第4話 死神と休日
今日は休日だ。オレにとっては非休日だ。
なぜなら……
「あっ、もしもしぃ!? わかるぅ? ロシュケンプライメーダ・ヘルツェモナイーグルスペカタマラス七世だよ〜! 元気してた? ん? 何で何でぇ? だってニンニク食べられるようになったって言ってたじゃん!! あっ、それよりさ、ジェイソンくんの話聞いた!? あの人ヨーグルトを……ゥアハハハハ!」
こいつがいるからだ。
しかも発言内容からは想像がつかないかもしれないが、死神です。変人です。食いしん坊です。
ちなみにこいつは今何をしているかというと、昔の友人に電話しているそうです。最近の話題は『ジェイソンくんのヨーグルト』らしい。笑ってるのが本人だけかと思ったら案外相手もウケてたり。
何故かオレの携帯電話使いこなしてるし。
「ふぅ、あー笑ったぁ! ねぇ準くん、話の内容聞きたい〜?」
「おう聞きたい」
「教えてあげな〜い!」
「うわ〜残念!悔しいなぁ〜」
別に聞きたかねぇよボロ雑巾が。
オレはこの死神をうまくコントロールする為に日夜研究しているのである。そしてあわよくばこの《脳みそ抽出してみたい死神ナンバー1》を地獄へ送り返す魂胆だ。
ピンポーン
ん? 誰だ?
オレは玄関付近に設置されている受話器をとってモニターを覗いた。このマンションは玄関が強化ガラスの自動ドアになっており、フロントにインターホンがついている。
「ちわー、三河屋ピザでぇーす! って、酒とピザを同時に頼むなバカヤロ!」
……ガチャ。
オレは受話器を置いた。
ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーン!
ん〜ノイローゼになりそう。オレは再び受話器をとった。
「ひどいなぁ里原クン! 人がせっかく遊びに来たっていうのにぃ!」
モニターに映っているのは背が高く、長めの黒髪で顔は可愛いと学校で評判な女の子。クラスメイトの[七崎 美香]だ。だがオレにとってはめんどくさいことこの上ない女で、関わりたくない奴ナンバー2だ。ちなみに最近ナンバー1にのしあがったのは勿論死神だ。
遊びに来てもらって悪いんだが、死神がいる部屋に上がらせるわけにもいかず、オレは丁重にお帰り頂くことに
ポチ
ガー
はいドアロック解除ボタン押しちゃったのね死神さん。今夜の晩飯に画鋲トッピングしとくからね。喉から出血する姿はたまらないよ。
モニターを見るとスキップで強化ガラスの自動ドアを通る美香が映っていた。
まぁ死神はオレ以外(優等生クン除く)には見えないんだし、大人しくしていてもらえばいいか。多分無理だけど……
「こんにちわぁ! 里原クン遊ぼぉう! 見てぇお菓子持ってきたんだよ!」
「おー、サンキュ。しかしお前も暇だよな」
「いいじゃない、里原クンだってどうせ暇でしょ〜?」
「まぁ暇だな。おっ、このお菓子旨そう!」
「でしょ〜、私のお薦めなんだから!あら、どうも」
「どうも、死神です。私も好きなんですよ。本当にこのお菓子美味しいですよねぇ」
「お前もそう思うか。あっ美香紹介するよ、こいつ死神っていう………てめぇ見えてんじゃねぇかコラァァァ!!!!!!」
目が飛び出そうだった。
――――――
「へぇ、地獄から? まぁ気持ちはわかるわよね、暑いっしょあそこ?」
「うん、そうなの。しかも私達ってローブじゃない? 暑いのなんのって。でも大鎌がヒンヤリして気持ち良いってゆぅか」
「あーわかるかも! いつもめんどくさく持ち歩いてる物がたまに役に立ったりして!」
「そうなのよ、アハハハ!」
「アハハハハ!」
アハハじゃねぇよクレイジー女。何でお前が地獄の気温知ってるんだよ。
おかしいよなこの展開。オレの読みでは見えない死神がイタズラしまくる予想だったのにな。
ってか何フツーに会話してんの? 美香も何か反応しろよ。
なんか知らんが意気投合した二人は長々と会話をし続けた。(九割オレの悪口だったらしい)
オレは美香が死神の相手をしてくれてたから寝ることにした。
「じゃあ暗くなってきたからもう帰るね」
「おぅ、気を付けて帰れよ」
「いいなぁ里原クン、こんな素敵な居候さんが家にいて。じゃあねぇ死神さん!」
バタン
「………」
「………」
「………。ポッ」
「照れてんじゃねぇよ!」
ビシッ
怒りの手刀を死神の後頭部にぶつけた。
「痛った〜い! さぁご飯ご飯♪」
関わりたくない奴ナンバー1とナンバー2が仲良くなってしまった……。しかも何で四話目で既にバレてんだよ。
「おい早くしろよぅ! 何? ボンボン息子は飯もろくに作れやしないのかい!? あれあれ困った世の中になったもんだよぉ」
カニ缶でもつっついてろ脳ミソ5ミリグラム女。
ちなみに今のは昨日見たドラマのセリフの応用らしい。
さてと、晩飯の支度始めるかね。
おっとその前に。
「死神さ〜ん。画鋲探してきてくんな〜い?」
「へ〜い」