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死神といっしょ!  作者: 是音
74/116

第74話 死神と川柳

「私ね、最近やりたい事があるの」


 死神は突然そんな事を提案してきた。


「やりたいこと?」


「うんっ。この前テレビ見てて気付いたんだけどさ」


「うん」


「最近の映画の宣伝って格好いいよねっ」


「うん?」


 まぁ、迫力があるし短い時間で興味がそそられるように作ってはいると思う。


「そこで死神は考えたの!《私にも格好いいCMが欲しい》って!」


いらないだろお前。


「てなわけでプロローグ考えようぜ準くん!」


 プロローグ。

 作品全体の流れや世界を提示する前置きの部分。

 映画宣伝ではこれが語られることもある。


「で、お前は考えたのか?」


「考えたよー!」


「ほう」


――――――


 時は現代。


 地獄と呼ばれる魂管理機関では死神業者という魂回収を仕事とする者達が居た。

 ある日、あまりの重労働に耐えきれなくなった死神業者の一人が人間界へと舞い降りてくる。


 衰弱しきった身体を懸命に動かし、辿り着いたのはとあるマンションの一室。

 誰も居ない部屋に上がった死神業者の娘はベッドに横になり疲れ切った身体を休ませ、眠りについた。


 しかしそこの主人であり、世間から見離され人間として駄目を極めた一人の高校生を助ける日々が彼女を待っているとは露知らず。


 その健気な少女の名は


 『死神ロシュ』


〈絶賛公開中!〉


――――――――


・・・。


「どうよどうよ!?」


・・・。


 世間から見離され人間として駄目を極めた一人の高校生とはオレの事ですかい。


 詐欺だ!騙しだ!


 お前がここへ来た理由は《飽きたから》だし、来た時も漫画読んで寝てただろ。


「準くんも考えてよー!」


 そっちがその気なら。


――――――――


 時は現代。


 魂をもてなす地獄旅館では死神業者という仕事があり、その中で群を抜いておかしな娘が一人居た。


 名を『死神ロシュ』という。


 おかしな娘はおかしな娘らしく《飽きた》とか言いながら人間界へやってきた。

 居候先として白羽の矢が立ったのは一人の高校生の部屋。


 変な娘死神が繰り広げる

 変な娘死神による


 変な娘死神の大暴走。


 その被害を受ける可哀相な男の名は


『里原 準』


〈絶望後悔中・・・〉


――――――――


「にゃんだこりゃぁぁぁぁ!」


 まぁ事実を述べてみた。


「詐欺だ!騙しだー!」


 かなりご立腹の様子。


「《変な娘》連呼しすぎじゃーー!」


 死神は頭からプンプン煙を出して怒っている。


「でも本当じゃん」


「ぬ〜っ!宣伝やめ!やめやめ!」


 早っ!


「本当は私、《川柳》に興味があるの!」


 嘘つけ。今思いついただろ。


 川柳せんりゅう

 俳句のように季節の語句を入れなくても良い五・七・五の十七文字の詩。

 だったと思う。


「いやぁ、ジャパンはそろそろ秋ですからなぁ、川柳なんぞやってみようかと」


「ほう、それは是非聞いてみたいな」


「えぇ!?」


「ハマってるなら聞いてみたいなぁ」


「じ、準くんはどんなの知ってるの?」


 オレのを聞いて参考にしようという考えか。


「例えばだな・・・」


――――――――


 見渡せば


 緑豊かな


 遊歩道


    by準


――――――――


「こんな感じで良いんじゃないか?」


「よ、よっしゃ、じゃあ私のを特別に聞かせてあげよう!」


 死神の目が泳いでいる。絶対に今必死で考えてるよね。


 あ、今パッと閃いた顔をした。


「コ、コホン!」


――――――――


 見上げれば


 カメが空飛ぶ


 ガラパゴス


     by死神


――――――――


ブハァァァッ!


「ど、どうよ!」


 いろんな意味で格が違ぇ!!


「ガラパゴス島でもカメは飛ばねぇだろ!」


「うーん、あっ!もう一句思いついた!」


 思いつくの早っ!


――――――――


 仲の良い


 兄と妹


 生き別れ


by死神


――――――――


 悲しい!悲しいからやめれ!


『フハハハハ、面白そうな事やってんなぁ!里原、ロシュ!』


 !?


 黒いゲートから居間へやって来たのは閻魔さんだ。


「こんにちは閻魔さん!」


『いやぁ、あんまり仕事がつまらねぇんで逃げてきちまった』


 おいコラ地獄の大将。



 閻魔さんは笑いながら居間へ腰を下ろした。


『で、なにやってたんだ?』


「《川柳》発表会だよー!」


『おぉっ、日本の風物詩だなぁ!フハハハハ、じゃあ俺様も一句・・・』


――――――――


 ごめんなさい


 マジごめんなさい


 マイハニー


    by閻魔


――――――――


 一体何があったんだ閻魔さん!


「よっしゃ!じゃんじゃん行くぜー!」

『フハハハハ、じゃんじゃん行くぜー!』


・・・。


――――――――


 モデルかな


 モデルじゃないよ


 ロシュだよん


    by死神


(アホか)


――――――――


 美形かな


 美形じゃないよ


 超美形


    by閻魔


(もっとアホがいた)


――――――――


「二人ともバカだろ」


「えー!結構本気だよー!」


『そうだぞ里原!』


 あれで本気なのか!?


 死神と閻魔さんはうーん、と悩みながら新しい句を考えている。


「うーん・・・《ハゲ頭》・・・」


 却下ぁぁぁ!


『うーむ・・・《アホ白狐》・・・』


 コラ。


「よし、やっぱこれだね閻魔さん」

『フハハハハ、そうだな』


 超不安。


――――――――


 白狐さん


 着物汚して


 ごめんなしゃい♪


by死神・閻魔


――――――――


 よし、今すぐ謝ってこい。


『今のは本当かしらお二人さん?』


「!!」

「!!」

『!!』


 残念、遅かった。


 ワープゲートから出てきた狐面の女性、白狐さんは凄まじい恐怖オーラを放ちながら


「ふぎゃ!」

『うぉっ!』


 死神と閻魔さんを引っ掴んだ。


『ごめんなさいね里原くん、勝手にお邪魔して』


「いえいえ」


『ちょっとロシュをお借りするわよ?』


 こわっ。


「どうぞどうぞ」


 白狐さんは二人を引きずりながらゲートに入っていく。


「うひゃぁぁぁ助けて準くーん!!」

『助けろ里原ー!』


『静かになさい!!』


「ひっ」

『ひっ』


 こうしてオレ一人を残して死神と閻魔さんは地獄へ連れていかれてしまった。


・・・。


 みっちりお叱りを受けて来いよ死神。


 死神が地獄へ連れていかれた後、きっとベソをかいて帰ってくるであろう奴の為にオレは昼食の支度をしていた。



プルルルルル、プルルルルル・・・


 おっと、電話電話。


ガチャ


「はいもしもし」


『あっ!《小橋》さん宅ですか?』


「いえ、違います」


『なら良かった、里原くんの家だ』


 うん、間違いなく美香だよね。


「なんだ《後藤》、何の用だ?」


『えっ!?私《後藤》じゃないよ?』


「うん、美香だろ」


『悔しーーー!』


 ふははっ、勝利。


「で、マジで何の用だ?」



『あっ、そうそう!文化祭の《例の企画》、OKだってー!』


「おー、そうか。死神に伝えておくよ。いいのか?オレ達はクラスの劇に参加できなくなるぜ?」


『いーのいーの!こっちも楽しそうだし、三笠くんだって張り切ってるんだから!』


「そうか、わざわざありがとな」


『あいあーい!あ、それから・・・』


「?」


『里原くんの鞄の中に《コガネ虫》入れたの実は私なの〜♪アハハハハ!』





「よーしテメーそこ動くんじゃねぇぞ!今からぶっ飛ばしに・・・」

ブツッ


ツーツーツー・・・


 や、やはり最後は勝ち逃げなのか・・・。


 ちなみに文化祭はもう間近である。

 死神も参加したいって喚いてたからなぁ。聞いたら喜ぶぜ〜。


 実際、泣きベソをかきながら帰ってきた死神は、用意してあった昼食と美香からの伝言によって超ハイテンションに切り替わったのだった。


「文化祭楽しみだね準くん!」

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