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死神といっしょ!  作者: 是音
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第46話 死神をおんぶ

何故か今朝の死神は深刻そうに居間に正座している。


「うーん・・・足りない」


さっきからそればっかり呟いている。

見かねたオレは死神の前に座って顔を覗き込む。


「何が足りないって?悪いもん食ったか?」


「準くんも私には足りないと思うでしょ?」


「何が?」


「《HP》」


は?HP?ヒットポイント?


・・・。


あ、わかった。


「どうせ《ハイパーピンチ》とかわけわかんねぇ事言うんだろ?」


「準くん」


「ん?」


「空気読みなよ」


ぐはぁ!

コイツに言われちゃオレも終わりだ!


「じゃあなんなんだよ?」


「《豊満バストポイント》だよ!」


「うん、そかそか。朝飯できたぞ」


「ま、まさかのスルー!?」


付き合ってられるか。朝飯食お。


「えー!準くん、もっと心配してくれないの!?」


それが狙いの行動か。


「早く朝飯にするぞ!」


「はぁ〜い・・・うひゃぁ〜!あ、足が痺れた〜!」

何やってんだよ。


「うひゃぁ〜!あ、歩けないぃ〜!準くん助けて〜!」


な、なんかすっげぇ面白い動きだ。

オレの腰に掴まった本人は本気なんだろうが、立とうとしても足が痺れて立てないらしい。


仕方なく死神に手を差し伸べる。



グキッ


「みぎゃぁぁぁぁぁ!足くじいたぁぁぁぁぁ!」


――――――

――――――



「むすー」


足に湿布を貼った死神は大変機嫌が悪いようです。

頬を膨らませて朝飯を食べている。


「もぅっ!準くんが早く助けてくれないからだよ!」


「悪かった悪かった」


どうやら怒りをどこにぶつけたらいいのかわからず、オレに矛先を向けたらしい。


「む〜っ!準くんおかわり!」


「はいはい」


これで四杯目・・・。


オレは死神が朝食を食べ終わるのを見届けると、洗濯物を干そうと席を立った。


ドサッ


・・・。


背中に負荷がかかる。



「何の真似だ死神?」


「だって私歩けないもん!今日これでいて良いでしょっ!?」


オレに今日一日おんぶし続けろとさ。


・・・浮けよ。


なんて言えない。


「さぁ遊びに行こ〜う!」


ふざけんな。


いつの間にか機嫌良くなってる・・・。


無茶な要求を突き付けられ、拒否権なんぞお構いなしの死神のテンションに押されたオレは黒ローブを背負いながら朝の仕事を終え、仕方なく外へ出た。



遊びに行こうとはまたアバウトな提案・・・


痛だだだだだ!


「髪を引っ張るな!」


「襟足長めなんだねぇ準くん!」


何の観察だ。


今度はピアスをいじりだした。


「びよーん!痛い?」


それなりに弱めに引っ張っているようだが、別にピアスは引っ張られてもそんなに痛くない。


「じゃあもっとびよーん!」


「・・・さすがに痛いぞ」


これじゃただの散歩だ。しかも歩いてるのはオレだけ。


「お前一体何がしたいんだ?」


「・・・さあ?」


振り落とすぞ。


「うーん、じゃあ私が昔話をしてあげるね」


「昔話?」


「うん!《襟足 長子のピアス》!」


それ絶対今考えただろ。


「むかぁしむかし・・・」


話始めやがった!


――――――――


むかぁしむかし・・・かな?


うーん


・・・。


さぁいきん最近あるところに・・・


(早くも昔という設定を捨てたか)


《襟足 長子》という、それはそれは微妙な女の人が住んでいました。


(一言余計だ)


その微妙っぷりは凄まじく、


(どっちだ)


長子と街ですれ違うと、15人に1人の男性が振り向くか否かってゆぅ程度の微妙な子でした。


(微妙だな)


けれども、そんな長子には特技がありました!やるじゃん長子!!ヒューヒュー!


(おー、何か一つでも特技があるのは凄いよな)



《一輪車》です。


(あぁ、微妙・・・)



彼女は毎日一輪車で街を走り回ります。


(それで15人に1人しか振り向かねぇの!?)


きちんとヘルメット、肘当て、膝当ても装着していますよ。全部ピンクで統一です!


(それでも15人に1人しか振り向かねぇの!?)



だって長子は82歳。


(だれか保護しろよ!つーか完璧に見て見ぬふりだろ男性15人!)


あっ、間違えた!今はあっちの長子じゃなかった!

あっちの82歳の長子の特技は確か竹ヤリ・・・ゲフン!


(長子多数存在説が浮上・・・)


あー、こっちの長子は27歳でした。


(それでも一輪車は変だ・・・)


ある時長子は異常に気付きました。


(やっとか・・・)



一輪車だけが黄色だったのです。


(くたばれテメー)


長子は焦りました。色を統一しなければ!と。

そこで彼女はホームセンターまで足、もとい一輪車を運びます。


(やっぱり移動はそれか)


長子は買いましたよ。

ええ買いましたとも!



(何で語り手が怒ってんだ?)




サボテンを。


(一輪車の色は!?)


まぁ、そこらへんは妥協です。


(そうですか)


さて、サボテンを買った長子はある店員さんに出会いました。


その店員さんはタバコを吸って暇そうにしています。ムカついた長子は店員さんのお尻にサボテンを突き刺しました!


(なんで!?)


長子は魂をこめて叫びます。



『サボっテンじゃねぇぇぇ!』


(B級駄洒落キター!)



こうして店員をこらしめた長子は・・・


ぷふっ


アハハハハ!《サボっテンじゃねぇ》だってさ!ゥアッハハハハ!


(語り手がツボにハマってんじゃねぇよ)



HAHAHAHAHA!!ナガコ微妙ーー!!


(話進めろよ!)


ハァ・・・えっと、はいはい。


・・・めんどいなぁ。


あー、多分長子は店員さんと幸せになりましたとさ。終わり。


(最後適当かよ!)


―――――


「・・・と、まぁこんな感じだよ準くん!」


どんな感じだ。




「で、マジでお前どこ行きたいんだ?」


「うーん」


やっぱり何の案も無しに連れ出したのかよ。



背中に背負った爆弾とアホな話をしながら歩いているうちに商店街へ辿り着いた。

あまりここら辺は来ないんだが、活気に溢れている。


『ヘイらっしゃい!今なら不景気で白菜が高いよ高いよ〜!』


逆効果だろそれ!


『いやいや、こっちのサンマの方が全然高いぜ!なんせ来月には店を畳んじまいそうな状況だ!』


頑張れよ魚屋!


「聞いた?準くん!買ってあげようよ〜っ」


あいにく昨日買い出しに行ったばかりだ・・・。


『さぁさぁ・・・こっちは女房に逃げられて破産寸前だぁ・・・腐ったリンゴはいらんかね〜・・・』


果物屋ヤベー!!

本当に大丈夫かよ!?


「見て見て準くん!」


死神が看板を指差す。


・・・。


【この商店街は全てフィクションです】


ちょっとうまい事言ってんじゃねぇよ!!



二度と来るかクレイジー商店街め。


ズル・・・


おっと


今まで掴まっていた死神の手から突然力が無くなり、背中からずり落ちそうになったのでバランスを整える。


「おい、ちゃんと掴まって・・・」


「すーすー」


えー!寝やがった!!


・・・お前が寝たら何しに出てきたんだかわかんねぇじゃん。


「すーすー」


・・・。


「ふっ、まぁいいか」


よっと


死神を背負い直したオレはそのまま帰路についた。

寝相の悪い死神を背負って無事に帰れるわけないんだけどね。


「ムニャ・・・ナガコ襟足長いんだねぇ・・・ムニャ」


痛てててて。

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