第29話 準はつらいよ
今日は何やってんだろコイツ?
死神は笑顔で座布団の上に正座している。観客はどうやら洗濯物をたたむオレらしい。
「さぁて準くん、セクシー死神さんが楽しいお話を聞かせてあげようかね♪」
楽しいお話?
暇そうだから付き合ってやるか。
「短めでお願いしますよセクシー死神さん。」
「あいよっ。」
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むかぁしむかしあるところに、おじいさんとおばあさんが・・・
いませんでした。終わり。アハハハハハ!!
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馬鹿にしてんのかてめぇ・・・。
「貴様には楽しいお話は無理だな。」
「む〜っ!ならこれならどうだ!ショートコント!!《山賊》!!!」
ショートコント!?一人で!?
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村娘:『キャー!山賊が来たわよ〜!』
子供:『助けてお母さ〜ん!!』
(うわっ、本当に一人で演じてるよ!)
山賊:『オラァ!食料、武器弾薬及び止血剤をよこしやがれぇ!』
(この山賊はきっと軍隊あがりだ!)
村長:『こ、これで精一杯ですじゃあ・・・』
(ヨボヨボ村長キター!)
山賊:『嘘つけテメーこの野郎!』
村長:『ひぃぃぃ、本当ですじゃぁ・・・』
(えー、この時点で死神は四人を演じております。信じらんねぇ。)
謎の男:『待ちたまえ、そこのマウンテン・・・マウンテン・・・賊め!』
(なんか変な奴が来た。しかも山賊を英語で言ってみようとして失敗してるし。)
山賊:『なんだテメーは!オラァ!!ズバッ』
謎の男:『ぐわぁ・・・!』
(謎の男弱っ!)
謎の少年:『太郎兄ちゃん!!』
謎の男:『ケ、ケンジか・・・兄ちゃんはもうダメだ・・・世界の平和を・・・頼んだ・・・ぜ。』
謎の少年:『太郎兄ちゃぁぁぁぁん!!!!』
キャスト
・村娘=死神
・子供=死神
・山賊=死神
・村長=死神
・謎の男(太郎)=死神
・謎の少年=死神
・下手な天の声=準くん
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・・・。
ん、何コレ?キャストにオレ入ってたし。
つーか村は?山賊は?謎の男は?
「どうだい準くん!」
「キャストとか入れた時点でショートコントじゃねぇだろ。」
「ガーーーン!」
付き合ってらんねぇ。
オレはキッチンへ向かった。
「待っておくれよ準くん!」
出たよ。《ぶらさがり症》。
毎度のことだから引きずりながら動く。
「ぶら〜ん、準くん私またなぞなぞ思いついたんだよっ。」
またかよ。コイツのなぞなぞが意味不明なのは皆様おわかりでしょう。
聞くのは嫌だけど、きっと強制です。
「いくよっ、《食物は食物でも、食べられないもの》ってな〜んだっ!」
お?珍しくまともな問題出してるぞ。
う〜ん・・・なんだろ?
「わかんないなぁ。」
「正解は《紅しょうが》でしたぁ〜♪」
お前が食べられないものかよ!
もうコイツ無視♪
オレはその後もなぞなぞを出す死神を完全に無視してタマネギを刻んでいた。
そしてやっと無視されていたことに気付いた死神はイタズラを開始した。
「タぁーマネーギぃー目にしぃみてぇ〜もぉ〜、なみぃだこらぁえて〜♪」
キテ○ツ大百科の曲と共に死神は刻みかけのタマネギを掴むと、
・・・オレの顔に押し当てた。
グシャ♪
「いでーーーー!目がぁぁぁぁ!」
おあぁぁぁぁぁ!涙が止まらねぇ!!・・・なんかこのセリフ良いな。
「テメー死神!やりやがったなぁ!!!!!」
さすがに怒ったオレもタマネギを死神の顔に擦り付けた。さらに紅しょうがを『これでもか!』ってくらいに口へぶちこむ。
「みぃぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!目がぁぁぁ!ぅわ・・・、こ、これは紅しょうが!?どひょーーーっ!紅しょうがだよコレ!!」
顔を洗ったオレは居間を見た。そこでは死神が転がり回っていた。しまった、紅しょうが入れすぎたか?
「うひゃっ!」
死神は一瞬痙攣し、突然起き上がった。
『うぃ〜・・・ひっく。』
やべぇ《紅しょうがアレルギー》だ。
説明しよう、死神が紅しょうがを食べたときに起こる《紅しょうがアレルギー》とは・・・うぉ!
死神はベロンベロンになりながら服を引っ張る。
『よぅ準くん〜、最近調子どうよ?ウフフフフ』
まぁ簡単に言えば《酔っ払い》です。コイツの相手が大変なんだよね。紅しょうがなんか食わせるんじゃなかった。
「ハイハイ、調子は良いよ。お前のせいで昼食の支度ができなくなったけどな・・・。」
こうなってしまったら酔いがさめるまで相手をしないと、こっちの身が危ない。
仕方なく居間に座り込み、わけわからん奴の言動に付き合う。
『美を極めた私に酔い痴れるが良いわ〜♪フフフフフ』
「・・・酔ってるのはお前だ。」
『おっ、上手いこと言うね兄ちゃん!羽毛布団一枚!アハハハハハ!』
座布団だろ。ってかコイツタチ悪ぃ・・・。
『ぐすん。』
今度は泣きだした。
『タンスのカドに小指をぶつけたら痛いよね?ぐすん。』
泣く意味がわからん。が、とりあえず合わせておく。
「そりゃ痛いだろうよ。だから注意すれば良いだけだ。」
『どうせ私は未発育ですよーだ。』
関係ねぇ。つーか未発育なら美を極めたとか言ってんじゃねぇよ。
『準くんのわからずやー!!ひっく。』
わけわかんねぇ。
オレは濡れタオルで死神のタマネギの汁が付いた顔を拭いた。
『何でスーパーマ○オはキノコ食べただけで大きくなれるの?ぐすん。』
「アイツはカメに触っただけで小さくなるような小心者だぞ?」
・・・わけわかんねぇフォローしかできねえじゃねえか!
『なるほど、もし私がマ○オならメアはルイ○ジね!アハハ』
「メアちゃんは脇役なのか?」
『そうそう!アハハハハ♪』
「ハハハ、それじゃあメアちゃんが可哀相だろ。」
ふぅ、機嫌は直ったな。
それからしばらく死神の愚痴?に応対していると、いつのまにか寝てしまった。
「すーすー。」
オレは死神に毛布をかけ、散らかったキッチンを見た。
めんどいなぁ。
「・・・オレも寝よ。」
オレはキッチンから目を背けて死神の隣で寝ることにした。
「ムニャムニャ・・・いらっしゃいませ小坊主様♪ウフフ・・・。」
何の夢見てんだか。