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死神といっしょ!  作者: 是音
24/116

第24話 冬音さんのヒミツ

冬音さん滞在二日目です。今日は死神の突然の思い付きでなんと再び地獄へ行くことになりました。何考えてんだか。


「準くん!輪投げしよう!」


朝からふざけんなアホ神。


「準!ビール!」


もっとふざけんなスーパー変人。



「朝食後にビールはやめてくれ冬音さん。そしてあなたはまだ未成年じゃ・・・ふごぉ!!」


「女性に歳と聴力を聞くのはマナー違反よ!」


ぐはぁ!しかもどっかで聞いたことのあるようなセリフ・・・。


「冬音姉さん、今日は地獄を案内してあげるね〜!」

「そうだね、牧場だね。」


・・・会話成り立ってますか?

死神は冬音さんのことを気に入ったらしく、昨日からずっとくっついている。


「じゃあ地獄へ出発だー!」

「おー!」


死神は黒い穴を開けた。

よし、どさくさに紛れてこのまま残ってやろう。


ん?何だこの首のロープは?


いてっ


ちょっ、痛い痛い引っ張らないで。


いーででででで!!


ナルホド首輪ね!オレが逃げないようにってゆぅ粋な計らいなのね!


あぁぁぁぁ・・・






〈ドンチャン☆ドンチャン☆〉

〈おーい酒はまだかー?〉

〈はいただいまー!〉

〈仲居さん浴衣足りないんだけどー!〉


また来ちゃったよ地獄旅館。

冬音さんはさぞや驚いていることだろう。


「すごいなぁ死神よ!」

「でしょ〜!?」


「あの仲居すごい下駄をはいてるな!」


そこ!?そこに目が行ったの?


「でしょ〜!?」


お前もかよ!


さっそく地獄旅館の中へ入り、入場口からたくさん枝分かれになっている廊下をウキウキと地獄街方面へ向かう二人の隙を見て、オレは首輪を外して違う廊下へ離脱した。

あの二人と一緒にいると精神が崩壊してしまうからな。



「あれ?冬音姉さん、準くんは?」

「ん?いないな。・・・まぁアイツはホラー映画で一番最初に殺されそうなキャラだからな。」

「じゃあ私二番目に殺されちゃおっと!」

「何!?二番の座は渡さないぞ!」






ここはなんだ?


オレはぶらぶらと一人で廊下を歩いていたが、客じゃないから地図やパンフもない。

とりあえず今いるのはどうやらカフェみたいな場所のようだ。廊下を歩いていたら急に道幅が丸く広がった広場に出たのだ。通路を避けてテーブルが多数配置されている。広くなった廊下を出ると再び普通の廊下になっているようだ。

つまり廊下を歩きながら立ち寄ることのできるオープン?カフェみたいな場所だ。割とにぎやかなそこは意外にも大盛況らしい。つーか旅館の中にカフェを作る意味がわからん。まぁ、ひとまずここであの二人から身を隠すか。


オレはテーブルに座り、ウェイターらしき餓鬼にコーヒーを注文した。地獄旅館で働いている連中はほとんどが餓鬼で、全員頭から足先まで包帯に包まれている。職業は服装で判断するしかない。


コーヒーを飲みながらオレは廊下を歩いていく魂や仲居達を見ていた。以前来たときは気にしてなかったが、誰も人間のオレを不思議に思わないようだ。


『スンマセン前いいっすか?』


オレの向かい側に作業服を来た餓鬼が座った。ん〜、コイツどっかで・・・。


『? 何すか?』


オレの視線に気付いた餓鬼とオレは目が合った。


「・・・。」


『・・・。』


「あ。」


『げ。』



「お前確か八大地獄の・・・」

『さようなら〜・・・ぐぇ!』


オレはそそくさとその場を立ち去ろうとする餓鬼の襟首を掴んだ。


『ぐぇ〜・・・お、お前以前温泉で暴れまくった野郎じゃねぇかよ!!なんでまたいるんだよ!?』

「まあ色々あるんだよ。それよりお前暇そうだな。どっか案内しろよ。」


『なにをおっしゃいます!ワタクシこれから腹話術のお稽古がありますの♪オーホホホホホ!』


「うそつけハゲ。」


『グサァァァァ!餓鬼ちゃんショ〜ック!!』


あ、こいつきっと仲間に尻に火を点けられてた餓鬼だ。


「いいから早くどっか連れてけよ。」



というワケでオレと餓鬼というまさかのコンビは廊下を再び歩き出した。


『じゃあどこ行くんだよ?』


「ハァ、ゲーセンとかないの?」


『誰が《ハゲ専》だコラァ!そんなモンはある!』


敏感に反応しすぎだ。

なぁんだ、ってあるのかよゲーセン!!

温泉旅館がゲーセン取り入れた時点で娯楽施設としては終わりだな・・・。


『で、行くのか?』


「突然気が乗らなくなったからまた後にするよ。それより温泉旅館に来たんだから温泉入りてぇな。」


『おっ、なら我ら自慢の八大地獄温泉へ招待するぜ〜。』


「なかなか気が利くなお前。」


『もう一辺言ってみろテメー!』


二度と言うか。

旅館の構造がサッパリわからんオレはただ餓鬼の進む道を行くしかなかった。


『で、兄ちゃんがここにいるってことはやっぱり死神野郎も来てるのか?』


「おぅ。」


『ふーん。お、そろそろ着くぞ・・・って、なんか騒がしいな。』


確かに温泉部屋の近くに仲居やら魂やらが群がっている。

一体なんだ?




ズドーン!


『ぐはっ!』



うわ!八大地獄の餓鬼が壁を突き抜けてきた!


『お、おい!大丈夫か!?何があった!?』


『ぐふぅ・・・し、死神野郎が化け物を連れてきやがった・・・。』



また何かやらかしたな。


オレと餓鬼は急いで温泉部屋の中に入った。


・・・そこには


どーん!


バキーン!


「お雛様とお呼びー!」



暴れ回る冬音さんと、それを見て笑っている死神がいた。

お前ら地獄街へ行ったんじゃなかったのかよ?



「おい死神!冬音さんも!一体何やってんだよ!」


「あっ、準くん!どこにいたの〜?冬音姉さん超面白いんだよ〜!」


「オイコラ準!てめぇ勝手に消えやがって、鼻の穴に指突っ込んで脳ミソにデコピンかましてやろうか!あぁん!?」



出たよ《悪冬音》。


そう、この人の最大の秘密がこの《多重人格》だ。


この前死神に留守番を頼んで会いに行ったときなんか《詩人冬音》だったから大変だった。

玄関を開けた途端に


『こんな麦茶に、私もなりたい・・・。』


って言われた。


しかし悪冬音とは。一番厄介な人格が出てきたな・・・。誰だよ呼び出したヤツ。


「行けーっ冬音姉さん〜!!」


コイツしかいねぇな。


冬音さんは餓鬼達をいぢめまくっていた。カフェで会った餓鬼もいつの間にか風呂にプカプカ浮いてるし・・・。


「死神、冬音さんを止めるぞ。」


「えーっ、面白いのに〜!」


「暴れ尽くしたら次に被害を受けるのはオレ達だ。

きっとお前なんかは○○を○○されて○○っぽい格好で泣き叫ぶんだろうな〜。」


「死神手伝いまーす!」



よし。とりあえず人格を変えさせなきゃ。

冬音さんは何かに激しく興味を持ったとき、その人格を変えるのだ。


「おい死神、冬音さんが興味を持ちそうなモノないか?」


「う〜ん、確か面白い本が・・・」


死神はローブの中をゴソゴソと探した。


「あった!」


死神はその本を悪冬音さんへ投げた。



バシッ


「痛!何しやがんだこの・・・ん?」


冬音さんは本を見つめたまま固まった。



「死神、面白い本って何を投げたんだ?」


「《ザ・インテリ入門》!」


面白くねぇよそんなの。


その時冬音さんがオレの後ろに立った。



「・・・準。」


うわ〜殺される!



「私の人格はデオキシリボ核酸、つまりDNAの影響だからどうしようもないのだよ。ここで一つ述べるべきは、DNAの羅列はグアニン、チミン、アデニン、シトシンの組み合わせで・・・」


うわ、《インテリ冬音》になってる!

そして死神はケラケラ笑っている。



『この野郎!』


パカーン!


倒れた餓鬼の一人が冬音さんに風呂桶をぶつけた。


振り向いた冬音さんはゆっくりと餓鬼に近づいた。


「痛みは私の神経を流れるただの信号にすぎない!」


『なんかもう、ごめんなさい。』


インテリ人格の冬音さんはいろんな意味で恐かった。


結局二人に見つかったオレは惨劇と化した温泉部屋を出た。温泉入りたかった〜。



その後は買い物に付き合わされ(大出費)、地獄を後にすることとなった。



「ところで死神。」

「なぁに?」


「お前本当に連れ戻されねぇみたいだけど、どういうことだ?」

「あっ、それはね〜・・・」


プルルルル、プルルルル


あ、電話だ。


「はいもしもし?」


『あ、里原殿!』


夜叉さんだ。


「どうしたんですか?」


『助かりましたよ〜、戦闘データの収集に協力して頂いて感謝しますぞ。』


何の話だ?


『冬音殿という貴重な戦闘データを《死神の引き取り期間を延ばす》という条件で提供して頂けるとは!いや〜、里原殿!次回は里原殿の戦闘データも欲しいですな!ハハハハハ』

ブツッ



・・・そういうことか。全部アホ神の策略だったワケだな。

晩飯はおしること甘酒にしてやる。甘さに苦しむがいいさ。




「楽しかったね、冬音姉さん!」


「うん、いいところだったね。」


オレの部屋に戻った時には冬音さんは通常の人格に戻っていた。


「じゃあ準、私はそろそろ帰るよ。」

「そうですか。お気を付けて。」


「えーっ、冬音姉さんもう帰っちゃうの!?」

「死神よ、今日は楽しかったよ。」


冬音さんは死神の頭を撫でて部屋を出た。


「おぉ、そうだ準。」

「なんですか〜?」


「デオキシリボ核酸の羅列を一緒に語り合お・・・」

「さようなら。」




軽くインテリ人格を残しながら冬音さんは帰っていった。




ふぅ。今日はいつもより疲れたなぁ。


「準くんご飯は〜!?お腹が空いて死にそうだよぉ〜。」


「今できたところだ。ほらよ。」


オレはテーブルに座った死神の目の前に晩飯を置いた。


「・・・準くん、コレは何?」

「おしるこ&甘酒だ。いらないのか?」

「い、いただきまぁす♪」



そして




「準くん・・・お茶を・・・お茶を下さい・・・。口の中が甘すぎて・・・」


ふはは、オレと冬音さんを利用した罰だ。


「うわぁぁぁん、甘いよ〜っ!」

「ハハハ、ほらお茶だ。ちゃんと晩飯作ってあるから泣くな。」



死神が本当の晩飯を食べるのをオレは向かい側で頬杖をつきながら見ていた。


引き取る期間を延長・・・か。


「ん?どうしたの準くん?私の美貌に見とれた?」


「なぁ、死神。夜叉さんにオレの所に居候する期間を延長したいって言ったのか?」


「そうだよーん。ダメだった?」


無理矢理やってきたくせに聞くなよ。

・・・ま、いいか。

どうやらオレは死神がいる生活に慣れてしまったみたいだな。


「好きにしろ。」


「準くん明日は何しよっか〜?何か映画見ようよ〜!そうだ、《愛と内臓のカンフー》見ようよ!」


ジャンルがわからん。

これからもコイツには振り回されそうですな。

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