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死神といっしょ!  作者: 是音
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第52話 死神と社長と秘書

今日は地獄に呼ばれました。夜叉さん曰く、《お茶会》らしいです。

お茶会なんて名目だけで、本当は閻魔さんがサボりたいが為に開いただけの、まぁ《まったり会話しようぜ里原、ロシュ》的な意味合いだろう。


で、今オレと死神はエリート餓鬼によって地獄旅館の和室の一つに案内されている。

大会によってボロボロになった筈の旅館は即修理が完了したらしく、今は普通にいつも通りの騒がしさを保っていた。


『お久しぶりです里原様、死神様。大会の時はお世話になりました』


前を歩くエリート餓鬼はそんなことを言う。


『あ。私、里原様に倒された餓鬼の一人です。覚えていらっしゃいませんか?顔面に廻し蹴り一発・・・』


思い出した。


「すみません、あの時はやり過ぎました」


『いえいえ!むしろ私は自慢なんですよ。優勝ペアと戦っただなんて』


オレなんかで申し訳ない気もするが・・・。


「自慢しまくっちゃって良いよ餓鬼ちゃん!」


ふわふわと浮く死神はエリート餓鬼の肩を叩きながら言う。エリート餓鬼は照れるような仕草を一瞬見せたが、すぐに背筋を伸ばした。こういうところはさすがだと思う。


『着きました。ごゆっくりどうぞ』


エリート餓鬼に襖を開けられ、オレと死神は畳敷きの和室へ入った。


「よう里原、ロシュ!よく来たな!フハハハハ」

「こんにちは里原くん、ロシュ」


閻魔さんと、その監視役であろう白狐さんが座っていた。

さらにもう一人。


『ホホホホホ、お二人共お元気そうで』


・・・。


笑い方でもうお分りでしょう。


「あー!《ビジョー》!何でここにいるの〜!?」


ビジョー!?


「ホホホホホ、略されてしまいましたか。でもなんか良いですねビジョー。ホホホホホ!!」


ウサギ頭で白スーツの奇人ラビット・ジョーカーがそこにいた。


うん、やっぱり頭が可愛い。




「何でジョーカーさんが?」


「おー。ラビットは魔導社の社長だろ?だからたまに俺様とこうやって話す機会があるのさ」


ふぅん。


「ホホホホホ、いつもごひいきにして頂き感謝していますよ閻魔」


実はこの人、結構凄いのかもしれない。いや実際凄いのか。魔導社の社長だし。

ジョーカーさんは正座しながら紅茶を飲んでいる。


「準くん準くん」


死神がオレの裾を引っ張る。


「なんだ?」


「この間やったスゴロクもね、魔導社製なんだよっ」


・・・。


・・・。


「このクソウサギ野郎ぉぉぉぉ!余計なもん作ってんじゃねぇぇぇぇ!!」


オレは全力でウサギの被り物を引っ張った。


「のぉぉぉぉ!!いけません里原様!ぬ、抜けます抜けますーーーー!」


「ビジョーのバカァァァァ!!」


「のぉぉぉぉ!!し、死神様まで!ちょっ、登場早々に素顔を出すわけにはいけませんーーーー!」


ジョーカーさんは必死に頭を押さえ、オレと死神はそれぞれ一本ずつ耳を引っ張っている。


「え、閻魔!白狐!助けてください!!」


「フハハハハ、俺様もラビットの素顔を見たいと思っていたんだ」


「私もよジョーカー」


「ど、動物虐待でございます!!」


テメーは違うだろ!


「シャ、《シャドー》!なんとかなさい!」


すると突然ジョーカーさんの影から黒い人形が飛び出した。本当に真っ黒な人のシルエットとしか言いようがない。

シルエットから見ると女性らしく、背が高くて髪も長い。

真っ黒な顔部分に三日月型の赤い裂け目ができた。どうやら口を開いたらしい。


「シャドー、この方々を・・・」

『社長、眠いです〜。つーか呼び出されると迷惑です〜。早く死ねです〜。・・・うん、死ねです〜。あ、死ぬときは一応連絡下さいね〜。爆笑しますから』


なんだこの毒舌野郎は!


『てなわけでドンマ〜イ』


シャドーとかいう奴(性別女)はジョーカーさんの肩をポンと叩いて再び影の中に入っていった。


「あの役立たずの秘書めぇぇぇぇ!!」


だが死神はシャドーに興味津々になり、ジョーカーさんの影をペタペタ触っていた。

オレも我に返り、笑いながらやりとりを見ていた閻魔さんと白狐さんの隣に座る。


「閻魔さん、なんですか今のは?」


「シャドーか?アイツは魔導社の社長秘書だ。社長のラビットでさえもイジリ倒す、その名の通り《影の社長》とか言われている奴だよ」


うわぁ、すげぇ。


ジョーカーさんは被り物を直し、死神はその影に向かって

「おーい」

とか言っている。


「じゃ、お茶でも飲みましょう里原くん」


白狐さんが日本茶を出してくれた。


「閻魔ったら相変わらずサボってばっかりいるのよ。あなたからも何か言ってあげて里原くん」


「んもぅ、閻魔ったら相変わらず美男子でモテてばっかりいるのよ。あなたからも何か言ってあげて里原くん。フハハハハ!!」


ドスッ!バキッ!ゴッ!ガスガスッ!!


う、うわぁ・・・。


「ぐはぁ・・・」


のびてしまった閻魔さんは放っておき、オレと白狐さんは死神達の様子を見ることにした。



よっぽどシャドーが気になるのか、ずっとジョーカーさんの影を触ったり顔を近付けたりしている。


「ねぇビジョーさん!シャドーを起こしてよ!」


「ホホホホホ、かしこまりました」


ジョーカーさんは指をパチンと鳴らし、小さな人形の音楽隊を呼び出した。


社長すげぇ。


人形達はドンチャン騒ぎを始める。


〈ドンドン♪ジャカジャカ♪パフパフ〜♪〉


「さぁ歌いましょう死神様!《パッパパヤパヤあほシャドー♪》」


おい。


死神は楽器を鳴らす人形達に合わせてジョーカーさんと歌う。


「アハハハハ!《パッパパヤパヤあほシャドー♪》」


「ホホホホホ!《パッパパヤパヤばかシャドー♪》」


「アハハハハ!《パッパパヤパヤばかシャドー♪》」


「ホホホホホ!《パッパパヤパヤ愚劣シャドー♪》」


「アハハハハ!《パッパパヤパヤ愚劣・外道・野蛮・寄生虫・ビタミンB1・シャドー♪》」


『ウフフフフ!《パッパパヤパヤ・・・殺すぞ小娘》』


「ひぇっ」


突然現れたシャドーにビビッた死神は瞬間的にオレと白狐さんの後ろに隠れた。


「シャドー、ロシュはあなたと遊びたかっただけなのよ」


白狐さんのフォローで、社長のウサギ頭をバシバシ叩いていた真っ黒な影はこちらを向いた。


『ん〜、眠気覚めちゃったし、仕方ないですな〜。んぁ、そこの死神可愛いですな〜』


どうやらシャドーが本気で毒舌を繰り出すのはジョーカーさんの時だけらしい。普段は優しいのだそうな。


「ほら死神、遊んでもらえ」


「やったぜー!」


死神とシャドーは人形達と一緒に鬼ごっこを始めた。楽しそうだなオイ。


「う〜ん、あれ?何で俺様寝てたんだ?」


閻魔さんの記憶が軽く飛んでいる。


「そういえば夜叉さんとカブキさんは?」



「ん、おー。あいつらならそろそろ来るぞ」


しばらく閻魔さんと白狐さんと談話をしながらまったりしていると、夜叉さんとカブキさんが襖を開けて現れた。

何か担いでいる。


『いやー、遅れて申し訳ない里原殿』

『アッハハハハ!久しぶりだなぁ里原〜!』


「お久しぶりです。なに担いでいるんですか?」


二人が中へ入ってくると、それが何なのかすぐにわかった。


「日本ではもうすぐ七夕ですものね」


と白狐さん。


そう。二人が協力して運んできたのは大きな笹だった。

そっかぁ、そういえばもう七夕の時期だよな。


「フハハハハ!里原、お前達の為に用意したんだ。持ってけ持ってけ」


うおー、オレ達の為に!?


「有難うございます!閻魔さん、白狐さん。それに夜叉さんとカブキさんも」


四人はそれぞれ〈構わない〉というジェスチャーを返してくれた。


壁に立て掛けられた背の高い笹を見上げる。クリスマスツリーみたいだ。


「おーい死神!閻魔さん達が笹をくれたぞー!」


鬼ごっこを終え、シャドーとジョーカーさんの前でノートに絵を描いていた死神は、オレの声を聞いて笹を見つけると、急いで駆け寄ってきた。

後ろからシャドーとジョーカーさんも〈これは立派だ〉と近づいてくる。


「うひゃぁ〜!おっきいねぇ!ありがと閻魔さん!」


閻魔さんは死神の隣に立って一緒に笹を見る。


「フハハハハ、いいってことよ。これだけのモンを手に入れるのは結構苦労したんだぜぇ〜?」


わしゃわしゃと閻魔さんに頭を撫でられた死神は嬉しそうに笹を見上げていた。


閻魔さんといい、デーモンさんやヴァルキュリアさんといい、死神達が我が子のように可愛いらしい。

無論アジア三強が死神やメアちゃん達に対して結局最後は甘くなってしまうのも、やはり愛情が故なんだろうなぁ。


ほんっとに仲が良いんだな地獄は。


「今日呼んだのはコレを渡す目的もあったのよ」


予想外の収穫だよ。


死神はジョーカーさんに肩車してもらい、片手でウサギ頭の片耳を掴みながら、もう片方の手で笹の枝のてっぺんを触って遊び、シャドーも表情はわからないが興味深そうに笹の葉を指でいじっていた。


『あ痛っ!これは見事な切れ味です〜。社長の首もスパッと切れますかねぇ?動脈を上手いこと切れば・・・』


怖い発想すんなよシャドー。


「ホホホホホ、その前にアナタをクビにしますよ。退職金は0です。更にアナタがツケにしていた多額の社員食堂代を請求しますし、監視カメラで撮影したアナタの〈ピー〉を〈バキュン〉した例の〈ドカーン〉的行動を社員全員に大暴露致します」


社長も負けてねぇ。


『・・・最速で社長を殺らなきゃいけないんですね』


違うだろ。


「おや?そろそろ時間ですか」


懐中時計を見ながらジョーカーさんが呟く。


「申し訳ございません。我々はここで失礼させて頂きます。何分多忙な身でして、これから天国の方へ向かわねばなりませんので」


そうか。魔導社は天国も商売相手だったっけ。


「おーラビット、また来いよな。魔列車ができてから前より忙しくなりやがって」


「幸せなことでございますよ。ホホホホホ」




ジョーカーさんはパチンと指を鳴らし、ゲートを開いた。


「さ、行きますよシャドー。では里原様、死神様、またゆっくりとお茶しましょう」


『あぃあぃ〜、また会いましょうです〜』


こうして魔導社の二人は去っていった。

手を振る死神の意識はやはり笹に向いている。


「おっきい笹だねぇ準くん!」


「そうだな」


そろそろオレ達も帰るかね。


「フハハハハ、持って帰れるか里原?」


「はい、大丈夫だと思います」


オレは笹を担ぎ上げた。


「相変わらずのパワーですな里原殿」


「アッハハハハ!やっぱ一度は手合せしておきたいよな!」


「戦闘バカなカブキは放っておきなさいな里原くん」


「フッ、ダイエットバカの白狐に言われたくねぇな」


この瞬間、部屋の中は大乱闘が始まってしまった為、オレと死神はいそいそと帰ることにした。


「カブキ!アンタまた仕事を私の所に回したでしょう!」

「知らねぇなぁ」


「まぁまぁ白狐、カブキ、落ち着きなさい」

「フハハハハそうだぞ二人共」


「夜叉と閻魔も!経費で合コン行くの止めなさい!!」

「・・・そればっかりは」

「・・・譲れねぇなぁ」


バキィ!ボン!ドカーン!


・・・仲が良いなぁ。


―――――――


部屋に戻ったオレと死神はすぐに笹をベランダに飾った。


死神が空腹を訴えた為、すぐに晩飯。


「いやー、今日は良い収穫がありましたな」


「あれはさすがにオレも驚いたぞ」


「みんな誘おうねっ」


「だな」


明日は買い物に行くか。短冊とか風鈴とか買わされそうだ。あ、死神は浴衣が欲しいって言ってたな。


七夕で笹を用意して短冊飾るのは初めてだなぁ。

今年は初めてがいっぱいだ。


「準くん!笹にドクロ飾ろうドクロ!百個!」


百個!?


死神らしいけどやめとけ。

次回は七月七日、七夕です♪

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