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死神といっしょ!  作者: 是音
35/116

第35話 猫VS閻魔

さて、前回の鬼ごっこの続きですが・・・ホントなにやってんだろオレ。


静まり返った休日の体育館に不法侵入。

待ち受けていたのは地獄アジア支部の長。

大鎌を持ってやる気満々の死神(ジャージ姿)。


んで何故か窓ガラスを突き破って現れた・・・猫。


体育館の真ん中で三つ巴みたいな状況になって睨み合う三人(二人+一匹)。


ん、オレ?オレはもうこの状況が馬鹿馬鹿しくなって床に寝そべって観察さ。


「何しに来たのよ!この静電気ネコ!」


静電気で猫にイタズラしたのはお前だ。


「ニャー!ニャー!」

{だらしのない若造と、久々に楽しめそうな強い気を感じたのでな}


『だそうだ』


閻魔さんは猫の言葉がわかるらしく、訳してくれた。つーかニャー!ニャー!だけでそんなに意味こもってたのかよ。


ってことはなにか?今回猫はオレ達の敵ではないということか?


「ニャ!」

{こやつは貴様では相手にならん!下がっていろ}


『・・・だそうだが?』


猫の訳を聞いた死神はムスッと口を突き出した。


「む〜っ!」


そんな死神には目も向けずに猫と閻魔さんは凄まじいオーラやら気やらのぶつけ合いをしている。風圧がこっちにまで来る。

オレは死神に向かって手を振った。


「死神〜、こっち来い。巻き込まれるぞ〜!」


それを見た死神はムスッとした顔のままオレの所までやってくると、


とすん


横になるオレの上に寝そべった。なんだこの変な体勢?


「つまんなーい!」


死神はオレの頭をペチペチと叩く。


「あんまりムスッとしてると皺になって美人が台無しになるぜ?」


「マジ!?」


死神は慌てて顔を触ったりして、


「もち肌♪」


とか言ってホッとしていた。


「さあゲストの準くん、あの二人の戦いをどう見ますか?」


「そうだな。二人共戦闘力や能力が未知数だからなんとも言えないが、とりあえず両方共強いことに違いはない。激戦は必至・・・って、なんだゲストって?」


「準くんでしたー!さて解説は再び私ロシュケンプライメーダ・ヘルツェモナイーグルスペカタマラス七世がお送り致します!」


なんだかんだでちょっと楽しそうだなオイ。


どうやら二人の戦いが始まったみたいだ。


「ニャー!ニャ!{私のスピードに付いてこられるかな!?}ルクセンブルク!」


あいつ今ルクセンブルクって言った!


『フハハハハ!4000歳を相手にするとはテメーの方が若造じゃねぇか!』


猫は体育館の壁を走っているのだろうが、オレには音しか聞こえない。音は壁から天井、天井から地面へと移動し、真ん中に立つ閻魔へ向かっていく。


『ハァーッハー!』


閻魔さんは足を振り上げ、地面に叩きつけた。凄まじい圧力が足元から吹き出し、猫が吹き飛んだ。


「おぉーっと!閻魔さんの霊圧でスピードが売りの猫が吹き飛ばされたぞぉ〜!これでは近付けない!」


死神はノリノリで実況している。ちなみに実況台はオレの横腹だ。


「ニャ・・・ニャー!!{さすがよ。・・・だが、まだだ!《ラディカルグッドスピード・レベル2》!!}」


起き上がった猫が一瞬にして消えた。どうやらもう一段階スピードを上げたみたいだ。

残像を残しながら再び閻魔さんへ向かっていく。夜叉さんのものとは違うタイプの分身だ。


『無駄だー!』


閻魔さんは霊圧で分身をなぎ払った。


が、


「カルカン!{無駄だ!}」


ついにニャーとも言わなくなりやがった。

猫は閻魔さんの真上から突撃した。必殺の猫パンチが閻魔さんにヒットする。


「おぉーっと!今度は猫の反撃だぁ!さすがの閻魔さんもスピードについていけなくなったかぁ!?」


死神は実況台オレをバシバシと叩いて熱中している。痛い。


『くっ、さっさと起きやがれ《魔剣ドミニオン》!!』


閻魔さんが手に持つ黒い剣に向かって叫ぶ。なにやってんだろ?

次の瞬間それがドクンと脈打った。

信じられないことにその剣から声が響いてくる。


〈ふぁぁ・・・うるっせぇなぁ。んだよ、もう合コンの時間か?〉


『違ぇよ!』


〈モテる魔剣は辛いよな。だが悲しいかなオレにはお気に入りがいるんだよなぁ。あぁLOVE、《聖剣エクスカリバー》ちゃん・・・♪〉


『ヴァルキュリアの剣じゃねぇか!』


猫、そしてオレと死神は閻魔と魔剣のやりとりを呆然と眺めていた。


「はっ、いかんいかん!実況の仕事を忘れてたわ!

さぁ、ここで閻魔さん究極の相棒《魔剣ドミニオン》の登場だぁ!さらに今の寝ボケ発言からドミニオンはヴァルキュリアさんの相棒《聖剣エクスカリバー》にお熱だということが発覚!裏情報ゲーット!!」


死神は完全に実況モードだ。つーか剣が喋ったよ。


『いいから手ぇ貸せ』


魔剣は宙にフワフワ浮いてぶっきらぼうな声を出している。


〈魔剣だって眠りたいときがあるのさ〜・・・〉


やる気のねぇ魔剣だな。


「ニャー、ナンダキサマハ!{おい、なんだキサマは?}」


ちょっと待て猫!今普通に喋っただろ!


「さぁ猫は閻魔さんと魔剣がもみ合っている隙に攻撃を仕掛けるみたいだぞ〜!そして解説の私死神は見ているだけじゃつまんないから実況台をくすぐることにしました!」



ははっ、イヤイヤちょっと待てよ。


・・・。


!!


やめれー!横腹はやめれー!


『ほら来るぞドミニオン!!』


〈なにが?〉


『攻撃だ!』


〈恋う劇・・・!それはまさにオレとエクスカリバーの演じる愛という名の物語・・・〉


『いいかげん目ぇ覚ませ!』


〈あぁ、オレにとっては高嶺の花・・・ふごぉ!!〉


そうこうしている間に猫が高速で魔剣に突撃した。

魔剣は吹き飛んで体育館の壁に突き刺さったらしい。らしいというのは、オレは先程から死神に横腹をくすぐられているから周りが見えていないのだよ。自分でも弱点が横腹だとは思ってもいなかった・・・。


閻魔さんは呆れ顔で突き刺さった魔剣を見上げた。


『ほら見ろ、目ぇ覚めたか?』


〈恋は盲目・・・〉


アホか。


魔剣が起きてから急に閻魔さんの戦力が減少したような気がする・・・。


〈よしわかった〉


『やっとやる気になったか』


〈うむ《マッサージチェア》で手を打とう!〉


魔剣がどうやって使うんだよマッサージチェア。

いや待て、そもそも肩とか凝るのか!?

つーか肩がどこかわかんねぇ!


『うんまた今度ね』


うわー軽く流した。


「ニャー、ナヤミゴトカ?{なぁ、悩み事か?}」


テメーもう普通に喋っていいぞ。


〈そうなんだよ猫君。恋の悩みさ〉


「ソレハタイヘンダナ{それは大変だな}」


―――


・・・。


この後の展開は予想していなかった。

なんか知らんが、猫が魔剣ドミニオンの恋愛相談に乗り始め、閻魔さんと三人で(一人+一匹+一本)円を成して語り始めてしまったのだ。

あと、これも恐ろしいことに、オレはどうやら猫の言葉がわかるようになっちまったらしい。それか猫が人語を話せるのか。


とりあえず死神はこの状況に対して不満足らしく、再び不機嫌になって・・・


いででででで!


「横腹をつねるな!」


「だってつまんないもん!」


・・・。


あ、そういえば制限時間とっくに過ぎてんじゃね?


「じゃあ帰ろっか死神」


「うん、お腹空いたぁ〜」


てなわけで、何も決着がつかないまま死神が独断で企画した鬼ごっこは死神の独断で終了し、オレ達は体育館から出た。


最強集団の《恋愛会議in体育館》はまだまだ続いたらしい。

つーか結局ドミニオンは寝呆けて悩んでただけじゃん。



体育館を出て、冬音さんと彩花さんの様子を見に行ったオレ達はとりあえずホッとした。


「よう準、死神、無事だったか!」


「アハハハ、死神ちゃんそのジャージ似合うわね♪」


二人共服を汚し、擦り傷を負いながらもグラウンドの真ん中に座ってジュースを飲んでいた。

夜叉さんは・・・


二人の椅子代わりになっている。仮面は砕け散り、綺麗な顔から大量の鼻血を出して気絶している。でも外傷は見られない。

・・・何があった?


その後、オレは彩花さんにお願いして死神と一緒に駆けっこをしてもらっていた。

遠くで彩花さんを追い掛け、数メートル走ってはコケる死神を見ていると笑みがこぼれる。


「準よ」


元の人格に戻った冬音さんは隣でオレをずっと見ていたらしく、隣を見ると目が合った。


「なんですか?」


すると冬音さんはオレから目線をそらして遠くで膝についた土を払う死神を見た。


「お前、死神を見るときだけはすごく良い顔見せるよな」


これはまた。意外な言葉が出たな。


「そうですか?」


「うん、お前がファンタズマにいた頃は決して見せなかった笑顔だ」


まぁあの頃は荒れてたからなぁ・・・。


「ふふふ、死神が来たことでお前に変化があったのは間違いないみたいだな」


口調は強めでもなんだかんだで綺麗な人だからな。思わず笑った横顔に見とれてしまうオレ。

死神が来たことで変化があったのは間違いないな、うん。完全に日常が変わっちまった。


「そういうことじゃないよ」



どういうこと?


「はぁ〜っ、お前自分でわかってないのかよ?」


冬音さんの言いたいことがサッパリわからん。


「ま、いいさ。いずれ自分で気付くだろうからな。私は遠くから見守らせて貰うよ」


そう言うと冬音さんは立ち上がり、死神と彩花さんの元へ走っていった。


「オラーいちいちコケんなよ死神ー!」


死神は腹が空いたことも忘れて彩花さんと冬音さんの三人で走り回っていた。どうやら普通の鬼ごっこをしているらしい。


「準くんもやろうよー!」


遠くで死神が手を振る。


・・・仕方ねぇな。

どうせ帰る途中で眠っちまって、死神をおぶってくのはオレなんだろうな。


「ちゃんと鬼はセリフ言わなきゃダメだよ!」


「そうだぞ準!」


・・・セリフ?


―――


「鬼さんこちら〜っ♪」


案の定鬼にさせられたオレは死神を追い掛ける。


「ハイっ、鬼はここでセリフ!」


・・・。


「《見ろ!人がゴミのようだ!》」


「いいぞムスカ〜!」


・・・《天空の城》ネタじゃねぇか。またジブリにハマってんのか。

つーかわかりづれぇよ。


その後一時間程鬼ごっこをして、オレ達は帰った。

今日は一体なんだったんだ?なんか色々と放置したままな気がするが・・・。


「すーすー」


んでやっぱり死神は疲れて眠ってしまった為、おんぶして帰り道を二人で歩いて帰った。


次の日、死神は朝飯をそれはもうよく食った。

あ、ちなみにウエストは元に戻ったらしく、えらく上機嫌でしたよ。

今回は『猫と閻魔を戦わせてみたい!』という私の完全な自分勝手で書いちゃいました。(笑)

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