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死神といっしょ!  作者: 是音
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第6話 死神とリゾート

「わぉ、こいつはすげぇ……」

「おっきいね〜」

 目の前に広がる光景にオレと死神は思わず声を洩らした。


 美香に誘われて死神と温泉に来たオレだったが、現地合流ということでやって来たそこはなんとセレブ御用達のリゾート温泉だったのだ。屋外に南国風に造られたこの大規模なそれはもはや温泉といえず、水着で入るアミューズメント温水プールだった。しかもその隣には馬鹿でかい施設まである。美香もとんでもない所をチョイスしたもんだ。オレの出費も激しいのだろうな、あのクレイジー女め。


 お、クレイジー……じゃなくて美香が来た。


「ごめーん、ちょっと遅れたぁ! ん? わぁっ、死神さん素顔だ〜! 仮面はどうしたの!?」

「フフ、仮面はもう時代遅れだからねっ」

「? でも素顔超可愛い〜!! 髪金色だぁ! 目もブルー! 肌白いんだね〜、黒いローブだから際立って見えるよ。ホントにお人形さんみたいだぁ!」


 さんざん死神をもみくちゃにしていた。死神は柄にもなく照れながら応対している。

 どうやら美香にも死神は普通に見えるのだという。クラスの優等生くんだけだと思っていたが。(第3話参照)


「じゃ、中入ろうか!」


「あっ……」

「ん? どうした死神」


 突然立ち止まった(浮き止まった?)死神は何か大事なことを思い出したようだ。


「私、泳げなかった」


 うん。泳げる死神ってのも聞いたことが無かったが、泳げない死神ってのもどこかマヌケに聞こえるな。


「大丈夫! ここプールの他にもいろんな施設があるから!」

「良かった、じゃあ行こ行こ♪」

 入場前に目的が大きく変わった。ま、楽しめばイイか。




 で……。


「美味しいコレ!」

「さすが高級バイキングよね〜」


 結局食い物かよ!



「準くんも食べてみなよ!」


 確かに美味い料理ばかりだ。知らない品目も多々ある。よし今度作ってみよう。


「まったく、準くんの作る料理とは木星とプランクトンの差ですな」

「えー、里原くんの料理そんなに不味いのー?」

「美食家の私にしたら味付けはまだまだですわ」

 よしカップ麺買って帰ろう。

 これでもバイトしてた頃は厨房を担当していたんだぞ。


「ふぅ、お腹一杯♪」

「次何しようか?」


 すると、突然死神が

「……むっ! 何奴!?」

 とか言いながらフォークを天井に投げた。ついにおかしくなったか?


『死神殿、困りますなぁ勝手に仕事を放棄されては』


 え?


 天井に逆さまに立っている和服姿で般若面の男がフォークを弾いた。誰?


「あ! 夜叉さんか!」

『探しましたよ。さぁ、地獄に帰りましょう。ナイトメアが仕事が増えたと嘆いてますよ。』

「やだよ、私地獄に飽きたんだもん! 日本人担当の夜叉さんより私の方が仕事多いんだからね! それにいっつもサボってたナイトメアが悪いんじゃん」


 多分般若面の男は死神の同業者だ。っつーか地獄って世界共通だったんだな。っつーかリゾート温泉まで迎えに来るなよ。


「ねぇ里原くん。あの人誰?」

「多分死神を連れ戻しにきた奴だろ」

「えー! 死神さん帰っちゃうの!?」

 オレにとっては願ってもないことだ。ナイス夜叉さん!

 するとその夜叉さんがヒラリとオレの前に飛び降りて来た。本物の鬼ってことだろ? すっげぇ恐い。


『貴方が居候先の主人ですね? ウチの死神がご迷惑をおかけしました』

「い、いえいえそんな! 迷惑だなんて!」


 ホントはメチャ迷惑だけどな。それにしても夜叉さん礼儀正しすぎ。


「ほら、迷惑じゃないって言ってるよ!」


 おいコラ死神。


『いいから、帰りますよ死神殿』

「あれー? じゃあ夜叉さんあの事言っちゃってもいいんだ?」


 あ、何か嫌な予感。


『何です?』

「ほら、昔あなたが大ファンだった女性作家と《枕草子》について語りたかったが為に執拗に追いかけた話! 名前はえ〜と確か清少―――」

『死神殿、もう少しくらいなら居てもいいですよ。ナイトメアにも良い薬になりますし』


 え?


『里原殿でしたか? ご迷惑でないということでしたら、もうしばらく死神殿を居候させてやって下さい』


 えーーーー!!!


「いや、その……」

『では御免』


 行っちまったーーー!!



「知ってて得する裏情報♪」

 夜叉さんも大変なんだな。って、同情してる場合じゃないだろ! せっかくの奴を送り返すチャンスが……。


「じゃあ死神さんまだこっちにいるの!?」

「当然っ」

「やったー! じゃあ次はシアターで映画見ようよ!」


 最悪だ。

 オレはシアターへ行く二人と別れて少し外を歩くことにした。


 さすが高級リゾートというだけあって、テニスコートやフットサル場まである。でもやはりすごいのは温水プールだよな。とにかくでかい。美香は温泉とプールの違いもわからないらしい。


 ん、何だ? 空から手紙が……。


《里原殿へ》


 あ、夜叉さんか。


《この度は迷惑と知りつつも死神殿を押しつけるような形になってしまい、まことに申し訳ない。某も弱みを握られております故……。お詫びといっては何ですが、死神殿の弱点を三つ程書き記しておきます。


一つ、飴と鞭攻撃に弱い。

一つ、食事を抜かれることが何よりも怖い。

一つ、結構里原殿を気に入っている様子。


他にもあるかも知れません。では御健闘を。 夜叉》


 ありがとう夜叉さん。涙が出そうだよ、いろんな意味で。でもこの弱点なんとなく知ってるよな。


 その後死神と美香はテニスをしたり、バイキングへ行ったり、ジムで汗を流したり、バイキングへ行ったり、サウナで汗を流したり、バイキングへ行ったりした。


「あー楽しかったねぇ」

「楽しかったねぇ」

 食ってばっかだったじゃねぇか。

「また来ようね〜(里原くん持ちで)」

「また来ようね〜(準くん持ちで)」


 なんか今財布から叫び声が聞こえたような……。


――――――――


―――――


―――


 家に着くとどっと疲れが出た。

「あー楽しかったね、準くんご飯は〜?」

「まだ食うのかよ!」


「それにしても夜叉さんったら、あんな所まで追い掛けてくるなんて」


 あんまり迷惑かけんなよな。鬼がストレスで倒れたなんて聞いたら笑いもんだ。


「死神さん飯好きなの作ってやるから、部屋掃除と洗濯とアイロンがけと風呂掃除お願いね〜」

「はぁい♪」


 食事を利用した飴と鞭の効果は絶大だ。

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