第44話 死神と準と支部長達
前回の続きです!
彩花さんとヴァンパイアどころか、危険視していた白狐さんとカブキさんまでリタイアとは。
七階からの階段を上りながらカキぴーの実況を聞く。
『さぁさぁ、《里原・死神》ペアももう八階だぁ!他のペアも急いで階段を駆け上るが間に合うかぁ!?』
さぁて、オレの予想では八階にいるのは《閻魔・夜叉》ペアで間違いない。最終関門であるあの人達さえ撃破すれば優勝は貰いだ。
「優勝♪優勝♪あとちょっと〜!」
上機嫌だな。
「死神、八階は何があるんだ?」
「《闘技場》だよっ!準くんも来たことあるよ」
・・・。
おー、思い出した。以前死神の冬休みの課題でカブキさんと戦うために訪れた場所か。結局戦わずじまいだったけど。
地獄旅館の八階だったとはな。
「さぁさぁ!階段を出たらすぐに闘技場だよっ!早く早く!」
「わかったから引っ張るな」
―――――
さぁ、気合いを入れて・・・階段を出たオレ達だったが
ギィン!
『コ、コノヤロー・・・!』
ん?
『夜叉!大丈夫か!?』
『申し訳ない、閻魔殿・・・』
・・・!?
なんだこりゃあ!?
闘技場の端、階段付近で座り込む夜叉さんがいる。おまけに着物は破れてるし身体中傷だらけだ。
「夜叉さん!?」
『おぉ、里原殿に死神殿・・・』
夜叉さんは力なく座り込み、地面に突き刺した刀を支えにしていた。
「あれぇ?夜叉さんどうしたの?」
夜叉さんに駆け寄る死神。それよりオレは闘技場の中心に意識が行った。
閻魔さんが一人で応戦する相手ペアに興味があったのだ。
『にぎぎぎぎ・・・何でお前らが参加してんだ・・・!』
閻魔さんと剣を絡ませているのは
銀色の西洋甲冑{かっちゅう}つまり鎧に全身を包み、その上に真っ白な肩当てや胸当て等の装飾が施され、スカートのような布を腰に巻いた人。
あれはおそらく・・・
『答えろよヴァルキュリア』
やっぱり。顔は兜{かぶと}でわからないが、腕や足が細いし、今までの噂を聞くところでは女の人だ。
んでもう一人は・・・
「わぁーい!デーモンさぁん!!」
死神が巨大なヤツに走りよっていく。
デーモンね。身体はでかく、毛皮に包まれて獣みたいな奴だ。背中から大きな翼が生えている。
顔も超怖ぇ。真っ赤な宝石みたいな目に裂けた口。牙が突き出ている。おまけに頭からはねじれた二本の角ときた。
『おぉーー!ロシューー!会いたかったぞ〜!!』
なんだその性格は!!
死神とデーモンは生き離れになった親子の再会のように駆け寄る。
「デーモンさん久しぶり〜!」
『ロシュ、元気そうで何よりだ!メアやバンプも元気そうだなぁ!』
見た目と違ってスーパー良い人じゃねぇかデーモン。仮にも魔王って呼ばれてるんだろ。
・・・カキぴー、説明よろしく。
『な、なぁんと!今大会、他の支部の長が出場していたー!!《ヴァルキュリア・デーモン》ペアだぁ!!どうやら夜叉を倒したのはこの二人らしいぞぉ!』
久しぶりの再会で会話に花を咲かせる死神とデーモンは放っておく。
『これはアジア支部の大会だぞ!』
と閻魔。
〈でもオレは君に会えたから全然オッケー♪〉
この声はアホ魔剣だ。
『気分。閻魔、あなた弱すぎ』
この冷たい声はヴァルキュリアさん。
手に持っている聖剣は無言みたいだ。
『な、うるせぇ!奇襲で夜叉をやられちまって一人でお前等を相手してんだ!・・・って、あれ?デーモンは?』
閻魔さんは辺りを見回し、床に座り込んで話す死神とデーモン、そして観客化しているオレを見つけた。
『ちぃ!《里原・死神》ペアか!』
するとデーモンさんが片手を挙げてヴァルキュリアさんを呼ぶ。
『おーいヴァルキュリアー!』
『・・・何?』
『オレはリタイアするよ!ロシュ達の元気な姿を見られただけで大満足だ!』
『・・・了解』
良いお父さんみたいじゃねぇかデーモンさん!!
カキぴーが実況でデーモンさんのリタイアを告げた。そしてデーモンさんは立ち上がると夜叉さんを担ぎ上げ、
『オレは夜叉を医務室に連れていくよ。またなロシュ!』
「またねデーモンさん!」
デーモンさんは次にオレの所へやってきた。
でかいでかい!
『お前が里原かぁ。ロシュの面倒よろしくな』
「あ、はい」
デーモンさんは笑いながら階段を降りていった。
まぁ、この大会が終わったら話す機会があるだろう。
『夜叉、医務室に連れてってやるから辛抱しろ』
『かたじけない・・・』
『ワハハハハ!気にするな!』
心も身体も大きすぎだ。
おっと、それよりも閻魔さんとヴァルキュリアさんをどうするかだな。
「簡単だよ準くん!」
と死神。
「なんでだ?」
「今のうちに最上階まで駆け登ればオッケーだよ!」
なるほど。支部長対決は長引きそうだしな。
〈ヴァル、あの子達先に進むみたいよ?〉
!?
やはり喋ったか聖剣!
『・・・阻止』
ヴァルキュリアさんが一瞬で移動し、気付いたときにはオレ達の目の前で剣を振りかぶっていた。
やべぇ・・・
やっぱレベルが違いすぎるわ支部長クラスは。
『よっと』
!!
オレと死神は瞬間移動した閻魔さんに掴んで引っ張られ、ヴァルキュリアさんの剣を回避した。
『里原、ロシュ、優勝はくれてやる。今はアジア支部長として、ここでヨーロッパ支部長に負ける訳にはいかねぇんだ』
まぁ、そりゃそうだろうよ。アジア支部の大会でアジア支部長が他の支部長に負けるなんてことはあっちゃいけねぇ。プライドの高い閻魔さんなら尚更だ。
『いいだろヴァル?』
『・・・承諾』
頷くヴァルキュリアさん。
〈そういうことだぜ♪それよりエクスカリバー、今度合コンしない?〉
魔剣ドミニオンはいつまでも能天気だ。
〈合コンって何?〉
お、聖剣が食い付いた。
『私も知らない。多少興味有り』
ヴァルキュリアさんも食い付いた。つーか無口だな聖騎士。
『ま、今度連れてってやるぜ。とりあえず今はケリつけないとなぁ!!』
『同意』
一言返事な上に表情は兜でわからない。
「やったー!優勝くれるんだってさ!」
死神はぴょんぴょん飛び跳ねて喜んでいる。
一応オレ達が優勝なのか?
・・・腑に落ちねぇなぁ。
「貰えるモノは喜んで食いつかなきゃ準くん!」
なんだそのハングリー精神は?
カキぴーの実況が響き渡る。
『報告だぁ!どういう訳か先程八階への階段が破壊されていたのが確認されたぞぉ!?』
八階への階段・・・デーモンさんか?
『さらに閻魔・ヴァルキュリア、共にリタイア!つまり、現在八階にいる《里原・死神》ペアが優勝ということだーー!!』
だがオレと死神は目の前で繰り広げられる頂上決戦に意識を奪われていた。
オレは中継用のカメラを掴む。
「おいカキぴー・・・じゃなかった。《GAKI・P》!聞こえるか!?」
『おーっと、優勝ペアの一人、里原準からオレにメッセージだぁ!』
「オレ達よりこの対決を中継したほうが盛り上がるぜ?」
カメラを閻魔さんとヴァルキュリアさんに向ける。
『た、確かに。優勝は決定したが、この頂上決戦をみんなは見たいかぁい!?オレは見たいぜぇぇ!』
モニターに移る観客は凄まじい歓声でそれに答えた。決まりだな。
「じゃ、私達も見学しようぜぇ!」
「そうだな」
オレと死神は闘技場の隅に座り込んだ。
「ねぇ準くん」
「ん?」
「みんなコメディーだってこと忘れてるね!」
・・・本当だ。まぁみんなこの大会に関してはマジだったんだろ。
じゃあ今大会の締めに、支部長のマジ対決を見ようかね。
―――――――
『これは両者本気だぁ!魔剣ドミニオン、聖剣エクスカリバー、共に能力を解放したぞぉ!両者の魔力の高さが・・・
次回で大会編は終わりです!