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死神といっしょ!  作者: 是音
55/116

第55話 準と発熱

「ゴホッゲホッ」


 い、いかん。風邪ひいた・・・。


 朝起きたら身体が熱く、視界がぼやけ、体温を計ってみたところ


なんとビックリ39度。


 というわけで、こいつぁ久しぶりにゆっくり寝られると思って風邪の流れに身をゆだねることにした。


コンコン


ガチャ


 パジャマ姿の死神がゆっくり入ってくる。まだ眠いらしく、おぼつかない足取りだ。


「う〜ん、おはよー準くん。ごはんは〜?」


・・・。


 ヤベ、コイツのこと忘れてた。


・・・。


 あぁ嘘ですとも。忘れられるわけもなく、発熱発覚直後から現在まで悩み続けていた悩みの種だ。


「あれ!?準くん顔赤いよ!?まさか・・・」


「おぅ。そうなんだ」


「私に惚れ直したの!?」


ふざけんな。


「風邪ひいたんだよ」


「えっ!何ひいたって!?」


「風邪」


「ネット回線!?」


「うんネット回線」


「・・・」


「・・・」


「・・・ツッコミを放棄しないでください準くん」


「・・・ZZZ」


「ツッコミを放棄しないでくださ〜い」


「・・・ZZZ」


「ツゥッコミをぉぉぉ!!放棄しないでぇぇぇ!!下さぁぁぁぁ・・・」


「うっせぇよ!!」


「あ、《マクド○ルド》ってさ、英語をよく見ると《マク○ナルズ》なんだよね」


「関係ねぇ!!」


 あぁ。ね、熱が・・・上がる・・・。このままコイツの相手をし続ければ驚異の40度台へ突入しかねない。

 どうする?いっそのことコイツにも風邪を移すか?いや、コイツが風邪をひいたらもっと大変だってことは経験済みだ。


「じゃあ私がごはん作ってきてあげるねっ」


「うん、やめて」


 お前飯を作れないだろうが。


「いいから準くんは寝てて!」


「お、おい死神」


「起きてきちゃ駄目だからねっ!」


「いや、そうは言ってもだなぁ」


「準くん・・・」


「はい?」


『噛むよ』


「寝てます」


 部屋を爆破されないか不安を抱えながら寝ていると、死神が料理を始めたらしく、音が聞こえてきた。


〈シュボッ!ジュージュー!ピヨン!シュボー!〉


ピヨン!?


〈トントントントン!ザッザッ!バサバサバサー!バガァン!!ボカァァァァン!!〉


料理!?


〈ありゃー、こんなもんかなぁ?〉

〈まぁこんな感じやろ〉


もう一人誰だぁぁぁぁ!




 何を作った?一体どんなモノを作った!?

 廊下を歩く足音が近づいてくる。恐怖。実験体。毒味。


ガチャ


「ジャーン!準くん朝ごはんだよーっ」


「・・・」


「ジャーン!準くん朝ごはんだよーっ」


「わーい」


「ジャーン!準くん朝ごはんだよーっ」


「っしゃぁ!かかって来い朝飯コラァァァァ!!」


 上がる上がる。体温上がるよー。


 ミトンをはめた死神が危なっかしく抱えてきたのは雑炊だ。な、なんと見た目は意外にもちゃんとしている。


「コレお前が作ったのか?」


「うん!あ、《消臭・ポット》くんと一緒だったけどねっ」


・・・。


 あー、あの腹話術人形か。さっきの関西弁はポットくんか。


 一人じゃ不安だから人形と一緒に作ったんだな。


・・・。


ふふ、可愛いじゃないか・・・。


【※今日の準くんは高熱の為、時々おかしくなっております。あしからず♪】


―――


「しかしお前でもちゃんと作れるんだなぁ」


「失礼な!いっつも準くんにぶらさがってたらチョットは覚えるよっ!」


ナルホドね。


 死神はオレのベッドの隣に座った。雑炊をスプーンですくい、なにやら邪悪な笑みを浮かべる。


 あ、嫌な予感。


「じゃあ準くん、私が食べさせてあげ・・・」


「結構」


「何で!?私が風邪ひいた時やってくれたじゃん!!」


「お前がだだこねたからだ!」


「いいからいいから!はい、あーん」


・・・。


顔で回避!


「まさかのだだっ子!?」

当たり前だ。


「ぬーっ、てい!」


回避!


「ほら、あーん!」


回避!


「・・・」


「・・・」


「準くん」


「はい」


『吸うよ?』


「いただきます」


 怖ぇよ。死神怖ぇ。


「ほれほれ準くん、あーん」


ん・・・むぐ。


・・・。


・・・。


かはぁ!!


 な、なんじゃこりゃあ・・・!!


 何とも言えないゲル質の食感。

 ワサビからワビとサビを抜いたかのような。

 なんともdistortionな(?)食べ物。


否、田部モノ!


【※今日の準くんは高熱の為、時々おかしくなっております。あしからず♪】


―――


 死神は本気で作ったらしく、とても不安そうにオレを見ている。


「ぅ・・・。ま、不味かった?」


 お、男として出して貰った手料理に出す回答は一つ・・・。


「美味いよ」


「ホント!?やったぜー!もっと食べて!ほれほれ!ほれほれほれほれ!」


「ん、ぐふっ、死神、ちょっ、シニガ・・・」


 あっ、やべ、意識が・・・


「あわわわわ!じ、準くん大丈夫!?ちょっ、大変だよぉぉぉ・・・」


――――――――


―――――


―――




・・・。


・・・。


はっ!


 いかん、寝てしまった。何で寝てたんだっけ?まぁいいや。


 気付けばオレは額にタオルを乗せており、頭の下には氷枕。・・・そして床で爆睡する死神。


 時計を見ると昼過ぎになっていた。まさかとは思うが今までコイツが看病してくれてたとか?

 うん、間違いないみたいだ。


 熱もだいぶ下がったらしい。オレは起きて死神に軽く布団を被せ、昼飯を作るべくキッチンへ向かった。


『あら里原くん、大丈夫なの?』


!!


 居間では白狐さんが座ってお茶を飲んでいた。

 お茶を飲んでいるということは狐面を外している状態であり、素顔は予想どおり相当綺麗。

 白くて小柄な顔に細い目。口紅が映えている。


「白狐さん!?なんでここに!?」


「暇ができたから里原くんの料理をご馳走になろうと思って来たのだけど、ロシュが大慌てでドタバタしているから何事かと思ったわよ〜」


「すみません」


「ロシュったら、私が看病を手伝おうか?って言ったら〈一人でやる!〉と言って聞かないのよ。それでロシュが失敗するといけないから残っていたの。どうやら問題は無かったみたいね」


「ご迷惑をおかけしました。あ、昼飯これから作ります」


 白狐さんは仮面を付けて立ち上がった。


「いえ、そろそろ午後の仕事に戻らなくてはいけないから」


「え!?すみません、わざわざ来てもらったのに」


「いいのよ。その代わり、今度来たときはいっぱい食べちゃうわよっ」


「ははっ。お待ちしてます」


 こうして白狐さんは帰って行った。

オレの料理食べにわざわざ来てくれるなんて、光栄以外の何物でもないぞ。


 そんなこんなで昼飯を作っていると・・・


バタン!


ドドドドド


「準くん!?」


死神が居間まで走ってきた。


「おー死神、起きたか」


「準くん熱は!?」


「うん、だいぶ下がったよ。ありがとな、看病してくれてたんだろ?」


「ぅ・・・な、なんのことかな?」


何でそこでウソをつく?


「あぁそうですとも!私ことロシュケンプライメーダ・ヘルツェモナイーグルスペカタマラス七世が看病をしましたともさ!!」


何でそこでキレる?


「ま、いいや。準くん、あまり無理しちゃダメだよっ」


「はいはい」


 それから死神は気遣ってくれているのか、いつもは腰にぶらさがるはずが今回は隣に立ち、人差し指を唇の端に当ててオレが昼飯を作る様子をおとなしく見ていた。

 今度正しい雑炊の作り方を教えてやろう。


・・・あれ?


雑炊?


なんだっけ雑炊って。いかん、うっすら記憶が飛んでいる。


 ちなみにこの日の昼食は、作っている間死神が30秒に一回のペースで摘み食いをしやがったのでだいぶ量が少なくなってしまった。


「おい準くん!なんだね今日の昼食は!少ないにも程があるでしょうが!」


「今言ったのはこの口かぁぁぁぁ!?」


「むぃーーー!ほえんらはい(ごめんなさい)!」


 でもなんだかんだ言ってこの日の死神はよく働いてくれた。うん、それはもう病人を気遣う気持ちがひしひしと伝わってきたよ。


 皿洗いは五枚割ってくれたし、洗濯物も衣類を七枚ベランダから落としてくれたし、風呂掃除も水遊びになったし、あげく渡瀬呼びやがったし。


 というわけで死神の面倒は渡瀬に任せ、オレは居間に布団を敷いて寝そべっていた。


「里原くん、風邪大丈夫?」


「大丈夫。死神の看病のおかげでな」


 死神がへへへーっ、と照れ笑いする。


「よっしゃ!由良ちゃん、今日も声優になる特訓だよっ」


「望むところです!」


外でやれ。


――――――――


『あぁ《由良ミオ》。・・・うーん、やっぱ《ラミオ》』


(セリフの途中で名前変更!?つーかラミオって何だ?)


(・・・。)


(あ、《ロミオ》!?無理があるだろうが!)


『準くんうるさいよっ』


(すみません)


『じゃあ気を取り直して。あぁラミオ、あなたはどうしてラミオなの?』


『うぅ〜ん、僕に聞かれても答えに困っちゃうナリ〜』


(渡瀬ぇぇぇ!そのキャラは何だ!!)


『何ですって!?じゃあラミオはラミオであってラミオじゃないのね!?』


(何言ってんだ)


『ち、違うんだ!そうじゃないんだよ《ジュリエット死神》!』


(なんか芸名みたいだ)


『じゃあなんだというの!?毎晩あなたは何故私に会いに来るの!?私には理解できない!教えてよラミオ!!』


(白熱した演技だ)


『うぅ〜ん、僕に聞かれても答えに困っちゃうナリ〜』


(テメーもう帰れ)


『あ、あなたラミオじゃないわね!?』



『フフッ、やっと気付いたか』


(まさかの急展開!)


『貴様の言う通り、我はラミオであってラミオにあらず!我の本当の名は《ライチミックスオレ》!』


(無理矢理だな)


『はっ!略して《ラミオ》だ!!』


(どうでもいい)


『あなたがライチミックスオレだということは、もう既に《彼》が動き始めているという事ね?』


『その通り。《彼》と《あの方》が《あの力》を手に入れる日は近い』


(無駄に伏線引きまくってんじゃねぇよ)




『そう。それならばラミオ、あなたを行かせるわけにはいかないわ!』


『フッ、これも必然か・・・。剣を抜けジュリエット!!』


『ごめんラミオ!剣忘れちゃった!どうしよう!』


『うぅ〜ん、僕に聞かれても答えに困っちゃうナリ〜』


(こいつら、毎回最初と最後でストーリーが大きく変わりやがる)


―――――――


 死神と渡瀬の戦いは佳境を迎えているらしく、例のごとくついていけなくなったオレはテレビを見ながらコーヒーを口に運んでいた。


 テレビには夏らしく麦茶やらエアコンやらの宣伝が頻繁に出てきている。


・・・そろそろ夏休みかぁ。


 死神がまた何か言いだしそうだなぁ。今のうちに風邪をひいておいて良かったのかもしれない。


「コホンコホン!」


「死神ちゃん大丈夫?」


「うぅ〜、風邪ひいたかも・・・」


・・・マジかよ。

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