第7話 死神とお友達
「このごろピピピのピッピピピ〜♪ ズドドドバキュンのピッピピピ〜♪ こっちを向いてよピョロヒィ〜♪ だってなんだか〜……」
さすが死神さんだね!
替え歌も規制音だらけで何言ってんのかわかんねえや!
「で、お前は一体何をしてるんだ?」
「ヨーグルトを焼いて食べてみよ……」
「捨ててきなさい。焦げ臭いから外の共同ゴミ捨て場に」
死神は泣きながら焦げたヨーグルトを外に捨てに行った。途中ブツブツと
「お母さんのいぢわる」
だの
「ジェイソンくんいいなぁ」
だの呟きながら。
さて朝食にするか。死神は泣いて帰ってくるだろうから好物の半熟目玉焼きでも焼いてやるか。
いかん。本当にお母さんみたいになってる。
「ぐすん、ただいまお母さん」
「誰がお母さんだ! ほら朝飯できてるぞ」
「おっ、半熟じゃねぇか! やるねぇ兄ちゃん!」
いきなり態度とテンション変わってんじゃねぇよ。
―――――
「いってきまーす」
「いってきまーす」
やはりついてくるのか。
「今日は何しようかなぁ〜。またカニ缶食べたいなぁ〜」
「イタズラばっかしてるとまた優等生くんに怒られるぞ?」
「……だ、大丈夫だもんね」
そんなに怖いか優等生くん。
学校に到着し教室に入ると、ほら出た美香だ。
「あーっ死神さん! あと金持ちおはよう!」
もう名前ですら呼ばれてねぇし。ってか大声で死神言うな。
「あっ、おはよう美香ちゃ……みぎゃあぁぁぁ!!」
死神の身体に電撃が走り、この世でもあの世でも聞いたことのないであろう悲鳴をあげた。
「ど、どうしたの死神さん!?」
「せ、背中……背中にみぎゃあぁぁ!!!」
「背中?」
オレは背中を見てみた。
……。
背中には《退魔》とかあとよくわかんない漢字が書かれたお札が貼られていた。しかも三枚。
「とってー! とってー! お札とってー! みぃぎゃぁぁぁ!」
美香が急いでお札を剥がす。ちょうどその時優等生くんと目が合った。死神も気付いたらしい。
「お、お札貼ったのアイツみぎゃ! 絶対に許さんみぎゃ!」
語尾変だぞ?
っつーかあの優等生も眼鏡に似合わず陰湿なことしやがるぜ。
「おいコラ優等生……じゃなくて眼鏡……じゃなくて……まぁいいやお前!! 死神に札貼ったのてめぇだろ!」
と言った瞬間。
「むゃぁぁぁあ!!!」
また死神の悲鳴だ。振り返ると電撃が走る死神の背中から再び札を剥がす美香がいた。やったのは優等生じゃないのか?
「里原くんどうしたんですか? 急に?」
優等生が驚いた顔でこっちを見ていた。
「ん……いや、何でもねぇ」
オレは意味がわからず自分の席へ行った。
「優等生じゃなかったら一体誰だみぎゃむゃ? お札なんて危なすぎだみぎゃむゃ!」
ますます意味不明な語尾がくっついてる。
だが下手に動けなくなった死神は今日一日大人しくしていた。変な語尾付けながら。
――――――
そして放課後、教室でオレと美香と死神は集まっていた。
「今日は災難だったね死神さん」
「全くだみぎ! 結局誰かはわからなかったみぎ!」
語尾減ったみたいだな。
「あ、あの〜僕見ました」
驚いて声のした方を見るとそこには優等生が立っていた。
「みぎゃ!? 優等生みぎゃ!」
ちょっと語尾戻っちゃったな。おっとそれより
「見たって何を?」
「その……死神? みたいな人の後ろを黒い影が凄い速さで動くところを」
黒い影?
「ってゆーか三笠くんも死神さん見えるの〜?」
「はい、何故か」
「へぇ、びっくり!」
あ、こいつ三笠っていうのか。
「黒い影だとさ。身に覚えはあるか?誰かに恨まれたりとか」
「ありすぎてサッパリみぎゃ」
こりゃ自業自得だわ。
「あ、でもこうゆぅことしそうなのが一人……いるみぎゃ」
ガラッ
『やっと気付いたわねっ!』
突然教室に入ってきたのは……ん〜、ピエロ?
紫の毛玉のついた黒のニット帽、黒い大きなボタンのついた灰色のセーター、金色の星がちりばめられた黒いスカート。頬には赤い星のペイント。青い瞳で黒い髪、ダークピエロな感じの少女だ。
ハァ、また新キャラか……。
「メア! 何でお前がここにいるみぎゃ!!」
「ロシュだけ地獄から逃げてズルい!」
「お前はいっつもサボってただろみぎゃ!」
「うるさい! 大体その気持ち悪いしゃべり方はなによ!」
「お前が強烈なお札を何枚も貼るからだみぎゃ!」
突然勃発した口喧嘩にオレと美香、優等生もとい三笠はただ呆然とするばかりだった。しかも死神は《みぎゃ》のせいでかなり変なキャラになっている。オレ達に気付いた死神が口喧嘩をやめた。
「あっ、紹介するみぎゃ。こいつはナイトメアっていう私や夜叉さんと同じ死神業をやってる奴みぎゃ」
「いつもロシュがお世話になってます。メアって呼んでくださいっ!」
メアというダークピエロ少女はペコリと頭を下げた。しかし夜叉さんといいこの子といい何でこう礼儀正しいんだろう。それに比べてこのみぎゃ神、じゃなかった死神は……。
「いいからお前はさっさと帰るみぎゃ! また夜叉さんに怒られるわよみぎゃ! この前だってサボって日本の閻魔さんトコ遊びに行って怒られてたでしょみぎゃ!」
「みぎゃみぎゃうるさーい!! 今のロシュだって同じでしょ!」
ロシュって死神のことか。また口喧嘩が始まるなぁ。
……あ。そういえば夜叉さんに貰った手紙のなかに携帯番号が書いてあったっけ。
オレは口喧嘩をする二人とそれに見とれている二人をよそに携帯に番号を打ち始めた。日本が誇る恐怖の鬼が携帯って……。
プルルルル、プルルルル
『はい夜叉です』
「あ、もしもし里原です。実は――」
数分後、まさに鬼神のオーラを放ちながら夜叉さんが現われ、メアちゃんを引っ張っていった。
夜叉さんはただただオレ達に謝るばかりだったが、三笠はオーラに圧倒されて失神した。無理もない、面識のあるオレと美香、そして死神さえも怒った夜叉さんを前にして泣きそうだった。
――――――――
部屋に帰ると、死神はぐったりしていた。
「あ〜あ、今日は疲れたみ」
まだ微妙に残ってるな語尾。
「でもナイトメアってお前がサボってる間代わりに仕事請け負ってる子なんじゃないのか?」
「いいの、アイツがサボった時は仕事全部私に回ってきてたんだから」
あ、語尾消えたな。
仕事仕事って言うが人の魂を狩る仕事だろ? そんなにおごそかにするなよ……。
「さあ、早くご飯にしてくれたまえよ里原くん。そうだな、今日こそは天津飯にしてくれたまえよ」
「あいよ」
「……あれ?」
ま、今日は疲れただろうからな。
「おーい、なんか変だぞ準くん? なんか拾い食いしたのかぁ?」
……この野郎♪