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死神といっしょ!  作者: 是音
34/116

第34話 死神と鬼ごっこ

「イヤァァァァァ!」


朝。窓ガラスが割れそうな程響き渡る死神の悲鳴。

驚いたオレは朝風呂に入っていたはずの死神の様子を見に行く。


「どうした死神・・・どわぁぁぁぁぁーーー!」


飛び出してきたのはバスタオル一枚を体に巻いただけの死神だった。


「大変だよ準くん!」


「テメーの格好のほうが大変だろ!早く服着ろよ!」


「あわわわわ・・・は、はぁい」


死神は動揺しながら脱衣所へ戻った。何があった?


「はゎゎゎゎ、着替えたよ準くん」


「よし。・・・って、何でオレの服着てんだよ!!」


脱衣所から出てきた死神はオレの黒色のタートルネックとカーキのカーゴパンツを着ていた。もちろん丈が長すぎて袖は垂れ下がり、裾を地面に引きずらせている。



「あ、ま、間違えちゃった!」


間違えねぇよフツー。あ、コイツ普通じゃなかったな。


「まぁ、服はいいや。それよりどうした?」


オロオロしながら落ち着かない様子で居間をうろついていた死神は、涙を浮かべてオレの服の袖を引っ張った。


「増えたの・・・」


「何が?」


「・・・ウエスト」


なるほど。それでこの騒ぎか。


「まぁあの食欲で今まで太らなかったのが不思議だよな。で、どのくらい太ったんだ?」


「ウエストが2ミリ程・・・」


「2ミリ?そんなことで・・・」


どかーん!


ぐはぁっ


「バカーーーー!レディはウエストに敏感なのよ!」


そ、そうですか。


「もう、だから準くんは《平成のエリマキトカゲ》って言われるんだよ!」


・・・。


ちょっと待て、誰だ言った奴は。


「とにかく!ダイエットしなくちゃ!じゃないと・・・」


「じゃないと?」


「・・・準くん嫌になるでしょ?」


・・・?


もうコイツさっぱりわかんねぇよ。


「決めた!」


あぁ・・・嫌な予感。


「ダイエットしよう準くん!!」


「オレ関係ねぇよ!」


と、抵抗してはみたが、死神必殺の泣き落としをくらい、数分後オレ達はジャージ姿でマンションの前に立っていた。


ちなみに死神のジャージは以前街で買った真っ白な生地に薄ピンクの線が入ったジャージだ。なんでこれがいいのかと聞いたところ、


『美味しそう』


とか訳のわからん事を口走りやがった。まぁようするに気分ってことです。


んでオレは死神に一緒に買おうと言われて買った紺色のジャージ着てます。


「ダイエットって何するんだ?」


「鬼ごっこ!」


鬼ごっこ?また変なことを考えたもんだ・・・。


「オレが鬼やるのか?」


「ちゃんと鬼役のインストラクターを呼んであるのだよ!」


そう言うと死神は指をパチンと鳴らした。

空中に黒い穴が開き、無数の人影が落ちてきた。

って、こいつらは・・・


『鬼役の夜叉です』


一人目が挨拶した。


『鬼役の夜叉です』


・・・二人目。


『鬼役の夜叉です』


・・・三人目。


『鬼役の夜叉です』


・・・四人。この後も続々と続いた。


『鬼役の夜叉です』


『鬼役の夜叉です』


『鬼役の夜叉です』


『鬼役の夜叉です』


『鬼役の閻……夜叉です』


『鬼役の夜叉です』


『鬼役の夜叉です』


まだまだ出てくる。


そう。数十人に分身した夜叉さんが鬼役だったのだ。いや、鬼役というか本物の鬼じゃん。


本体らしき夜叉さんが前に出てきた。


『今日は鬼ごっこをやるそうで?』


浮かない声だ。きっと強制召喚させられたんだろ。


『ご希望どおり、殺す気でいかせて頂きますよ』


は?


「おいどういうことだ死神!」


「本気で走ったほうが手っ取り早く痩せられるでしょ?ちなみに私も今回はちゃんと走るよ!」


と意気込む死神。

なるほど。じゃねえよ!


大体オレは関係ねぇんだし。

つーか殺す気って・・・命を危険にさらしてまでウエスト2ミリにこだわる意味がオレには理解できん・・・


『じゃあ数えますぞ、いーち!にーい・・・』


夜叉’sが声を揃えて数えだした。ナイトメアの夢の中で夜叉さんに追い掛けられたことのあるオレはゾッとして全力で走りだした。


100m走11秒フラットの脚力をなめんなよ!


「あっ、待ってよぉ準く〜ん!」


死神はトテトテと走り、


「あぅ」


コケた。


起き上がった死神は再び走りだすが、

これがまた遅ぇ。

多分コイツ走るの苦手だ。んでまたコケた。


・・・死神のさらに後ろでは夜叉’sが


『じゅーご!じゅーろく・・・』


ヤバい!とりあえず距離をとらねば!

オレは死神を脇に抱えあげると、〈ドヒュン〉という効果音で走りだした。


「ダメだよ準くん、自分で走らないと意味ないんだから!」


「とりあえず距離を稼ぐんだよ!お前の足じゃソッコー捕まって終わりだ!」


「大丈夫だよぉ、戦闘して勝てばOKだから!」


どういうルールだよ。いや、それよりも


「夜叉さんに勝てるわけねぇだろ!」


「フフフ、それについては計算済みだよ準くん」


どういうことだ?


「夜叉さんはね、多く分身すればするほど個々の戦闘力が下がっちゃうの。あの数の分身なら私たちでも倒せるくらい弱くなってるはずよ!」


そりゃ驚きだな。

つーか数十分の一の戦闘力でやっとオレ達と互角だっていう夜叉さんがスゲェ・・・。


オレは遊歩道を全力で走り抜けながら、見つかりにくい場所を探した。


「・・・学校だな」


あそこら辺なら校舎の間やら、たまり場等で隠れたりするには都合がいい。


「準くんそろそろ降ろして〜っ」


おっと、忘れてた。オレは死神を降ろして一緒に走りだした。



もう本当に遅ぇ。


「あぅち」


いちいちコケんな!


「なにやってんだよ!ほら手ぇ貸せ!」


オレは死神の手を取って走る。ペースはがた落ちだな。


遊歩道を走っていると、路上でアコースティックギターを弾いている少年が座っていた。


・・・ヴァンパイアだ。


アコギで《ミュージックステー○ョン》でお馴染みのあの曲を弾いている。

なぜか歌詞つきで。


『味噌汁ぅ〜ができましたぁ〜♪あしたはねぇ〜キノコライスぅ〜♪彩花はねぇ〜化粧濃いぞぉ〜♪彩花に聞かれてボコられた♪』


みんなもテレビでオープニングを見ながらバンプの歌詞を頑張って充ててみよう!


じゃなかった。何やってんだろコイツ?


「なにやってんの?バンプ」


「あっ!ロシュに準くん!」


ヴァンパイアは曲を止めて顔を上げた。


「うっぷん晴らしに彩花の悪口を弾き語りで叫んでやっているのさ!」


聞いてるこっちが悲しくなってくる。


「ところで二人はそんな格好で何やってんの?」


「鬼ごっこだよ!命懸けの」


「命懸け!?」


「うん!夜叉さん達が私たちを殺すつもりで追い掛け・・・」


『見つけましたぞ死神殿』

『見つけましたぞ死神殿』


遊歩道の両端に植えられた木を見上げると、オレ達の真上に二人の夜叉さんがいた。


「ヤバい!逃げるぞ死神!」

「う、うん!」


追い掛けようとする夜叉さん達の前にヴァンパイアが立ちはだかった。


「バンプ!?」


「ロシュ、今度チュッパチャップスおごれよ」


安!


「断固拒否!」


断りやがった!


そしてヴァンパイアは両腕に真っ赤な短剣を出して二人に飛び掛かっていった。

スマン!


こうしてヴァンパイアに時間を稼いで貰っているうちに、学校へ着いた。珍しく死神の息があがっている。


「とりあえずどこかへ隠れないとな」


「うん、じゃあ女子トイレ行こう!夜叉さん入ってこられないし!」


オレも入れねぇし。


グランドで考えていると、携帯のバイブレーションが鳴った。

冬音さんからだ。


〈準!お前今どこにいるの!?〉


「え、学校ですけど。どうしたんですか?」


〈お前の金パクったの私だと暴露しに行こうとしたら・・・〉


「あんたかよ!」


〈途中でボロボロになって倒れているヴァンパイアとかいう奴を見つけたんでな〉


「バンプが!?どうしたんですか!?」


〈なんか『チュッパチャップス』とか呟いてたから、とりあえず爆笑しといたよ〉


オイ。


〈とにかく!大勢の夜叉に追われてるんだろ!?〉


「は、はい」


〈じゃあそこでおとなしく待ってろ!〉


ブツッ


切られた。


「冬音姉さんなんだって?」


「おとなしく待ってろとさ」


オレ達は近くの自販機でジュースを買って待つことにした。

しかし、ヴァンパイアがやられたってのに夜叉さん達はあれ以来姿を見せていないのが不思議だ。何故なら夜叉さんはおそらくオレ達の気を感じ取って追い掛けているだろうから。



・・・。


どれくらい経っただろう?しばらくすると冬音さんが姿を現わした。

後に続いて来たのは・・・


彩花さん!?


・・・二人共両手に


気絶した夜叉さんを数人引きずっていた。


「オラ準!てめぇ男のくせに逃げ回っているとはどういう事だ!あぁ!?」


出た《悪冬音》。

どうやら夜叉さん達のほとんどは冬音さんと彩花さんにやられてしまったらしい。


「冬音姉さんすごーい!」


「ったりめぇだ死神よ」


それにしても彩花さんまでこれほどの戦闘力を持っていたとは。


「ウチのパシリあんな目にあわされて黙ってるわけないじゃなーい♪アハハハハ」


多分、家事係が動けなくなったことに腹が立ったんだろうな。


「しかしよぉ、倒せば倒すほど強くなっていくんだよコイツら。最後の辺は苦戦したぜ」


という冬音さん。

あぁ、そうか。分身がやられて消えていけば分化された戦闘力が戻っていくんだな。


とその時、グラウンドの向こう側に二つの人影が見えた。


「来たな」


「あれが最後の二人ね」


冬音さんと彩花さんが前に出る。つーかもう完璧にカッコイイお姉さんじゃねぇか。


「準、お前らはどっかへ隠れろ。死神、準を頼んだぞ」


「りょうかーい!」


オレは死神と一緒に体育館裏へ回った。


「死神、この鬼ごっこはいつ終わるんだ?」


「う〜ん、制限時間が三時間だから、あと三十分くらいかな?」


あと三十分逃げ切らなきゃ。この時間が結構長いんだよな。にしてもあの二人は大丈夫だろうか?夜叉さんの半分の戦闘力を相手にするんだろ?勝ち目は無・・・


ぱりーん


!?


死神は体育館の窓ガラスを割って中へ入った。


「何やってんだよ死神!」


「フッ、脆いガラスだぜ」


何言ってんだよ。

とりあえず安全を確保する為、体育館の中に入ったオレ達は呆然とした。


ステージの上に夜叉さんが立っていたからだ。


しまったな、もう一人いたか。


『フハハハハ!覚悟しろよロシュ、里原!』



夜叉さんの口調と違う。

死神はなにやら首を傾げて偽夜叉さんの方をじっと見る。そして一言


「ヴァルキュリアさんに惚れた?」


『ブハァ!ロシュてめぇそれは言わない約束だろうがよ!』


「やっぱり閻魔さんだ!」


その偽夜叉さんは変身を解いた。

死神の予想どおり、それは閻魔さんだった。でも何で?


『なんか夜叉が面白そうなことに呼ばれたのを偶然見てよ、こっそりついてきたのさ!フハハハハ!』


仕事しやがれ地獄の大将。


『さて、殺す気で行くんだったよな?』


閻魔さんは首を鳴らして、巨大な剣を手に持った。真っ黒で紫のオーラに包まれた格好いい剣だ。


ってかアジア三強よりも地獄の長の方が圧倒的に強いだろうが!


『コメディーなんて知ったことかぁーーー!!』


メチャクチャだこの人!


「この白髪オヤジめ!」


死神は大鎌を出してやる気満々だ。

ヤバいって絶対負けるって!


その時だった


ぱりーん!


窓ガラスを割って飛び込んできた影があった。

閻魔さんと死神、そしてオレは影を目で追った。


『何奴!』


「あっ!アイツ!!」


そう。中に入って来たのは・・・


「ニャーニャー!」

{だらしないぞ若造共}


そう。あの最強猫だった。


そして死神が一言


「次回へ続く!」


おい。


つーかマジで?


「一回言ってみたかったんだよねぇ♪」


マジみたいです。

次回へ続きます!

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