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死神といっしょ!  作者: 是音
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第62話 (大感謝企画・2) 伝説の6人!

皆様、企画案の提供有難うございました! とても沢山のメッセージを頂き、中には物語が崩壊してしまいそうな程愉快なキャラの提案までありました(笑) 今回、皆様の御愛読・応援のおかげで再びお送り致しますアクセス数三万突破感謝・記念のお話は、その中で圧倒的に多かったご意見を参考に致しました。 それではどうぞ♪

 金色の装飾が施され、壁には掛け軸が何枚も垂れ下がり、一番大きな掛け軸には《地獄》と書かれている。

 それ以外の掛け軸には《LOVE》だとか《イケ面》とか呆れるような文字ばかりだが・・・。


 オレの真正面に座った、地獄アジア支部の支部長がいつもの笑顔で口を開いた。


『フハハハハハハハ!さて、お前達に集まってもらったのにはちゃんと理由があるぜ』


 オレと冬音さん、そして彩花さんは、突然携帯で閻魔さんに呼ばれて三人だけで地獄旅館、その中の閻魔さんの部屋へ集められていた。

 死神も行きたがっていたのだが、今回は留守番だ。


 オレ達は何故この三人だけで集められたのか皆目見当がつかず、ただただ頭に疑問符を浮かべるばかりだった。


「・・・で、何で私たちが集められたのか。その理由とやらを聞こうじゃないか。パシリとかだったらぶっ飛ばすぞ」


 コラ冬音さん。相手は閻魔さんですよ。


『うわー超怖ぇコイツ!』


 閻魔さんは正直だった。


 閻魔さんと向かい合う形で三人並んでソファに座り、オレの右隣で冬音さんが長い脚を組んでいる。


 左隣の彩花さんも首を傾げたままだ。


 閻魔さんはコホンと咳払いし、言った。


『明日はロシュ、メア、バンプがそれぞれの《両親》に会うことのできる年に一度の大切な日だ』


・・・。


・・・?


 何?


・・・。


 りょ、両親!?


「ちょっ、それは・・・」

「それはどういう事?閻魔ちゃん」


 オレの言葉を遮って彩花さんが言った。珍しく軽い混乱をしているらしい。

 冬音さんも同じだった。


「メア達に親がいたのかーーー!?」


 いや、そりゃいるだろうけど。

 問題は以前デーモンさん達が自らを死神達の〈育ての親〉だと言っていたことと、今の閻魔さんの発言だ。


『ま、いきなりこんな事言われたら混乱するのも無理ないよな』


 フハハ、と軽く笑った閻魔さんは珍しく真面目な表情になった。


『お前達には話しておかなければいけないからなぁ』


 自然、オレの気持ちも聞く姿勢になる。

 まぁ変人の冬音さんと彩花さんは控えていたエリート餓鬼に


「話が長くなるっぽいからコーヒーくれ〜」

「フフッ、私紅茶ね」


 とか言ってたけど。

 閻魔さんはそれを見て再びフハハと笑い、話し始めた。


『ちょいと真面目な昔の話だ・・・』


――――――――


 地獄にまだ本部があった頃。本部は現在ヨーロッパ支部となっている場所だ。

 そこには6人の本部の長が居てな。

 俺様達、現支部長の憧れの存在だった。


(まさか)


 そうだ里原。あの三人の両親だよ。


ロシュの両親

死神《ヘルツェモナイーグルスペカタマラス六世ご夫妻》


メアの両親

夢魔《インキュバス・バッドドリームご夫妻》


バンプの両親

吸血鬼《アークスマーカス卿ご夫妻》


 の6人だ。


(ふーん、本当にいたんだなぁ)

(だから当然いますって冬音さん)


 で、ここで話は変わるんだが、地獄や天国ってのは膨大なエネルギーを必要とする場所だ。本部のようなでかい場所なら尚更だ。そんなモノが何処から供給されているのか?


(少し気になってはいました)


 それは《魔導高炉》って呼ばれるものからエネルギーを供給されている。


(へぇ、それはきっと膨大なエネルギーなんでしょうね♪)


 その通りだ須藤。そんなものが暴走でもしたら大事件だ。


・・・。


 そんな大事件が、起こっちまった。


 よりにもよってヨーロッパ本部の魔導高炉でだ。


(死神ちゃん達の両親が居た所ね)


(相当な被害が出たんだろうな)


 ああ。地獄ヨーロッパ本部の建物は完全に崩壊。

 ただ、6人の本部長の活躍でその時の被害者はなんと0だ。地獄や天国、魔導社等が存在するこの異世界で死んだりしたらとんでもない事態だからな。

 無論、6人は生ける伝説と化したぜ。


(あの、閻魔さん)


 慌てんなよ。

 じゃあ本題だ。6人は魔導高炉暴走事件の後、同じような事件が二度と起こらないように三つの城に分かれ、自らで結界を張って全支部の魔導高炉の安定を保っている。


 で、残された三組の赤ん坊であるロシュ、メア、バンプを、残った支部長つまり


アジアの《閻魔》

アメリカの《デーモン》

アフリカの《アヌビス》

新しく派遣されたヨーロッパの《ヴァルキュリア》


の四人が育ての親を受け持ったわけだ。


(なるほどな)

(今もバンプ達の両親はお城の中でお仕事をしているのね?)

(今も!?)


 ああ。とは言っても特に仕事はしなくて良いから城でのんびり生活してるだろうよ。

 ただ、自分達はもう結界から出られなくなっちまったし、外からの干渉もできなくなった。


(え、でも・・・)


 おうよ。明日だけ、一年の内で唯一明日だけその結界の力が弱まる。

 だから毎年俺様達がそれぞれ会わせてやるんだが、今年はお前達が連れていってやった方が良いだろ?


――――――――


『・・・とまぁ、そういうわけでお前達を呼んだんだ』


 死神達の両親・・・ねぇ。


『《魔列車》ができたおかげで以前より格段に早くそれぞれの城へ行けるようになったしな!ラビットに頼んで手続きは済ませてある』


「なーるほどね。じゃあ私がメアの両親、須藤がバンプの両親、準が死神の両親の所まで同行すれば良いんだな?」


『そういうこったな、佐久間。無理なら代わりに俺様か他の支部長に同行させるが・・・』


「バカ言っちゃダメよ閻魔ちゃん♪」


 彩花さんが紅茶のカップをテーブルに置いた。


「バンプを世話してやってるんだから《両親にも文句言ってやらないと》♪」


 うわぁスゲー動機キター!


『おいおい須藤・・・。もう一回閻魔ちゃんと言ってくれ』


 馬鹿かアンタ。


 まぁ、そうだな。ここは一度会っておくべきなのかもしれない。


「あの、閻魔さん」


『ん?なんだ里原』


「死神達は《親》と《親代わり》の区別がちゃんとついているんですか?」


『フハハハハ!いらん心配だ里原。ちゃんと《そういう風に育てた》からな』


 さすが。自称《容姿も頭脳も全てが最高級》と豪語するだけはある。


「おい閻魔。アイツ等は妙にデーモンって奴に懐いてるみたいだが、ほとんどそいつが育てたのか?」


 と冬音さん。

 そういえば大会後の宴会の時なんかは三人共デーモンさんにベッタリだったなぁ。


『フハハハハ!アイツ等は激しく優しいデーモンが好きみたいだな。一応皆で平等に育てていたんだが・・・』


 と言った所で、閻魔さんは何かを思い出したらしく、再び爆笑しだした。


『ワハハハ!でもな、アイツ等は苦手としているが、なんだかんだで一番三人を溺愛していたのは《むっつりアヌビス》の野郎だと思うぜ!』


・・・むっつりアヌビス!?


 アヌビス。そういえばそんな名前も聞いたことがあるな。いつだったっけ?


『アフリカ支部で育てられてた時はかなり叱られたりしたらしいからな。愛情のド裏返しってやつだ。フハハ!いっつもホルスの奴に泣き付いてたらしいぜ』


 まぁアイツ等にもオレと同じ様にいろんな過去があったんだなぁ。

 隣で腕組みする冬音さんは何か思うところがあるようだ。


「アイツらは寂しくなかったのか?」


 うわ、冬音さんが珍しく真面目な事言った!


『寂しいわけがねぇだろ。退屈はさせなかったし、定期的に会わせてやっていたし、何より俺様達四人と各支部の幹部クラスが全力で、フルに愛情を注ぎ込んでやった秘蔵っ子だからな、あの三人は。支部長クラス四人分プラス全国幹部クラス連中の愛情だぞ!?寂しさなんてぶっ飛ぶっての!フハハハハ!!』


 すげぇ。まさに秘蔵っ子だ・・・。


『まぁそういうわけで、今晩あたりにここを魔列車で出る。頼むぜ三人共?』


「あいよ」


「わかりました」


「了解〜♪」


 オレ達三人が席を立ち、部屋を出ようとしたところで閻魔さんが一言付け足した。


『あ、ちなみに6人共極度の親バカだから』


――――――――


―――――


―――




 なるほどね。先日ヴァルキュリアさんが言っていた《あの日》とはこの事だったのか。


 部屋に戻ったオレは、帰って早々に前から飛び付いてくる死神には無抵抗で、地獄で聞いた事と今年はオレ達が付き添うことになったという旨を話した。


 つーか、人が話してんのにこのクソ神、胴体に張りついたまま離れねぇ。


「聞いてんのか?」


「聞いてるよー。準くんが私のお父さんとお母さんに会いに行くんで・・・」


 死神が硬直した。


「?」


「えぇぇぇぇぇぇぇ!?」


 いきなり大声をだした死神が顔を上げてオレと目線を合わせる。


「準くんが、わ、私のお父さんとお母さんに会いに行くのぉぉぉぉぉ!?」


「うん。お前の付き添いで」


「つ、ついに準くんを両親に紹介する時が・・・」


「まぁそういうことだ」


 居候先の主人からこのアホ娘に関して一言二言、言いたい事があるからな。


「よっしゃ準くん!すぐ行こ!今行こ!今すぐ行こ〜ぜ!!」


「い、いや、魔列車が出るのは夜だから・・・」


「魔列車!?」


 死神の眼が更に輝く。

 しまった。余計なことを口にしちまった・・・。


「行こ行こ行こー!地獄行って待とう!」


・・・。


 結局死神に押し通され、出発時刻までの時間を地獄で過ごす事になったのだった。


――――――


 というわけで早めに地獄旅館に戻り、時間を潰すべく地獄街へ赴いたオレと死神は、ゲルさんに挨拶したり死神の両親への手土産を買ったりしてわりと時間を潰すことができた。


 五階あたりをうろついていると、どうやら魔列車が到着したらしく館内放送で知らせが入ったのでオレと死神は駅へ向かうことにした。


 魔列車が停留している駅は地獄旅館の入り口である《地獄門》を出てすぐ目の前にあり、旅館を出たオレ達は目の前の光景に息を呑んだ。


「うわ、すっげ・・・」


「わぁー!魔列車だぁ!本物だー!」


 これが魔列車。


 車両の形はオレ達の乗る電車に似ているが、あくまで形が似ているだけだ。

 漆黒に染まった魔列車の車両はオレがいつも見ている電車より五倍は大きいのだ。最初に見たとき、一瞬これは建物なんじゃないかと思った程だ。

 更に変わっているのは先頭車両。唯一円柱状である先頭車両には正面に三つの大きな青白い宝石が逆三角形の配置で埋め込まれている。何の意味があるんだろ?


 つーかやべぇ。こんな乗り物は人間界には無い。素敵すぎだよジョーカーさん。


 死神は目を輝かせながら魔列車に見入っている。


『うおー!すっげぇ!』

『魔列車ですー!』


 聞き慣れた声がしたので振り返ってみると、冬音さんとナイトメアが目を見開いて魔列車に驚いていた。更にその後ろには彩花さんとヴァンパイアがこれもまた驚きの顔で見上げている。


『バンプ、私達コレに乗るの!?』

『そうだよ〜』

『キャー!もうバンプ大好き!!』


 これで6人揃った。

 全員がわくわくして待っていると、地獄門から二つの影が出て来た。一つは長髪の着物。もう一つはウサギ頭。

・・・閻魔さんとジョーカーさんだ。


 オレと死神以外はジョーカーさんと初対面なので予想通りのリアクションが飛び交う。


「な、なんだコイツはぁーーー!!」

「ウサギさんですー!可愛いですー!」


「フフフフッ、変人♪」

「彩花さんが言ったらおしまいでしょ!」


 四人が大騒ぎする中、閻魔さんは呆れ顔で両手を腰に当て、ジョーカーさんは四人の前で優雅に頭を下げた。


『ホホホホ、私魔列車を開発した《魔導会社マジック・コーポレーション》の社長をしております《ラビット・ジョーカー》と申します。以後お見知り置きを♪そしてこちらが・・・』


 ジョーカーさんの影から黒いシルエットが飛び出し、ジョーカーさんを蹴飛ばした。・・・ってオイ。


『社長秘書の《シャドー》です〜。いつか社長を毒殺して会社を乗っ取るつもりです〜』


 社長の目の前で暴露したー!


「アハハハハ!変な奴等が現れたなぁメアよ!」


「冬音さんに比べたら幾分かマシですー!」


 どうやらジョーカーさんとシャドーが魔列車で同行してくれるらしい。


 死神はお気に入りのシャドーが出て来て嬉しさを爆発させていた。


「シャドーさんも行くの!?」


『うん。面倒だけどね〜。社長マジで死ねば良いのにね〜。線路に縛り付けようかしらね〜。自分が開発した列車にひかれたら爆笑よね〜。滑稽よね〜』


 うわぁ、ひでぇこの影女・・・。


「ワハハハハ!素顔見せろコノヤロー!」


「見せろですー!」


『のぉぉぉぉぉ!いけませんお二人共〜!』


 冬音さんとナイトメアはウサギ頭の耳を掴んでいる。


「フフフフッ、あなたも素顔を見せなさいバンプ!!」


「むぃぃぃぃぃ!ほっぺが痛いよ彩花さーん!!」


 何やってんだよ。


『オラ、何やってんだよお前等。そろそろ魔列車がでるぞ』


 こうして閻魔さんの見送りを受けながら、オレ達は死神達の両親へ会いに行くべく巨大な魔列車に乗り込んだ。

次回へ続きます。

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