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死神といっしょ!  作者: 是音
57/116

第57話 死神の昆虫採集



ミーンミンミンミン


「みぃーんみんみんみん!」


・・・。


ミーンミンミンミンミン


「みぃーんみんみんみんみん!」


・・・。


ミーンミンミンミンミンミン


「みぃーんみんみんみんみんみん!!」


・・・。


・・・。


ミーンミンミンミ・・・

「みんみんうっさいわよぉ!!」


「テメーもうっせぇよ死神!」


 今日はクソ暑い中、外に出ています。

 場所は春、桜を見に来た事もある丘の公園である。


 強い日ざしと蝉時雨の中、広い公園の真ん中に位置する噴水&水遊び場にははしゃぎ回る子供と、その周囲でそれを見守る親がいたりする。


「暑いよロシュ〜、彩花さぁん」


「暑ければ全裸になりなさいバンプ」


・・・ひでぇ。


 この場に居るのはオレ、死神、彩花さん、ヴァンパイアだ。目的はサブタイトルで予想はついたと思うが、昆虫採集である・・・らしい。


 なんで昆虫採集なんてする事になったのかというと、話を持ちかけてきたのは彩花さんだった。


――――――――


『死神ちゃん!昆虫採集行こう!!』


・・・。


『こんちゅーさいしゅー?』


『そう!昆虫採集!!今世間では空前の大ブームなのよ!』


ウソつかないで下さい。


『大ブーム!?』


・・・しまった。


死神は流行とかには敏感なんだった。


『行く行くー!準くん行こうよ〜!!』


『・・・悪いが、嫌だ』


『何で!?』


『虫は・・・駄目だ』


『あっ、そうだったね』


 虫は駄目だ。マジで。何故嫌いなものをわざわざ採集しなきゃいけないんだ・・・。


『ごめんね彩花さん、準くんは虫が駄目なんだよぉ』


『そう・・・虫カゴ持ちをお願いしようと思ったのだけれど、残念ね』


 彩花さんは残念そうな顔をし、最後にこう付け加えた。


『入り切らなかった場合、スペアの虫カゴは《バンプの口》ね』


『悪魔だアンタはぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』


『やぁねぇ、違うわよ里原くん、フフフフフッ』


・・・。


『《悪魔なんて所詮パシリ程度にしか使えないわよ♪》』


もう究極だよアンタ!!


――――――――


 結局その時の一言が決定打となった。

 オレの虫嫌いとバンプの口の安全。・・・比べる余地もない。


 というわけでオレとバンプは虫カゴを持って立ってます。

 死神と彩花さんはというと、お揃いの麦わら帽を被り、虫採り網を握って早速虫探しへ行ってしまった。

 つーか黒ローブに麦わら帽はまさかのコラボレーションだと思う。


「暑いですね準くん」


「そうだな」


 帽子被ってくれば良かった。とか考えながらオレ達は日陰のベンチに座った。


「準くん、昆虫が高く売れるって本当ですか?」


「希少なのとかは高く売れるんじゃないか?つーか誰に聞いたんだそれ?」


「彩花さん」


 あの人目的は金かよ!!


「しかしまぁ、なんだ。家の中に居続けるのも身体に良くないよな」


「ですね。準くんは友人と遊びに行ったりしないんですか?」


「ん?まぁ頻繁に誘いは来るが・・・。とんでもねぇ同居人が居るからな、今のオレには」


「アハハ!ロシュのことだ!」


「別に苦じゃないから良いけどな」


 その時、遠くの方で凄まじい爆発音がした。


バガァァァァァァン!!


!!


何事だ!?


「行ってみましょう準くん!」


 バンプと一緒に音のした方角、公園の奥へ走る。民間人は少し驚いているみたいだが、人数も少ないし問題は無い。


 公園の奥は木々が密集し、木陰の多い涼しげな場所である。


「死神ちゃん、挟み込むわよ!」


「了解彩花さん!」


 木々の間を駆け抜ける死神と彩花さんの姿があった。


「何やってんだ死神!?」


 オレ達に気付いた死神がこちらを振り向く。


「あっ、準くん!聞いてよ、カブト虫のボスを見つけたんだよ!」


なんだそりゃ?


「あ!危ないバンプ!」


 死神がそう叫んだ時、既にオレの隣に居たバンプは頭を押さえ付けられ、押さえ付けた腕の持ち主である彩花さんは・・・


 そのままバンプの頭上にいたカブト虫に飛び蹴りしていた。


・・・ってオイ。


 蹴られたカブト虫はそのまま吹き飛び、木の幹に叩きつけられた。スゲェよ彩花さん。


 彩花さんは相変わらずのおっとりとした笑顔でバンプの頭を撫で、カブト虫を拾い上げるとバンプの虫カゴの中に入れた。


 つーか凄まじい狩猟だな。うん、採集じゃなくて狩猟だよ今のは。虫採り網の意味がねぇじゃん。


「やぁねぇ里原くん、今のは特別よ」


 そんなことを言う彩花さんと、満面の笑みを浮かべている死神の虫カゴを見てみると、


ぅげ


 虫カゴの中はもはや満員御礼だった。み、見ているだけで背筋が寒くなる。


「見て見て準くん!全部カブト虫とクワガタだよっ!」


 本当に嬉しそうにカゴを見せる死神。


「えっとね、えっとね、この四匹の名前は右から順番に《スプ》《ラッシュ》《マウン》《テン》だよ!それでね、こっちの三匹が・・・」


「わかったわかった」


 四匹合わせて絶叫マシンか・・・。


 その時


 バンプの虫カゴが粉砕された。


「あーっ!ボスカブトが逃げた〜!!」


 な、なんつーパワーだよ。


 規格外に巨大なカブト虫は凄まじい速さで飛び去っていってしまった。


「逃がさないわよ大金!バンプ、来なさい!!」


 金銭欲むき出しの彩花さんは常人離れした速さでカブト虫を追い掛けていった。(あくまでおっとり笑顔のまま)

・・・あの最強猫くらい速ぇんじゃねぇか?


「待ってよ彩花さ〜ん」


 同じく走り去ってしまったバンプ。ちなみにバンプの虫カゴは壊れてしまい、彩花さんのは満杯。あの短時間でオレの虫カゴはいつの間にか彩花さんに奪われていた。


「ありゃ〜、行っちゃったねぇ」


 取り残されたオレと死神は、そのまま近くにあったベンチの上に座ることにした。

 木陰の広がる公園は風もよく通り、涼しいことこの上ない。


「死神、お前は行かなくて良かったのか?」


「うんっ!いっぱい捕まえたもん!」


「そかそか」


 隣に座った死神は一匹一匹オレに見せながら、これはああやって捕まえたとか、これはこうしたら落ちてきたとか、色々説明してくれた。

 カブト虫とクワガタくらいならオレも我慢できる範囲なので普通に頷いたりする。


 ちなみに今日の死神は麦わら帽を被るにあたって髪を結んで欲しいということだったので、いつもは肩まで伸びている金髪も今日は両耳の少し下で二つにまとめられている。


「へへへ〜っ」


「死神、そんなに沢山捕まえたのは良いが、まさかそれ全部・・・」


「逃がすよ〜っ」


お?


「意外だな。オレはてっきりお前が『飼う!』って言い出すものだと思っていたよ」


「虫の寿命は短いからね、精一杯生きて貰わないと!」


・・・。


・・・。


・・・へぇ。


「ははっ、やっぱりお前は《死神業者》だよっ♪」


「?」


 オレは隣の麦わら帽をポンポンと叩いた。



「つーかホント元気いっぱいだよなお前」


「え!?そ、そんなことないよ!!私ね、実は病弱なか弱い女の子なの〜♪」


「ウソつけ」


「ホ、ホントだよっ!ほら、ゴホッ!ゴホッ!ドフトエフスキー!ゴホッ!」


「ドフトエフスキー!?」


 そんな感じでしばらくまったりと死神の昆虫紹介に付き合っていると、彩花さんとバンプが戻ってきた。

 狩猟には成功したらしく、オレが持っていたカゴの中には抵抗する力を失ったボスカブト虫が入っている。

 ただ、彩花さんとバンプの服は激しい戦闘によって汚れていた。


「ふぃー、やっと仕留めたわよ」


「猫さんが来てくれなかったらやられてたよ彩花さん」


・・・猫?


「そうなのよ〜。私とバンプがカブト虫と戦闘している最中、近くで猫が陽なたぼっこしてたの。

 でね、《暇だから加勢してやるニャ》って言ってくれたの」


 最強猫か。そういえば大会以来見ていなかったな。地獄旅館の居心地が良くて住み着いてると思っていたが・・・。


「それにしても速いわね〜あの猫、私ビックリしちゃった!

 しかも去りぎわに《ニボシを求めて放浪ニャ》だって!カッコイイ〜!」


 いや、だせぇよ。


 まぁ彩花さんとバンプに加え、最強猫まで敵に回したら勝てるわけがねぇよな。


「きっと高く売れるわよ〜っ」


 やっぱり金か。

 隣の死神は知らなかったらしく、ギョッとした顔をする。


「あ、彩花さん、虫を売るの!?虫の寿命は短いんだよ?」


「やぁねぇ死神ちゃん、逃がすに決まってるじゃない。《大自然に恩を売る》って意味よ♪」


「そっかぁ、さすが彩花さんだねっ!納得♪」


ウソつけ悪魔ぁぁぁ!!


 そんな彩花さんを隣に立っているバンプもギョッとした顔で見ていた。


「あ、彩花さんそれじゃあ詐欺師・・・」


『フフフ、血を搾り取るわよ吸血鬼』


「ひっ」




 仲良いなぁ。


「さて、彩花さんも満足したみたいだし、そろそろ帰るか?」


「そだね!」

「はい!」

「そうしましょ」


 死神はカゴの中の昆虫を自然公園内に逃がし、彩花さんも勿論全部逃がした。とみせかけてボスカブト虫だけは、ちゃっかり持ち帰りやがった。


――――――――


 マンションに帰る頃には夕方になっており、部屋に戻ったオレはすぐに晩飯の支度に取り掛かる。


「早く早く〜、ご飯ご飯♪」


 死神は椅子に座り、キッチンテーブルをバンバン叩いている。


「ちょっと待ってろ〜」


 あんまり待たせるとまたコイツは・・・


「ぶら〜ん」


 腰にぶらさがるんだよな・・・。


「それにしても準くんってば、今日ずっと日陰に入ったまま体力を温存するなんて狡猾だ〜!体力は適度に使うものなのだよ準くん!」


 ん〜、帰りに《歩くのも浮くのも疲れたからおんぶして!》ってぐずった貴様には言われたくないよなぁ。


「あっ!ご飯食べたら昨日録画したジブリ映画見ようぜー!」


・・・今朝も見ただろうが。

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