送室に籠もりっきりだったからな。
「三笠くん、私達もあそこ行きましょうよ!」
「どこでしたっけ?」
「美術部がやってる《似顔絵屋》さんよ!」
「あぁ、そうでしたね」
「三笠くんの頭に似顔絵描いて貰って《うわぁ、顔が二つある》みたいな感じにするんだから♪」
意味がわからん。
「そのまま悪魔教会へ乗り込むんでしたね」
何考えてんだ!
美香は三笠を引っ張りながら放送室を飛び出し、ダッシュでどこかへ行ってしまった。
死神はじーっと文化祭パンフに目を落としている。
「由良ちゃんに会いにいこう!」
《ヤクザ喫茶》か。
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―――――
・・・。
『お帰りなさいやし、若頭!』
『おつとめご苦労さまです!』
喫茶店と化した渡瀬の教室に入ると、出迎えたのは赤と黒のスーツを着て髪をオールバックにしたグラサン男達だった。
ドスの効いた声で客を迎え入れ、
『ささ、お席の方へ! あっ、上着はこちらへどうぞ!』
凄まじい低姿勢で席まで案内するギャップがいい。
死神とオレは案内された席に座り、渡瀬の姿を探す。
このヤクザ喫茶、割と評判が良く、なかなかの人気を獲得している。
おそるおそる入ってきた子供連れの母子に対しても、
『お帰りなさいやし、若!姐さん!』
とまあ舎弟に命を懸けているかのような低姿勢ぶりを見せているのが人気の理由かもしれん。
「あっ準くん!由良ちゃん居たよ」
「どこだ?」
死神が指差す方へ顔を向けると、教室の奥には何故か畳が敷かれており、その上には長い板。その板を挟んで両側に人が並んで座っている。
アレは確か・・・。
そして渡瀬は向こう側の真ん中に座っていた。黒い着物に身を包み、中にはサラシを巻いている。
あ、姐御だ・・・。
その手にはサイコロとカップを持っている。
『よござんすね?』
・・・。
渡瀬がカップにサイコロを投げ入れ、板の上に伏せた。
その瞬間、反対側の連中は持っていた小さい長方形の板をパンパンと縦向きや横向きに置いていく。
『丁!』
『丁!』
『半!』
『んー、丁!』
『半だ!』
・・・。
・・・。
うぉーい!博打じゃねぇか!!
渡瀬が伏せていたカップを上げると、サイコロの目は〈3〉。
『目は《半》です』
渡瀬が静かに言うと、渡瀬の両隣に居た男達が《丁》と予想した者の板を回収し、《半》と予想した者の板の数を倍にした。
な、何やってんだよ・・・。
『オイ、イカサマじゃねぇのか!?』
一人の男が文句を言い始めたが、すぐに場外へ連れ出されてしまった。
『あっ』
ここでやっと渡瀬がオレと死神に気付いたらしく、その場を他の人に任せてあたふたとこちらへやって来た。
「ヤッホー由良ちゃん!」
「やってるな渡瀬」
「あ、来てくれたんですね二人共!」
さっきまで見せていた威厳は無い。姐御モードだったのだろう。
「文化祭で博打なんて、よく許可が降りたな」
「いえ、あれは客も賭博師もウチのクラスの生徒なんですよ。見せ物の劇みたいな感じです」
なるほどね。
あ、ほんとだ。さっき場外に出された奴が帰ってきた。
「由良ちゃん格好いいー!」
死神が渡瀬の着物姿を見て感嘆の声をあげる。
「死神ちゃん達も、ラジオ良かったですよー。皆で楽しみながら聞きました」
「ほんとー!?」
「えぇ。特に《相手がかけてきた間違い電話を利用して知人を装い、逆オレオレ詐欺を仕掛ける!》って話題が面白かったです」
・・・。
「でしょー!《はいもしもし?》《あ、○○さん?》《・・・はい》で成立しちゃうもんねー! アハハハハハ!」
んなわけねぇだろ。
それからしばらく死神と渡瀬は話し込んでいたのだが、渡瀬が仕事に戻るという事でオレ達もコーヒー代を払ってヤクザ喫茶を後にしたのだった。
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―――――
さて、渡瀬んトコの店で昼飯を食べ終えたオレ達は再びぶらぶらと廊下を歩いていた。
「あーん、またラジオやりたいよー」
「はははっ、楽しそうだったもんなぁ。今度地獄でカキぴーにやらせてもらったらどうだ?」
「おっ、いいアイデアだね兄ちゃん! うーん、でもこのウキウキ感が良いんだよね〜」
「違いねぇな」
二人で笑いながら歩いていると、実行委員会からの放送がかかった。
ピンポンパンポーン
『お知らせします。ただ今格闘大会《ぶっ飛ばせ!クレイジーナックル》一般の部の代表が決定致しました。学校代表の方は決勝戦を執り行いますので第二体育館へ集合してくださーい♪』
おぉ。どうやらいつの間にか一般の部は終了していたらしい。
学校の部の代表は文化祭前にすでに決定しており、つまりフィナーレを飾るのは一般代表、学校代表の二人による決勝戦なのだ。
周りを見回すと、文化祭のトリを一目見ようと人々がぞろぞろと体育館へ移動しはじめた。
「私達も見に行こうぜぇ〜!」
一般の部。
まぁ代表者はきっと・・・。
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―――――
―――
既に会場は大歓声に包まれ、ライトアップされた特設リングの周囲に多くの人がひしめき合っている。
す、すげぇ。
実況席には男子生徒が座っており、ヘッドホンマイクを付けて準備万端だ。
【YEAH!とうとうやって来ました文化祭のフィナーレを飾るイベント!《ぶっ飛ばせ!クレイジーナックル》!!実況は3年2組[鍵崎]こと〈KAGI・P〉が担当するぜぇ!よろしくチョコホイッープ!イィーハァー!!】
うわぁテンション高ぇ。しかも名前が・・・。
オレと死神も人混みを書き分けてリングへ近付くと、美香と三笠と渡瀬が居た。
「いえー!《かきピー》!!」
「ナイス実況です《かきピー》さん!」
「か、《かきピー》っ」
お前等、名前が違うぞ・・・。
死神もノリノリではしゃぐのを笑いながら見ていると、後ろから呼ぶ声がした。
『あら、里原くんじゃないの♪』
『こんにちわ準くん!』
『こんにちわですー!』
彩花さんがヴァンパイアとナイトメアを連れてやって来た。
「フフフ、みんな盛り上がっているみたいね♪」
「はい。えと・・・彩花さん、やっぱり一般の部代表ってのは・・・」
「フフ♪」
ここでオレ達の声が掻き消される程に大音量のBGMが鳴りだした。
いよいよだな。
【さぁさぁ、まずは青コーナーより一般の部代表の入場だぁぁぁぁぁ!!】
体育館が揺れる。
【圧倒的なパワーと破壊力で他の力自慢をなぎ払い、大会初の女性一般代表・・・! 天下無双! 一騎当千! 《佐久間ぁぁぁぁぁぁ!冬音》選手の入場です!!】
やっぱりかぁぁぁぁ!
「冬音姉さん格好いいーー!!」
「キャー!佐久間さぁぁぁぁん!」
死神と美香は大絶叫。
バンプとメアちゃんも、そして今回ばかりは知人の出場ということで三笠も渡瀬も、彩花さんも大興奮だ。
そしてリングインした冬音さん、もとい《悪冬音》さんは何故かダークなスーツに身を包んでいた。
『よくわからんが決勝まで来ちまったぁぁぁ!』
絶対興味本位で参加登録したよねあの人!
しかもタイトなスーツ姿が無茶苦茶似合う。
【さぁ続いて赤コーナーより学校の部代表の入場だぁぁぁ!】
体育館がまた揺れる。
・・・。
ウチの学校で最強といえば無論あの人だろう。
【生徒という生徒を容赦無く蹴散らし、体育会系、不良生徒、さりげなく強い女生徒のことごとくをねじ伏せたダメダメな保健教師! 白衣の悪魔! 金髪の注射器! 逢魔が刻! 《高坂ぁぁぁぁぁ! 早苗》先生の入場です!】
「早苗ちゃぁぁぁん!」
「キャー!高坂せんせぇぇぇ!」
またも死神と美香は大絶叫。
会場内も主に生徒達からの歓声が激しい。
『ゾンビの特殊メイク落とすのにどんだけかかったと思ってんだコラァァァ!!』
相変わらず白衣姿の保健教師はわけのわからない事でキレていた。
さぁて文化祭のフィナーレ。
どちらもオレでは絶対勝てない。
激闘必至の夢の対決(作者の希望)。
一体どうなることやら・・・。
次回へ続きますっ!