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死神といっしょ!  作者: 是音
37/116

第37話 死神とTVゲーム

〈ズドドドド〉


〈ビシュン!〉


オレと死神はコントローラーを握り締め、朝からテレビ画面に向かいっぱなし。


「準くん右!右!援護してっ!」

「あいよ」


不覚にもテレビゲームにハマってしまったのだ。


「OK準くん!私が接近するよ!」

「後方は任せろ」


昨日学校で美香から

「面白いゲームソフトがある」

と紹介された死神は、すぐにオレに買いに行くようにねだり、テレビゲームなんかに夢中になるものなのかと渋々買ってきてやると、ヤツはものの見事にゲームの虜になってしまった。

さらに一緒にやろうとまで言い出しやがったので、これも渋々付き合ってやったところ・・・


これが楽しい。


オレまで虜になってしまった。


このゲームはどうやらオンラインゲームのようで、世界中のプレイヤーがリアルタイムでゲームの世界を楽しむことができる。


というわけでタイピング用にキーボードを購入。


画面にはチームメンバーのコメントが出ていた。


『良い動きだ』

『初心者とは思えないよ!』

『なかなかやるわね』


どこの誰だかわからない赤の他人とチームを組むシステムだ。


おっと、まだどんなゲームなのか説明がまだだった。


―――


『戦略殺戮機動兵器といっしょ!』


というシビアなのかチャラけているのかわからないタイトル。


名前でお分りだと思うが、ロボットアクションゲームだ。右腕、左腕、バックユニットに多種多様の武器を装備し、機体も独自のプログラミングで設計できるというかなり本格的なものである。

ゲームの舞台は遥か未来の荒廃して地表の大半が砂漠化し、戦争の絶えない地球。らしい。

主人公は数多くある派閥のどれかに所属し、同じ派閥の仲間と五人でチームを組んで領地争いをする激戦区へ赴く。というシステムである。オンラインなのでその世界の広大さは全地域を見るだけでもかなり時間が掛かる程。


で、オレ達が所属している派閥なのだが、


《藤原組》という完全にあっち系な名前の派閥である。

しかし逆に外国人ウケは良いらしく、死神も面白いと言って所属したのだった。

さらに機体のステータスは攻撃・守備・速さの三つに別れており、与えられた1000ptを振り分けるのだ。


ではご紹介しよう。

まずはオレの機体


―――


機体名:《ポケットの中にはビスケットが粉々》号(死神命名)


パラメーター

【攻撃:300】

【守備:400】

【速さ:300】


装備

【右腕:ビームライフル】


【左腕:ブレード】


【バックユニット:レーダー、ミサイル】


とまぁ、名前以外は平凡な機体に仕上がった。


さて、お待ちかね。死神の機体です。


―――


機体名:《爆乳ヒッチハイカー》(もうバカとしか言いようがない)


パラメーター

【攻撃:1000】

【守備:0】

【速さ:0】

(完全にアホです)


装備

【右腕:ジェノサイドフラッシュブラスター改】


【左腕:天下無双・高収束エネルギーソード弐式】


【バックユニット:マキシマムホーミングレーザー・ファイナルインパクト】


(全部終盤でしか手に入らない筈の代物です)


重装機体でしかも速さが0の為、ブーストを使わないと亀のようにのっそりだが、速さなんて関係ないと言わんばかりの高出力な機体でもある。実際《藤原組》の中では《破壊神》と呼ばれる程強いです。


そう。ヤツは先程この機体で

「接近するよ!」

とか言いやがったのです。遅いし脆いし・・・。オレの援護能力の高さをわかって頂けただろうか?




さて、そろそろ美香が来る頃だ。


『お待たせ二人共!』


画面の上にメッセージが出た。機体名は


《レモンとウメボシの嵐》


とかいう見ているだけで唾液が出そうな名前。


美香の機体はスピード重視らしく、藤原組でも評判の腕前らしい。


『じゃあ行こう行こう♪』


メンバーは五人揃わなくても別に良いので、早速戦地へ赴くことになった。


死神が選んだ戦地は・・・


【超激戦区!多数の派閥が争い合う荒廃都市!!(ランクS)】


という任務であった。

大抵ランクSの戦地では有力派閥のエースパイロット達が争っており、そんな中を藤原組とかいう謎の弱小派閥の初心者がしかも三機だけで乱入するのだ。

これを無謀と言わずなんと言う!?


『あら?三機だけじゃないわよ』


と美香。

するとまたもや画面上に新たな機体名とメッセージが出た。


機体名:《毛髪刺激活性化促進号》(漢字だらけで目が痛くなる)


『やあ《粉々》くん』


機体名から予想できたと思うが、三笠である。

ちなみに《粉々》というのは機体名から取ったオレの愛称らしい。


ちなみに


死神の愛称は《爆乳》

(呆れて笑うしかない)


美香の愛称は《唾液》

(どうにかしてくれ!)


三笠の愛称は《育毛》

(涙で画面が見えねぇ・・・)


である。


三笠はインテリぶりを活かして索敵型の機体だ。頼りにしてるぜ。


というわけで、死神が名付けたこのヘンテコチーム


《チームグラマラス》


結成である。

誰一人としてグラマラスな人間は入っていない。美香がギリギリってところだ。


長々となってしまったが、やっと出撃だ。後が厄介だから死神の為にも瞬殺だけは避けよう。


「準くん!領域内の敵は皆殺しだからね!!」


勝つつもりだよコイツ・・・。


―――




輸送機で戦地まで搬送されたオレ達は空から発進した。

下にはボロボロに破壊されたビルや道路が見える。リアルだなぁ。核戦争をした結果という設定だから納得だ。


降下しながら三笠・・・じゃなかった。《育毛》から通信が入る。


『皆さん、まずは僕が周囲を索敵して敵の位置を探りますから、それまでは待機していて下さい。敵に感知される事だけは避けましょう』


さすが天才!頼りになる。


が、ここで早速・・・。


「ホォォォォミング・レーザー!!!!」


コイツ話聞いてねぇ!!

《爆乳》隊長殿の重装機体が、降下しながらバックユニットの拡散レーザーをぶっ放しやがったのだ。


きっと地上の敵からは特大の花火に見えただろうな。着地した瞬間蜂の巣になっちまう。


『おや?今の攻撃で我々が着地する予定だった場所周辺の敵がロストしましたよ』


と索敵係《育毛》。

マグレもイイトコだろ!



『すごいじゃない《爆乳》ちゃん!!』


とクレイジー《唾液》。


確かに着地地点の確保はできたみたいだからお手柄だな《爆乳》。敵もいきなり空から攻撃力1000のレーザーが降ってくるとは思わなかっただろう。


まずは着地だ。場所は元高層ビルだった場所の屋上。


ガシャン


まずはオレが着地。


ドシャッ


続いて《育毛》。


ガシャッ


《唾液》が着地し、最後に


ズドォォォォン!!


《爆乳》の機体だけ凄まじい地響きをたてながら屋上を突き破り、下の階へ下の階へと落ちていき、12階くらいの位置で着地した。

ビルの壁は無いに等しく、外の景色が丸見え。柱だけで支えられている感じだ。


『では索敵を開始します』


《育毛》はバックユニットから索敵艇を無数に飛ばした。そして作戦タイム。


『《爆乳》さんの機体は動きが遅く、装甲も薄いですが強力な主力です。なかなか良い位置を確保できたことですし、ここは《爆乳》さんを守るように陣形を展開しましょう』


―――


というわけで、オレはビルから離れすぎない程度に一人で街を動き回っている。《唾液》はスピードを活かしてもう少し先の探索へ行った。《育毛》は《爆乳》の隣でスナイパーライフルを構えている。


そして時々オレの機体の頭上を


バリバリバリバリィィィィ!!!


と高出力のレーザーが通り過ぎていく。

これは勿論《爆乳》隊長の暇つぶしによるものであり、サバンナのド真ん中で全身に生肉をぶらさげて立つくらい自殺行為である。


が、たまに画面上に出る


『今の攻撃で10km先の敵チームがロストしました』


という《育毛》からの報告がさらに《爆乳》隊長を波に乗らせた。


そしてやっと敵エースパイロット達も《爆乳》を危険因子だと判断したらしく、一つのチームが攻撃を仕掛けてきた。


遠くから《唾液》がブースターをフルスロットルにして後退してくる。


追ってくるのは・・・

うわ!現在ランキングトップのエースパイロットを加えたチーム


《エデン・ガーディアンズ》


だ。


『うっひゃ〜《粉々》くん!この人達強いよ〜!』


当たり前だ!オンラインゲームで頂点に立つような連中がどれだけマニアな世界の住人なのか知らないだろ!


『《粉々》くん伏せて下さい!』


反射的に伏せると超長距離から《育毛》のスナイパーレーザーが敵の索敵係の頭を破壊した。

すげぇ・・・。


さらに嫌な予感がしたオレは《唾液》と共に急いで横へ回避した。

案の定


バリバリバリバリィィィィ!!!


スナイパーライフルでしか狙えないような超長距離から、《爆乳》が適当に撃った巨大レーザーが敵チームを襲った。こいつの強運なら宝くじで一等さえも当てるかもしれん。


さすがというべきか、敵チームは緊急回避して後方支援用の機体がやられただけであった。先程《育毛》に頭を破壊された索敵用機体は、バックユニットのレーダーのおかげで戦闘に支障は無いらしく、敵チームの損害は一機という状況。これで数は同じになった。


が、ここで問題発生。


「悪い子はいねぇかぁ〜!!!」


お前もうやりたい放題じゃねぇか!

そう、我らの隊長がブースター全開で突っ込んできたのだ。


『《爆乳》さん!』


後から慌てた《育毛》が追い掛けてくる。

やばいぞ。アイツの装甲は和紙並にペラペラだ。一発食らえば大ダメージは確実・・・


「げぇきめぇぇぇつ!」


そんなことはお構い無しとばかりに隣でコントローラーを握る死神は完全に暴走している。


『《爆乳》隊長カッコイー!』


コラ《唾液》。


隊長に向けられる攻撃は《育毛》がエネルギーシールドで防いでおり、オレは


なぜか敵エースパイロットと対峙している。マジかよ・・・


画面に相手の機体名

《アヴェクトゥルフ》


といういかにも強そうな名前が映し出されている。ランキングの頂点に刻み込まれた名前である。


援護を頼もうにも《唾液》は他の機体を相手にしているし、どうやらオレがやらなきゃいけないらしい。


とりあえずオレはビームとミサイルを連射しながら後退。建物の影に隠れる。


やはり、敵はそれを全て回避したらしく、無傷で立っていた。

しかし何を思ったのか敵機体は突然右腕とバックユニットの武装を放棄し、エネルギーブレードだけを出してオレを待っているようだ。


・・・ナルホド、一騎打ちってヤツね。


接近戦ならまだ勝つ見込みはある。

オレも右腕とバックユニットの武装を放棄し、エネルギーブレードだけを出してそれに応えることにした。


パラメーターも武装もほぼ同じ。競われるのは・・・腕だ。


ブースター全開で互いが突っ込む。


オレが横に振ったブレードは空を切り、飛び上がって回避した敵はオレの機体の顔面を蹴り飛ばした。


強すぎ!ヤバいって!


ブレードとブレードがぶつかり合い、押し合っていると後方から


『《粉々》くぅ〜ん、大丈夫〜?』


《唾液》が援護に来た。


その瞬間、何故か敵機体がガクンと傾き、あらぬ方向へブレードを振った。


敵が操作ミスをしたのだ!


後から思ったんだが、この時のミスは決して偶然ではないような気がするのだ。思うに、敵プレイヤーは突然乱入してきた機体名を横目に見てしまったのだと思う。


《レモンとウメボシの嵐》


というバカな機体名を。


大方名前に動揺したか口の中に大量のヨダレが溜まってしまったかで、操作を誤ってしまったとオレは予測する。


その時のオレはそんなことを考えている余裕もなく、とりあえず隙ができたことに喜んで、左腕を切り落とした。


さぁトドメだ!と、気合いを入れた矢先の出来事だった。


「全弾一斉射撃ぃぃぃぃぃ!!撃て撃て撃て撃てぇぇぇぇぇーーー!!!」


空中で《爆乳》隊長が線香花火みたいにレーザーをばらまいたのだ。

敵味方関係ナシ。攻撃力MAXのレーザー暴風雨は擦っただけで大ダメージであり、実際・・・


敵チームのロスト数は三機に増えていた。


さらに言えばこの領域で無傷なのは花火と化した《爆乳》隊長本人だけであり、オレの機体も、《唾液》、《育毛》の機体も意味なく破損していた。


敵は敵で、生き残った索敵用機体は頭どころか手足も失い、最強の《アヴェクトゥルフ》も戦闘不能に陥っていた。


敵プレイヤーはさぞかし驚いている事だろうな。


・・・さてと。


オレは目の前に倒れている《アヴェクトゥルフ》を、《唾液》はもはや胴体に片手がくっついただけの索敵用敵機体を掴み、放り投げた。


もちろん最悪なる我が隊長殿の目の前にである。


二機はもがいて逃げようとする。



ドシャ・・・


巨大な足が二機を踏み付けて留めた。


「んっふふふふ〜♪」


《爆乳ヒッチハイカー》のカメラアイが邪悪に光り輝く。効果音はキュピーンって感じね。


可哀相に。きっと敵プレイヤーはコントローラーを握りながら


〈ギャァァァァァァァァ!!〉

〈う、うわぁぁぁぁぁぁ!!〉


とか叫んでるんだろうなぁ。


・・・ご愁傷様です。



「ホォォォミング・レェザァァァァァァ!!!!」


シュドドドドド!

バガァン!

ボン!ガシャァァァン!


――――――





この奇跡の暴走劇により、ランクSの区域は晴れて《藤原組》の領地となった。さらに驚くべきことにランキングは


1《爆乳ヒッチハイカー》

2《レモンとウメボシの嵐》

3《アヴェクトゥルフ》


と入れ替わっちまった。


これは後日談だが、その後しばらくはゲームに熱中していたものの、時間が経つにつれ死神と美香は飽きてしまった。


つまり永遠にランキングが入れ替わることはなく、絶好調であった《藤原組》も主力を欠いたことで一気に弱体化してしまうという、悲劇的な結果となったのだが、まぁ死神達にとってみれば楽しけりゃ良いという考えなので当然といえば当然か。


―――


「うん、やっぱり最後は私のおかげだよねっ!これは賞賛に値するよ!偉いぞ私!」


自分に惚れると書いて《自惚れる{うぬぼれる}》と読むんだよ死神さん。



「あっ!準くん、今日はジブリ映画が放送されるよ!!」


「そうだな」


その夜オレ達はまったりと映画鑑賞をしました。

数日後、ゲームソフトは我が家のビデオラックの近くに眠ることとなる。

今回のお話、気が付けばなんと過去最高文字数になっておりました!笑

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