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死神といっしょ!  作者: 是音
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第51話 死神と双六

「あなたがぁ〜、トゥキだからぁ〜(好きだからぁ〜)」


よくわからんが、とりあえず物真似らしいです。

というか、昨日からそればっかり言ってる。

昨日ウチに来てたナイトメアから聞くところによると結構古めのネタらしいが、ダビングしていたビデオにネタ元が入っていたらしい。


「準くんがぁ〜、トゥキだからぁ〜」


・・・。


「トゥキだからぁ〜!」


ちなみにオレは昼食を作っている最中であり、死神は腰にぶらさがる例のスタイルでセリフを連呼している。


「カルボナーラがぁ〜、トゥキだからぁ〜!」


トマトソース作っちまったじゃねぇか!


「カルボナーラがぁ〜・・・」

「悪いが今日はトマトソースだ」


「カルボナーラがぁ〜・・・」

「ダメだ」


「準くんがぁ〜・・・」

「機嫌とってもダメだ」


「・・・」


「・・・」


「トマトソースがぁ〜、トゥキだからぁ〜!」


よしよし。

カルボナーラはまた今度な。


昨日からこんな感じ。よく飽きないなと思う。


昼食をテーブルに置いても調子は変わらなかった。


「トマトソースがぁ〜、トゥキだからぁ〜!」

「わかったわかった。飽きないのか?」


「うーん、あとチョットで飽きそう」


あとチョットの辛抱か。


「もぐもぐ、ほまほほーふ(トマトソース)がぁ〜・・・」

「黙って食えよ」


とにかくハマってしまったらしい。昨日のナイトメアもとことん呆れて帰っていったし。

死神を見ると凄まじい勢いでパスタを食べている。


「ほら口元〜、ちゃんと拭けよ」


「ぬ〜っ。そんな準くんがぁ〜、トゥキだからぁ〜!」


もういいっつーの。


「準くん準くん!」


「ん?」


「そんな死神がぁ〜・・・」


・・・続けろってか?


「セクシーな死神がぁ〜・・・」


・・・。


「はにかみ屋な死神がぁ〜・・・」


絶対言わねー。


「才色兼備な死神がぁ〜・・・」


言わねぇ。言わねぇ。


「・・・」


「・・・」


「そろそろ部屋中に地獄蟲を召喚しそうな死神がぁ〜・・・」


「トゥキだからぁ〜!!」


言っちまったオレーーー!


だって仕方ねえだろ!?地獄蟲だぜ!?蟲はダメだぁ。マジでダメだって。


「わはーっ、準くんはぁ〜、死神がぁ〜、トゥキだからぁ〜!」


なんか悔しいなチキショー。

どうやらこれで死神は飽きたらしい。丸一日物真似にハマり続けるのもすげぇな。




「今日はなにしよっかぁ準くん?」


オレはお前の物真似だけで十分疲れたぞ。


「ん〜、じゃあ部屋の掃除でも・・・」


「やだ!」


そうですか。

死神はどこからか妙なボードを取り出してきた。


「よっしゃ!スゴロクやろう準くん!」


超イヤ。

死神が持ってきたスゴロクなんて、生きてゴールできるかわかんねぇもん。


・・・。


どうせ拒否権なんて無いんだけどね!


―――――――――


死神が持ってきたスゴロクは、どうやら地獄でヒットしたことのあるものらしく、基本的に普通のスゴロクと変わり無い。


と思っていた。


「さぁ準くんからだよっサイコロ振って!」


「はいはい」


オレはサイコロをボードの上に転がす。


コロン



《0》



「何でサイコロに0があんだよ!!」


「え〜?地獄では普通だよぉ」


どうやら地獄のサイコロには6が無いらしい。どういう文化の違いだ。


「アハハハハ!準くん0だからそのままね!」


仕方ねぇな。

笑いながら次に死神がサイコロを振る。


コロン



《0》


「ギャー!」



ざまぁみやがれ。

つーか進まねぇよ。


オレの番だ。


コロン



《5》


お、最大値だ。

駒を進め、行き着いたマスの文を読む。



【君は今、こうして娯楽を満喫している。あぁ羨ましい羨ましい。良いご身分だな】



ぅわぁ・・・。


すげぇ申し訳ない気持ちになった。

なんだこの文。



「アハハハハ!準くん言われてやんの〜!じゃ、次は私ねっ」


元気いっぱいの死神がサイコロを振る。


コロン



《3》


「うーん、3かぁ」


死神は駒を三つ進めた。しかし先は長そうだな。普通に人生ゲームあたりを提案すれば良かったよ。最大値が5で、0があるって時点で格段に進行速度は遅くなるってのに。ま、いいや。


「今晩のメニューを賭けた戦いだよっ」


なんだそりゃ。死神にしてみればそれは本気の表れらしい。


「きっと《あなたのボディはグラマラスすぎます!》って文だよ!」


どこから湧いてくる自信だ。




【グラマラス?笑わせてくれる】



「ぶっ壊してやるこのクソボードぉぉぉ!!!」


お前が持ち出したんだろ!


なんとか死神を落ち着かせたオレはサイコロを手に取った。しかし何だよこの卑屈な文は・・・。



コロン



《4》


4っと。

さて次の文は?うーむ、どうせ卑屈な文なんだろうがな。



【どうせ今度も卑屈な文なんだろうとか思った人の為に。あえて何も言わないでおいてやるよ。ハッ】



うっぜぇ!!

ホントにぶっ壊したくなってきた!


「うぬ〜!次は私ねっ!」



死神がサイコロを振る。


コロン



《0》



【グラマラス?笑わせてくれる】



「どチキショー!!」


ハハハハ!二回も言われてるよ。

さて、次はオレの番だ。


コロン



《3》


3っと。なになに?



【君にかかれば僕なんて一発で皆の笑い者さ】



今すげぇイラッとした。


ゴールに近づくにつれて気分が悪くなっていく。


「おりゃー!私の番!」



今のところ三つしか進んでいない死神がサイコロを振った。


コロ〜ン


《5》


「やったぜー!」


死神は〈いち、にぃ、さん、しぃ・・・〉とご機嫌で駒を進めた。スゴロクって一回休みとか、三つ戻るとか、そういうもんじゃなかったっけ?

さて、死神のマスの文は・・・



【あ。ちょっとトイレ】



「知ったこっちゃないわよぉぉぉ!!!」


「わわわわ。お、落ち着け死神!落ち着けって!」




今にも我が家ごとスゴロクを粉砕せんとばかりに、大鎌を振り上げる死神を必死に抑える。しっかし、マジで性格悪ぃなこのスゴロク。




――――1時間後



「・・・」


「・・・」


「準くん」


「何だ?」


「死神は他人を信じられなくなりそうです」


「・・・オレも」


ゴールし終えたオレ達のテンションは相当低かった。卑屈な言葉を何度も浴び、その度怒り狂う死神をなだめなければいけなかったし、逆に怒り狂うオレを死神がなだめてたりもした。

ゴールしたところで嬉しくもなかったし、何より最後のマスの文


【ゴールおめでとう。何か得たものは?あるわけねぇよな。あるとしたら《無駄な時間》?クハハッ】



これを見た直後、オレと死神はこのスゴロクを、完膚なきまでに、原型なんて想像がつかないくらいに、粉々に破壊した。


モノは大切にしなければいけないとは思うが、破壊しなければいけないモノも存在すると思う。


で、結局口直しというわけじゃないが、その後人生ゲーム(TVゲーム)をやって盛り上がったり。


二人だけで盛り上がるものかと思ってしまうが、喜怒哀楽の激しい死神が相手なのですげぇ盛り上がった。つーか、激しく運の良いコイツは速攻で大金持ちと化し、借金返済に苦しむオレを尻目にギャンブルで財産を増やしまくり、職業もあっさりと昇進を決めてウハウハだった。


ま、そんな運の良さも長くは続かず、最後の最後に株で大失敗してベソをかいてたがな。人生そううまくはいかないってこった。


ちなみに余談だが、オレは大して興味が無かったのでウチにはもともとTVゲームなんてものは無かった。つまりゲーム機等は全て死神の要望ワガママで買ったものであり、この人生ゲームは勿論、その他ゲームソフト(《戦略殺戮機動兵器といっしょ!》含む)も全て死神に買わされたモノである。


色々なジャンルのゲームを買わされたが、最近気付いた事がある。それは全てのソフトが共通して《多人数プレイ》であるということだ。


・・・コイツらしいと思う。


おかげで毎回付き合わされるわけだが。それでもなんだかんだ言って意外に楽しんでるオレがいたりする。


「ねぇねぇ準くん!今度は恋愛ゲーム買おうよ!」


「恋愛ゲーム?」


「うん!タイトルは《浮気戦略・修羅場ババーン》だよ!!」


・・・やめれ。

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