表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死神といっしょ!  作者: 是音
71/116

第71話 死神と課題(夏の絵日記)

 うーん、夏休みももうそろそろ終わりだね。


 楽しかった事なんかを思い出してまた夏休みの始まりへ戻ってくれー!とか小さい頃はよく思ってたよ。


 さて、ウチには違う意味で夏休みが終わらないで欲しいと切に願っているおバカさんがいた。


―――――


 その朝、オレは居間にいた。


ドドドドドド・・・


「たたたた大変だにゃぁぁぁ準くん!!」


 うっせぇなぁ。


 ドタバタとやかましい音をたてながら死神が半泣きで居間へ走り込んできた。脇にはノートを抱え、手にはシャーペンを握っている。

 んー、こいつぁ嫌な予感だぜ・・・。


「うっ・・・ぐすっ・・・」


「おい」


「うっ・・・ぐすっ・・・」


「・・・まさかお前」


「ぐすっ、夏休みの宿題が一杯残ってるよぉーーーー!」


 まさに予想通りの展開ー!


「テメーもう夏休み終わりだぞ!?」

「終わりだよぉー!」


「なんで宿題やらなかったんだよ!」


「そりゃあやらないわよ!常識でしょ常識!なんか文句あるの!?」


 うわぁ逆ギレー!


「そ、そうか。まぁ文句はないよ。自業自得だ、お前が頑張れば良い」


「・・・え?」


「ん?」


「えぇぇぇ!準くん手伝ってくれないのぉぉ!?」


「いい加減にしろよテメェェェェ!!」


「ぅえぇぇぇん!ごめんなさぁい!」


 似たような事が以前もあったような気がする。あぁ、たしかアレは冬休みの課題だったか?


「・・・で、課題はなんだ?冬の時みたいにまたカブキさんと戦うのか?」


 死神は首を横に振った。


「―――っき、とか・・・」


・・・?


「んぁ?なんだって?」


「その・・・絵日記とか」


・・・。


・・・。


「は?」


「・・・絵日記とか」


「普通の宿題じゃねぇかぁぁぁぁ!」


「ひぃーっ!ごめんなさぁい!」


 待て。待てよ。


 オレはてっきりまた誰かと戦うか、地獄で雑用すれば良いものだと思っていた。だが、今回は本当に全国の夏休みを楽しみ過ぎた学生達が悩んでいそうな悩みだ。


「ちなみに・・・」


 死神が言いにくそうに顔を上げる。


「ちなみに・・・夏の課題を提出しないと居候先の主人もお仕置き」


・・・!


 んなっ!


「なぁんでオレもなんだぁぁぁ!」


――――――




 絵日記。

 それは絵と共に夏休みの日々を綴るものである。オレは書いた事ないけど。

 しかも絵日記って完璧ガキじゃん。冬休みの課題がカブキさんとの戦闘なのに何で夏休みの課題が普通に絵日記なんだよコラ。

 でもって死神の絵日記は当然白紙である。


 もう綺麗に真っ白。


 たかが絵日記をよくぞここまで放っておいたな。って思う。

 日記を書くのならまだしも、それに絵を加えろだと?


・・・。


・・・。


 つーか死神業者の課題を絵日記に決めた奴出てこい!!

 馬鹿だ!馬鹿としか言いようがねえ!



 死神は隣で足をパタパタさせながら宿題中。とりあえず八月一日までは書かせた。


「ちゃんと書いてるか?」


「うんっ。次は、八月二日・・・《晴れろ》」


「待て」


「?」


 オレは八月一日までの日記をパラパラめくった。


・・・。


「全部《晴れろ》じゃん」


「うん」


「絶対雨降った日あるよな」


「うん」


「駄目じゃん」


「だっていつ雨降ったかなんて忘れちゃったもん」


・・・。


 あぁ、それもそうだな。思い出したり調べたりすると時間かかるし。早く提出しないとオレの命に関わるし。


 妥協することにした。


 その日の出来事をたまに聞かれる以外は暇だから死神の絵日記を覗いてみる。


――――――――

――――――――


【八月二日・晴れろ】


 今日は準くんが地獄に呼ばれたとかで一人でした。

 久しぶりのお留守番なので、ワクワクドキドキしながら・・・寝てました。


(寝ちゃったらワクワクドキドキした意味ないよね)


 あんまり寝付けなかったので、その日はちょっとお散歩へ行きました。

 たしか準くんが『プリンめっちゃ食べたい』とか言っていたのを思い出したので、仕方なくついでに買い物です。


(おいコラ妄想族)


 ふわふわ浮きながら街へ向かうと、道端で座り込むお婆さんが居ました。


 私は悩みました。


『うーん、思い切ってカスタードプリンかな?』


(お婆さんについて悩め!)


 お婆さんは私が見えません。さてどうしたものか。


 うーん。


 考えても仕方ありません。


 スルーしました。


(助けろ!無慈悲にも程があるぞ!)


 とりあえず荷物が重そうだったので、お父さん直伝の重力魔法で軽くしてあげました。お婆さんは不思議そうな顔をしましたが、笑顔で去っていきました。


(偉い偉い)


 だがそれが間違いだったと後に身をもって知る事になろうとは・・・その時の私には想像もつかなかった。


 八月二日・昼。


――――――――

――――――――


・・・。


 えっ。何、最後のミステリーっぽい終わり方は。


「ふぃー、書けたー」


「あ、あぁ。頑張れ頑張れ」


 今のオレは死神がやる気を無くさないように心の中でツッコミするしかない。


 その後も両親に会った事や、夏祭りに行った事、美香が三笠の頭に手の形を残した日焼けを作らせた事等を書き綴った。

 ちなみに絵は裏技で写真だ。


――――――――

――――――――


【八月二十九日・雪降れ】


(いや無理だろ)


 今朝は早く起きてしまったのでベランダに出て朝の風を満喫していたら、遊歩道を走っていく小学生達を見ました。

 準くんに聞いたところ、毎朝《羅時男大将》という人の所へ通っているらしいです。

 小学生なのに格好良いです。


(すげぇ粋な勘違いだけど《ラジオ体操》ね)


 小学生は毎日プールへも通うのだそうです。羨ましいことこの上ない。

 憂さ晴らしに寝ている準くんの背中へダイブして泳いでやりました。


(あれは憂さ晴らしだったのか)


 しかしそれが間違いだったと身をもって知る事になろうとは・・・その時の私には想像もつかなかった。


(またこの終わり方!?)


――――――――

――――――――


「なぁ死神」


「なーに?」


「・・・い、いや。頑張れ」


「うん!さぁラストスパートだぜー!」


――――――――

――――――――


【八月三十日・ばれろ】


(何が!?)


 今日は特に何も無かったので、夜叉さんの事を書きます。


 夜叉さんのばーか。


(ガキか!)


 絵日記の宿題を出した夜叉さんはありえないと思います。


(夜叉さんのバーカ!)


 でも出したのは夜叉さんだけど、提案したのは閻魔さんだよね。


(閻魔さんのバーカ!!)


『馬と鹿でバカってどうなの?』って昔、美香ちゃんの友達が言ってたらしいです。


(知るか)


 名前が爆発しているらしいです。


(いや意味がわからん)


 《縛屋久 天香{ばくやくてんか}》だってさ、アッハハハハ!!


(んな奴居るわけねぇだろうが!!)


(・・・あれ?)


(でも聞いたことがあるような無いような・・・)


(いや、無いな。んなクレイジーな名前は知らん知らん)


 なんとか今日の分が埋まったのでこれでよしとしまぁす♪


――――――――

――――――――




【八月三十一日・晴れ】


(まぁ・・・今日だからな)


 今日は朝から大変でした。何故なら準くんの宿題がまだ終わっていないと言うのです!


(オイ)


 朝から私に『手伝って〜』と連呼してきます。困った困った。まったく準くんは困ったちゃんです。

 仕方ないので死神のお姉ちゃんは手伝ってあげました。


(・・・)


 しかしそれが間違いだったと後に私は身をもって知る事になろうとは・・・


(もういいっつーの!)


――――――――

――――――――


「書けたー!」


「お疲れさーん」


 時刻は正午過ぎくらい。なかなか速筆な死神は早々と絵日記もとい《写真日記》を書き終えた。


「頑張ったから気晴らしにお散歩行こーぜー!」


 自業自得だろうが。でもまぁ確かに頑張ってはいたみたいだし、


「そうだな」


 オレ達は大きく伸びをしながら部屋を出て行こうとした。


 その時。


プルルルルル、プルルルルル・・・


 んぁ、このタイミングで電話か。


「もしもーし」


『あっ! 準か!?準だな!?』


 冬音さんの声だ。なにやらとても慌てている。


「はい、どうかしたんですか?」


『メアが絵日記の宿題やってなかったらしいんだよー! 頼む、手伝いに来てくれー!』


・・・。


 どこの家でも一緒か。


 こうしてオレと死神の散歩の行き先は佐久間冬音宅に決定してしまったのだった。


 宿題を終えてしまった死神はご機嫌で浮かんでいる。


「新学期楽しみだねー!早苗ちゃん元気かなぁ〜♪」


・・・高坂先生か。あの金髪保健教師、確か夏休み中は旅行に行くとかなんとか言ってたな。変な土産買ってこなきゃ良いけど。


 ちなみにこの日の夜、オレ達が部屋に帰ってきたのとバッチリ同じタイミングで、彩花さんから《バンプが絵日記書いていなかったから助けて》という電話がかかってくるのだが、

 その時のオレには想像もつかなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ