表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死神といっしょ!  作者: 是音
31/116

第31話 死神と桜

「春だねぇ準くん・・・」


「あぁ、春だなぁ・・・」



オレと死神はベランダの手摺りにもたれかかり、春の風を感じていた。


日差しはぽっかぽかで、強めの風にオレの十字架を垂れ下げたピアスが揺れる。

下を眺めると遊歩道に植えられた木も風に揺られて音をたてている。

隣を見ると死神もフードを外し、目をつむって風圧を受けとめていた。


「いいねぇこの雰囲気!」


「まさにまったりな空気だなぁ。」




「よ〜し、こんな気持ち良い日はダラダラしすぎてどこまで意識を失うか実験してみよ〜う」


既に意識失いそうだなオイ。


「そんなつまんねぇことでこの回が終わったら画面の向こう側から冷視線ビームが来るぞ」


「冷視線ビームかぁ〜。怖いよぉ〜。・・・冷視線ビームって何?」


危機感ゼロかよ!


「準く〜ん」


「なんだよ?」


「こんな気持ち良い日はダラダラしすぎてどこまで意識を失うか実験してみよ〜う」


テメー話聞いてなかっただろ。


「じゃあ桜でも見に行くか?死神」


死神は手摺りから頬を離してパッと顔を上げた。


「おっ、いいねぇいいねぇ!《私=桜》みたいなもんだからねっ」

「うんうん、そうだな」



調子こいてんじゃねぇよ。


というわけで、家にいても溶けちまいそうだから外へ行くことにした。


向かう先はちょっと上り坂を昇った先にある桜の綺麗な丘だ。

オレが住んでるトコって割と都会なのに自然を大切にしてるんだよね。こういう所が気に入ってウチの両親はマンションを買ったんだと思う。


「うひー、準くんどこまで登るの〜?」


「お前浮いてるから疲れねぇだろ!」


オレ達は両側にモダンな家が建ち並ぶ上り坂を進んでいた。後ろを振り返ると下に建物の屋根が並んでいるのが見えた。

やべー。超良い景色じゃん。


「見ろよ死神、街が一望できるぜ」


「いずれこの景色共々、世界は全て私の軍門に下る!」


良い雰囲気台無しじゃねぇか。


坂道を登りきると大きな公園が目の前にひろがっていた。桜が咲き乱れ、風によって花びらが舞い散っている。既にたくさんの花見客が敷物を敷いて盛り上がっている。

死神もさすがに目の前の光景に見入っていた。


「こ、この景色もいずれは私のモノに」


「ならねぇよ!」


アホ神もどうやら桜が気に入ったらしく、もっと近くで見たいと言って飛んでいってしまった。


しかしここまで綺麗だとは正直思っていなかったな。オレは近くで騒いでいた兄ちゃん(服装からみて鳶職)四人組に誘われて何故か混ざっていた。


「ハハハハ、何だお前高校生か!」


「はい。だから酒はダメですよ。」


「おら飲め飲め!オレンジジュースを!ハハハハハッ」


すげぇ陽気な人達だ。なんか話しているうちに、この人たちが元ファンタズマのメンバーだという事がわかった。


「お前あの里原かよ!」


「オレももう引退した身ですけどね。」


「ファンタズマは良いよな!あのグループがあるからここら一帯の治安が保たれてるんだから」


そう。ファンタズマは武闘派の不良集団ではあるが、あくまで相手にするのはやりすぎで目立つ不良グループだけなのだ。

つまりファンタズマという集団は《迷惑な不良を狩る不良の集まり》なのだ。


「今は冬音がトップなのか。」


「まぁなんとなく納得できるな・・・」


個々でファンタズマにいた頃の思い出話に浸っていると、遠くの方から死神がやってくるのが見えた。


「あ、オレそろそろ失礼します。」


「えー、もう行っちまうのか?」


「ハハハ!冬音の奴によろしくな!」



オレは兄ちゃん達と別れると、走って死神の所へ行った。

なんかフラフラ浮いてるぞ?


「あ!準く〜ん!」


「おー、どこ行ってたんだよ?・・・って、何だお前?」


死神のローブがなんかモコモコしている。


「な、何が?」


「・・・。」


オレは死神を掴むと、逆さに持ち上げて振った。


「うひゃっ!相変わらず身体に似合わないパワーだね準くん!」


バサーーーッ


ローブの中から桜の花びらが大量に流れ出てきた。


「あーーーっ!もぅ、せっかく集めたのにぃ!!」


死神が逆さに吊られた状態でオレに怒る。というか泣く。


「なんでこんなことしたんだ?」


「だって綺麗だったから持って帰りたかったんだもんっ。ぐすん。」


・・・。


お前フツーに可愛いなオイ。


「今のはオレが悪かったな、ゴメン。」


てなわけで、袋に桜の花びらをいっぱい詰めて帰ることにしました。

死神は上機嫌で坂道を下る。


「日本の春は綺麗だねっ!」


「だな。」


春を満喫したオレと死神は部屋に戻った。死神はさっそくベランダに出て袋を取り出す。


「ところでお前、袋いっぱいに詰めたそれ。どうすんだ?」


「これ?へへへ〜っ。来て来て♪」


死神はオレがベランダに出たのを確認すると、袋から桜の花びらを外に撒き散らした。

たくさんの花びらは高く高く舞い上がり、長い間風に身を任せていた。


「お前これがやりたかったのか。」


死神は手摺りから身を乗り出して花びらを目で追っている。


「うひゃ〜、やっぱり綺麗だなぁ!丘の上は人がいっぱいで落ち着けなかったからね〜っ♪」


オレも身を乗り出して花びらを目で追った。

ヤバい、なんか癒されてるオレ。


さて、時間は丁度昼過ぎくらいかな?

そろそろ死神が・・・


「準くんお腹空いた!」


ほらね。


「じゃあ昼飯作らねぇとな。何がいい?」


「う〜ん・・・やっぱ春だから、《マグナキルティ・パラダイスロストのブレイク煮込み・・・」


「《ポトフ》な。じ〜っくり煮込んでやるからなっ。」


「えっ!ちょっ、ちょっと準くん!《マグナキルティ・パラダイスロストのブレイク・・・」


「いらないのか?」


「ポトフLOVE!!」


よしよし。


なんか今日は異常なくらいまったりムードだったなぁ。

ま、春だからねっ♪

今回は少しまったりとした雰囲気になってしまったかも・・・。まぁ、春ですからね♪笑

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ